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アトミックレイヤーエッチングとドライエッチング技術の未来展望湯之上隆のナノフォーカス(6) ドライエッチング技術のイノベーション史(6)(2/5 ページ)

» 2018年11月12日 11時30分 公開

ALEの3回のブーム

 Yoderの発明の後、半導体の世界でALEは、どのように研究開発されていったのだろうか? 筆者らは、「グーグルスカラー」を用いて、主としてALEの論文が、何年に、何件、発表されているかを調査した。

 日本では、1990年に東芝出身で広島大学の堀池靖浩教授(当時)らが「デジタルエッチング」と称して盛んに学会や論文発表を行った1)。そのため、日本では、1990年代中旬に、デジタルエッチングがブームとなった記憶がある。

1)Hiroyuki Sakaue, Seiji Iseda, Kazushi Asami, Jirou Yamamoto, Masatake Hirose and Yasuhiro Horiike, “Atomic layer Controlled Digital Etching of Silicon”, Japanese Journal of Applied physics. Vol.29 Part 1. No.11.


 そこで、まず、デジタルエッチングとALEについて、グーグルスカラーを用いて、その論文数の推移を調べてみた(図3)。その結果、ALEとデジタルエッチングの合計の論文数から、1990〜2000年に第1次ブーム、2005〜2011年に第2次ブーム、2012年以降に第3次ブームがあることが明らかになった。

図3:Digital Etching とALE論文数(クリックで拡大) 出典:グーグルスカラーによる検索等を基に筆者作成

 次に、上記で検索した論文数を、日本と米国に分けてプロットしてみた(図4)。その結果、2013年に日本に局所的なピークがあることを除けば、日米の傾向には大きな差がないことが分かった。

図4:Digital Etching & ALE論文数の日米比較(クリックで拡大) 出典:グーグルスカラーによる検索等を基に筆者作成

 さらに、聞き取り調査の結果、2013年に米Lam ResearchのCTO(最高技術責任者)であるR.A.GottchoがAmerican Vacuum Society(AVS)で学会発表を行い2)、同年にLam ResearchのK.J.KanarikがSolid State Technologyに論文発表3)したことがトリガーとなって、2014年以降の爆発的な第3次ブームが起きたことが明らかになった。

2)R.A.Gottsho, K.J.Kanarik, and S.Sriraman, AVS (American Vacuum Society) 60th International Symposium & Exhibition, Long Beach, CA, 2013.
3)K.J.Kanarik, S.Tan, J.Holland, A.Eppler, V.Vahedi, J. Marks, and R.A.Gottscho, Solid State Technology, Atmic Layer Etch p.14 (2013).


 現在は、まさに第3次ブームの真只中にいる。しかし、第1次ブームの時にも問題になったことは、デジタルエッチングやALEを、一体どの半導体デバイスの、どのプロセスに使うのかということだった。結局、第1次ブームの時には、そのアプリケーションが見つからず、単なるブームとして終息した。

 ところが、今回の第3次ブームにおいては、2016年に先端ロジックメーカーが、コンタクトホールの開口にALEを用いたことが分かった。とうとう、ALEが量産適用されたのである。その詳細を紹介する前に、再度、ALEの原理について説明したい。

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