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CEATEC JAPAN 2018 特集

殺菌、硬化も「LED」で ―― スタンレーが提案CEATEC 2018

スタンレー電気(以下、スタンレー)は2018年10月16〜19日に開催されている展示会「CEATEC JAPAN 2018」(シーテックジャパン/会場:千葉市・幕張メッセ)で、殺菌や樹脂の硬化などに用いる紫外LEDの展示を実施している。

» 2018年10月16日 14時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

 スタンレー電気(以下、スタンレー)は2018年10月16〜19日に開催されている展示会「CEATEC JAPAN 2018」(シーテックジャパン/会場:千葉市・幕張メッセ)で、殺菌や樹脂の硬化などに用いる紫外LEDの展示を実施している。

 波長400nm以下の光である紫外線(UV)は、殺菌や、樹脂硬化などに広く利用される。紫外を発する光源は、一般に「紫外ランプ」が用いられているが、寿命が短く頻繁なメンテナンスが必要な他、最近では多くの紫外ランプに含まれる水銀の環境への悪影響が懸念されている。そこで、長寿命で、有害物質を含まないLEDへの代替が期待されているが、紫外LEDはランプに比べ出力が不足するなどの課題があり、本格的な代替には至っていない。

265nmの光で高効率に殺菌

スタンレーが「波長265nmで世界最高出力」をうたう深紫外LED「YDU1105EAE」の説明ポスター (クリックで拡大)

 そうした中で、車載用LEDなどを展開するスタンレーは、紫外領域でのLEDの普及を目指し、紫外LEDの高出力化を推進。CEATEC JAPAN 2018では、開発中の製品を含む最新の高出力紫外LEDを出品している。

 紫外線のうち、波長200〜280nmの深紫外はさまざまな殺菌用途で使用されるが、波長が短く、特にLEDの高出力化が難しい領域だ。この深紫外LEDとしてスタンレーは、「波長265nmで世界最高出力」(スタンレー)とうたう、光出力50mWの深紫外LEDを開発した。

 深紫外LEDとしては、波長280nm前後で光出力50mWを上回るLEDが製品化されており、一見、スタンレーの深紫外LEDの光出力は見劣りするように思える。しかし、スタンレーが採用する波長265nmの深紫外は「最も殺菌能力が高い波長であり、高い殺菌能力が得られる。他の高出力深紫外LEDよりも効率良く殺菌でき、消費電力も低く抑えられるメリットがある」(同社)とする。

 CEATECのスタンレーブースでは、この50mW出力波長265nm深紫外LEDを用いて、水殺菌用リアクターを試作。車載照明用途で培った配光技術を用いて効率的に深紫外を照射し、殺菌効率を高めた。従来の深紫外ランプに比べ、小型化しやすい利点を生かし、家庭用浄水器などでの採用を見込んでいる。

「YDU1105EAE」を用いた水殺菌用リアクター

UVインクの硬化デモを実施

 また、波長300〜400nm程度の近紫外LEDとしても、現在サンプル出荷中のハイパワー近紫外LEDを出展している。デモとして、近紫外を照射することで硬化するUVインクを用いたインク硬化デモを実施している。

高近紫外LEDの展示 (クリックで拡大)

 「乾くまでに時間が必要な油性などのインクによる印刷に比べ、光を照射するだけで瞬時に乾くUVインクを用いたUVプリンタは高速に印刷できるという利点から、急速に普及している」という。現状のUVプリンタの光源も紫外ランプが主流で、LEDが代替するには、出力不足を解消する必要がある。これに対し、スタンレーのハイパワー近紫外LEDは出力1400〜1600mWに高めた。さらに、気密封止パッケージを用いて、寿命4万時間という従来比4倍の長寿命化を達成した。「ランプの寿命は1500時間程度。その上、十分な出力を得るまでに少なくとも30分程度の時間を要し、短時間でオンオフを切り替えられない。LEDは瞬時に点灯し、スタンバイ時には消灯できる。そのため、LEDは数値以上に長寿命であり、消費電力も抑制できる」(同社)という。

高出力近紫外LEDによるUVインクの硬化デモ。UVインクを印刷しただけだと、こすると印刷が崩れるが、1秒間ほどUVに当てるだけで瞬時に硬化。指でこすっても印刷は崩れない

監視カメラに向けた高放熱のハイパワー赤外LED

 この他、スタンレーブースでは、紫外同様、不可視光である赤外を発する高出力LEDの新製品を展示。新製品は、投入電力当たりの放射束として600mW/W以上を誇る発光効率を実現。低熱抵抗のパッケージを採用し、大電流駆動に適した放熱特性を備える。

高出力赤外LEDの比較デモの様子。サーモグラフィーカメラで撮影し、その結果をプロジェクターで基板に投影している。赤い部分が温度が高く、青い部分の温度は低い (クリックで拡大)

 展示は、高出力赤外LEDの主な用途である監視カメラの夜間補助光源を想定した基板に、新製品と競合他社のハイパワー赤外LEDを実装、動作させ、サーモグラフィカメラで温度を実測し比較した。放熱性に優れるアルミ基板上の競合他社品は60℃程度まで熱をもったが、スタンレーの新製品では、ガラスエポキシ基板上の新製品でも発熱を最高50℃程度に抑えた。「現状の監視カメラの多くは、砲弾型のLEDを数十個、搭載するケースがほとんど。ハイパワー品に置き換えれば、LEDの数を1〜3個程度に抑えられる。さらに、高効率で高放熱の当社新製品であれば、安価なガラスエポキシ基板が使用でき、かつ、基板サイズも小さくできる。監視カメラのシステムコストを抑制できる」(スタンレー)としている。

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