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AIチップの過去・現在・未来必要な技術を探る(1/2 ページ)

人工知能(AI)技術の発端を理解するために、今日に至るまでのその進化の過程を時系列に沿って見ていきます。また、AIチップの現状を踏まえ、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転車の実現によって私たちの日々の生活を大きく変えるには、AIチップに何が必要なのかを考えていきます。

» 2018年08月30日 09時30分 公開

 近頃では人工知能(AI)がしばしばニュースで取り上げられています。AIは医療診断化学物質の合成、人混みの中での犯罪者の顔認識車の運転芸術作品の創造にすら活用されています。AIが人間に代わって何でもやっているところを見ていると、AIにできないことは何一つなく、私たちの仕事がなくなるのは時間の問題であるように思えてくることもあります。

 AI技術の発端を理解するために、このコラムでは今日に至るまでのその進化の過程を時系列に沿って見ていきます。また、AIチップの現状を踏まえ、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転車の実現によって私たちの日々の生活を大きく変えるにはAIチップに何が必要なのかを考えていきます。まずはAIの歴史から見ていきましょう。AIはその進化の過程で、より特化された技術に形を変えていきます。プログラミングではなく体験学習に基づく意思決定を軸としたそれらの技術はマシンラーニングと呼ばれました。そして次にこのマシンラーニングを土台として生まれたのが、データをより深く理解させるためにアルゴリズムをいくつも重ねたディープラーニングです。

マシンラーニングからディープラーニングへと進化してきたAI 図1:マシンラーニングからディープラーニングへと進化してきたAI 出典:Nvidia

AIのルーツ

 「Artificial Intelligence(人工知能)」という言葉は、科学者のジョン・マッカーシー、クロード・シャノン、マーヴィン・ミンスキーらによって1956年のダートマス会議で初めて使用されました。1950年代の終わりごろにはアーサー・サミュエルが、自らの間違いから学ぶことができ、チェッカープログラムの作成者よりもうまくプレイできるようにさえなるプログラムに「マシンラーニング」という言葉を使いました。コンピュータ技術が急速に発展したこの時代の楽観的環境を思えば、AIはすぐに「完成」するだろうと研究者らが考えたのも無理はありません。科学者たちは、人間の脳の働きを模した計算によって現実世界の問題を解決できるのかどうかを調査し、そこで「ニューラルネットワーク」という概念を生みだしました。1970年、マーヴィン・ミンスキーはライフ誌にこう語っています。「3〜8年後には、平均的な人間の一般的知能を持つマシンが登場するだろう」

 1980年代までには、AIは研究室を出て商用化され、一大投資ブームを巻き起こしました。1980年代終わりにAIテックバブルがついにはじけると、AIは再び研究の世界に舞い戻り、科学者たちは引き続きその可能性を探りました。業界ウォッチャーたちはAIを「時代を先取りした技術」、あるいは「永遠にやってこない未来の技術」と呼びました。商用開発に再び火がつくまでには「AI冬の時代」といわれる長い停滞期があったのです。

 1986年、ジェフリー・ヒントンは同僚たちと共に、バックプロパゲーション(誤差逆伝搬法)と呼ばれるアルゴリズムを使用してマルチレイヤー、すなわち「深層」ニューラルネットワークのパフォーマンスを劇的に向上させる方法を説明した画期的論文を発表しました。1989年、当時ベル研究所にいたヤン・ルカンと他の研究者らは、手書きの郵便番号を認識するよう訓練できるニューラルネットワークを作成し、この新技術を現実世界で応用できることを実証しました。このとき彼らがディープラーニング畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練するのに要した期間はわずか3日でした。そこから一足飛んだ2009年、スタンフォード大学のラヤト・ライナ、アーナンド・マドハヴァン、アンドリュー・ウは共同で、ディープラーニングにおいては近代GPUがマルチコアCPUの計算能力をはるかにしのぐことを説いた論文を発表しました。ここから再びAIブームに火がつきます。

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