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» 2018年09月11日 11時30分 公開

業界は何を恐れたのか:NXP買収を断念したQualcommの誤算(後編) (1/2)

NXP Semiconductorsの買収を断念せざるを得なかったQualcomm。ただしQualcommは、自社が置かれている状況から、このM&Aが厳しくなることをもう少し予想すべきだったのではないだろうか。

[Bolaji Ojo,EE Times]

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Qualcommに対する見方は厳しい

 Qualcommは、各国政府や競合企業から(あるいは自社の顧客企業からも)、ロイヤルティーなどをめぐり提訴されるなど、決して好ましい環境にあるとはいえない。そのような中で、NXP Semiconductors(以下、NXP)買収が厳しい監視下に置かれるであろうことを予測すべきだった。経営幹部たちはカンファレンスコールにおいて、遠回しに中国を非難していたが、NXP買収に対する反対意見は、もっと広い範囲にまで及んでいた。

 Qualcommはこれまで、さまざまな前兆を無視してきたといえる。例えば、同社の高利益のライセンス料を好ましく思っていない政府や競合企業、顧客などから、格好の標的となっているということや、同社のIPに関して実際に認識されている、違反者に対する厳しい慣行などが挙げられる。

 そもそもQualcommは、中国が、半導体業界において大きな役割を担っていく考えであると明言している上で、半導体業界の競争環境が近年、主に合併買収によって変化していることを好ましく思っておらず、不安感を高めているということに、気付くことができなかったといえる。

 またQualcommは、モバイル機器向けモデムチップ市場で「独占的な地位を確立してきた」という意味合いについても目を向けてこなかった。同社のIP(Intellectual Property)は、同分野において広く普及し、長年にわたって優勢を維持することで、ゆるぎない地位を確立してきた。しかし同時に、その業界をリードする位置付けは、羨望の的となり、嫌悪の対象にもなったのだ。

 機器メーカーや設計メーカー、半導体メーカー各社は、これまでQualcommに対して、高額なロイヤルティーを仕方なしに支払ってきた。また、欧州やアジアの一部の政府は、「米国企業であるQualcommが優勢を維持することで、自国の通信開発計画に問題が発生するのではないか」とする強い懸念を示していた。

Qualcommのモデムチップ。モバイル向けモデムチップにおけるQualcommの圧倒的な存在感は、敵意のターゲットにもなっている 出典:Qualcomm

中国で不満が蓄積?

 Qualcommは、これまで長年にわたり、同社のCDMAライセンスに関する位置付けをめぐって、さまざまな地域で規制当局との戦いを繰り広げてきた。中国や欧州、日本、韓国では、独占禁止法に関する調査を受け、起訴されてきた。中国では、Huaweiなど現地メーカーが火に油を注いだこともあり、問題が長期化して、少なくともここ4年間続いている。中国メーカーは特に、QualcommのIPの代替を開発することができず、同社に大きく依存してきたことから、不当な扱いを受けていると感じているのだ。

 例えば中国は、2017会計年度におけるQualcommの全売上高220億米ドルのうち、57%を占めているという。こうした売り上げの多くは、中国で稼働している欧米メーカーからのものだが、当然、中国の地元メーカーへ販売した分の売り上げも含まれている。中国の規制当局や中央政府は常に、こうした傾向に対して、さまざまな場面で不快さを募らせ、現地で開発された技術を優遇する考えを示してきた。その背景には、経済的な理由も一部あるが、現在では、自国の通信システムを米国などの競争勢力から保護するという側面を強めている。

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