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» 2018年06月26日 11時30分 公開

世界を「数字」で回してみよう(50) 働き方改革(9):合理的な行動が待機児童問題を招く? 現代社会を映す負のループ (4/8)

[江端智一,EE Times Japan]

保育所は、不良債権になることが運命付けられている

 保育所のニーズはあるのだから、保育所を作って運営すれば、(直接的な言い方で恐縮ではありますが)もうかるハズです。投資という観点では、保育所は優良物件であるはずです。

 しかし、この投資が進まないのはなぜか。簡単です。保育所は、将来確実に不良債権になるからです。そうです、少子化です。

 今後、子どもの数が減っていくことは、もうどうしようもありません。日本人の全てが夫婦となった上で、さらに、ひと組の夫婦から2人の子どもを育てる状況になって、はじめて、人口はトントンに維持されますが ―― 現代にあっては、「夢と魔法の王国での話」のように感じます。

 もし、明日から出生率が、現在の1.44から2.14(1970年代の第二次ベビーブーム)に跳ねあがった(そんなことは、絶対にありえませんが)としても、その効果が現われて、新生児の数が増え出すのは最短で15年後で、人口が増加方向に転じるのは62年後です(このソースコードの1.44を2.14にして、コンパイルして実行して頂ければ、すぐに確認できます)。

 「明日から出生率1.44→2.14」などということは絶対にあり得ませんし、「普通」に考えれば、今後、子どもが増える未来はありません*)

*)参考記事(別媒体のサイトへ移行します)

 保育所は、それが不良債権になることが運命づけられている ―― といっても過言ではありません*)

*)もっとも、保育所が、労働人口(特に女性の)を引き上げる効果があるとしても、それが、出生率2.0というボーダーの数字の前では、「風前のともしび」であることを、既に計算で示しています(関連記事:「女性の活用と、国家の緩やかな死)。

実は合理的? 待機児童問題

 このように考えてみると、実は、この"待機児童問題"、"保育所問題"に関わる当事者の振る舞いは、実に合理的なのです。

 まず、この問題の絶対的な前提条件として「少子化の未来からは逃げられない」とした上で、上図の内容を説明します。

(Step.1)保育所は定員越えで、新生児や乳幼児の受け入れができません。

(Step.2)地方自治体は、保育所の将来の不良債権化が分かっているので、自己資産による保育所の新設へのモチベーションが発生しません。従って、国(政府)への補助金(予算)を要求します。

(Step.3)政府は、労働人口の減少による税収削減によって、地方自治体にお金を回す余裕がありません。そこで将来の税収確保のために、国民に対して結婚、出生、育児を奨励します。

(Step.4)国民は、そもそもお金がないので、育児出産以前に、結婚に踏み切ることすらためらう状態にあります。実際に、子どもを作ることで、経済的に不幸になっているケースは山ほどあります(後述します)。

 それぞれの対象(オブジェクト)が、それぞれ合理的に動いた結果、保育所は、全ての新生児・乳幼児を収納できない状態に置いておくことが、最適解 ―― とは言わないまでも、局所的最適解(ローカルミニマム)として安定しているわけです。

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