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ルネサス+Intersil+IDTの“三位一体”で新たな勝者へ7300億円の買収を決断(2/2 ページ)

» 2018年09月14日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]
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買収はあくまで“成長加速”が目的

 現在、IDTの従業員数はグローバルで1900人。買収後の人員削減の可能性について呉氏は、「今回の買収の目的はシナジーを生かし、成長を加速することだ。IDTもルネサスもリストラ(構造改革)によってコスト削減を図ってきた経緯はあるが、今回の買収はあくまで成長目的であり、人員の削減は考えていない」と述べる。Waters氏も「”どれくらいの従業員を残すか”ではなく、”どれくらいの成長していけるか”が、今回の買収のポイントになる」と続けた。

 一方でIDTの事業部門について見直す可能性はあるという。ただし、それは単に統合に伴う作業で、何かの事業を手放すということではないようだ。呉氏は「IDTでは全ての事業部門がうまくいっている」と述べている。IDTの2018年3月期の売上高は8億4280万米ドル(約927億円)、営業利益は1億1090万米ドル(約122億円)。Waters氏は、「われわれは、半導体メーカーの中でも、過去5年間の成長率が最も高い企業の一つだ。2014年度から2017年度にかけては、年率14.5%で成長してきた」と述べた。

 Waters氏は「IDTは日本でも業績を伸ばしている」と続ける。2018年度第2四半期におけるIDTの売上高で、日本の比率は4%である。2018年3月末で日本のマーケティングコミュニケーション部門の一部を引き上げたIDTだが、「特に4Gやデータセンターが日本では強い」と同氏は話す。IDTは、日本では通信とエンタープライズSSD、車載の3つに注力している。

2018年6月に提案されていた買収

IDTのGregory Waters氏

 ルネサスがIDTに買収案を持ちかけたのは2018年6月のことだ。その際、IDTは「売却は考えていない」と返答して終わった。「その後、ルネサスから、IDTとルネサスが統合することの利点を提示された。業績以外での非常に戦略的な利点だ。そこで将来的な成長の可能性を感じられたからこそ、今回の買収合併に至った」(Waters氏)

 今回の買収は、IDT株主総会や各国当局での承認などを経て、2019年前半に完了する予定だ。買収承認といえば、2018年7月にQualcommが中国当局からの承認を待てず、NXP Semiconductorsの買収を断念したばかりである(関連記事:QualcommがNXPの買収を断念、中国の承認が時間切れ)。だが呉氏、Waters氏ともに、中国当局の承認については懸念していないと述べた。「中国当局の承認を阻むような要素は何もないと考えている。(NXPとQualcommの買収は破談になったが)NXPとQualcommとは全く異なる性質の買収だと考えている」(Waters氏)

 ここ数年でIntersil、IDTと立て続けに大型買収を決断したルネサスだが、今後のM&A戦略についてはどう考えているのか。呉氏は「マイコンとSoC、パワーマネジメントについては確固たる地位を確立していて、車載や産業機器でも強い顧客基盤を持っている。そのため、マイコンやSoCのメーカーの買収や、単に顧客基盤を拡大するためだけの買収は考えていない。アナログ、ミックスドシグナル、ワイヤレスが、当社が興味を持っている分野だ」と述べるにとどまった。

 Waters氏は、「マイコンに強みを持つルネサスと、ミックスドシグナルICに強みを持つIDT。両社の統合によって、半導体サプライヤーとしての新たな勝者となる」と強調した。

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