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» 2018年08月16日 11時30分 公開

光伝送技術を知る(3):データセンターを支える光伝送技術 〜エンタープライズデータセンター編 (1/3)

現代において、最も重要な社会インフラの一つともいえるのがデータセンターだ。データセンターには光伝送技術が欠かせない。今回は、データセンターに使われる光伝送技術について、エンタープライズデータセンターやハイパースケールデータセンターを取り上げて、解説していく。

[高井厚志,EE Times Japan]

光伝送技術開発をリードするデータセンター

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 近年、光伝送モジュールの最大ユーザー(数量ベース)であり、光伝送技術開発をリードしているのが、データセンターである。光伝送関連学会の会場を満席にするトピックの一つであり、筆者が展示会で最も質問を受ける事項でもある。

 米国Cisco Systemsが毎年発表するレポート「Global-Cloud Index(GCI)」はデータセンターの動向を知るのに最も参考となる資料の一つで、さまざまな発表に引用される。本稿のほとんどの数字は最新版GCI(Feb, 2018)から引用した。

 なお本稿では、光ファイバーの種類について「SMF」(シングルモード石英ファイバー(高速・大容量・長距離))「MMF」(マルチモード石英ファイバー(短距離・低コスト))、ギガビットイーサネットは「GbE」と表記している。

データセンターの発展

 データセンターとは、コンピュータシステムと、それに接続された通信システムが設置された、データ処理が行われる専用施設を指す。

 1990年代までのデータセンターは、主に金融や課金システムのメインフレームを中心としていた。本社や事業所との間を専用回線で接続し、タイミングシェアリングシステムでリモート運用するのが一般的だった。

 1990年代に、主役はサーバに移った。いわゆる「ムーアの法則」で進化するプロセッサICを搭載した、性能がより向上したサーバを用いた分散型コンピュータシステムが構築された。この時代は、だんだんと普及してきたPCと接続するクライアント・サーバ方式が主流となった。インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)の発足で急激に成長したインターネット接続が、外部のクライアントとサーバ間通信に使用され始めたのも、このころである。

 2000年前後には、インターネットを利用したドットコム(.com)ビジネスがブームとなる。多くのスタートアップ企業を対象に、インターネットデータセンター(IDC)のサービスビジネスが急成長した。光伝送技術がデータセンターで注目されだしたのはこのころであり、ちょうど10ギガビットイーサネット(10GbE)が標準化された時期に当たる。

 さらにこの時期には、大型ルーターや伝送装置向けに、10Gビット/秒(bps)の送受一体型のいわゆる光トランシーバー(伝送装置ではトランスポンダ)が開発され、300-pin MSA(Muti-Source Agreement)グループが設立された。また、IEEE802.3において10GbEが標準化された。

 データセンターの大型化とともに小型、低消費電力の要求が高まった。このため、300-pn MSAからXENPAK、X2、XFP、最後に1GbEと同じサイズのトランシーバーSFP+が開発されている。距離も、2kmから10km、40km、80km、80km(DWDM)と伸びていった。伝送距離は、光デバイスの発展によるが、トランシーバーのサイズは光デバイスとともにICとPCB技術が大きく寄与した。

 2010年代に入ると「Web 2.0」ブームにより、データセンターはスケールを追うようになった。クラウドコンピューティングの広がりで、スケールはさらに大きくなっている。現在も、数万平方メートルの敷地に、数十万台から百万台を超えるサーバを有するハイパースケールデータセンターが次々と建設されている。このスケールを実現するために光伝送技術は必須であり、膨大な数量の光伝送部品が設置されているのだ。

 光モジュールの製造規模は、2000年以前はひと月当たり数百から数千個であったが、データセンターへの適用が始まってからは出荷規模が大きくなり、「累積出荷百万個を達成」「ひと月に百万個を超え出荷」といったニュースが次々と発表されるようになっている。

 ハイパースケールデータセンターは、「集中と分散」の振り子が、「集中」に大きく振れた時代の中心にあると考えることができる。1970年代のミニコンピュータ・Unixマシンによる「分散」への小さい振れはあったが、1950年代から1980年代のメインフレームによる集中、1990年代から2000年代のクライアント・サーバによる分散化の後に続く集中の時代である。今後はIoT(モノのインターネット)とAI(人工知能)によるリアルタイム処理のためにエッジコンピューティング、エッジデータセンターという新しい形の分散化が起こる可能性があり、新しい光技術の応用として期待されている。これについては、後の連載で触れていきたい。

図1 データセンターの発展(クリックで拡大)
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