メディア
連載
» 2018年11月28日 11時30分 公開

この10年で起こったこと、次の10年で起こること(30):iPhone XRとiPad Proの中身に透かし見る最新半導体トレンド (1/3)

今回は2018年10〜11月に発売されたAppleの2つの新製品「iPhone XR」と「iPad Pro」の中身を詳しく見ていこう。2機種の他、9月発売の「iPhone XS/同XS Max」とも比較しながら、最新の半導体トレンドを探っていこう。

[清水洋治(テカナリエ),EE Times Japan]
↑↑↑>>>連載一覧へ<<<↑↑↑

 2018年秋にはAppleやGoogle(Pixel 3など)から続々とスマートフォンなどモバイル機器の新製品が発売された。筆者が代表を務めるテカナリエではそのほとんどを入手して分解やチップ開封を行い、解析レポートを作成しリリースを順次行っているところである。上記以外にも今秋から今冬はNVIDIAの新GPUや8Kテレビなど話題の新製品が目白押しで分解もときに全社員で手分けしてほぼ丸一日がかりで行う必要もあるほどだ。

 そんな2018年後半に登場した多くの話題製品の中から、今回は2製品を取り上げる。1つは2018年10月26日に発売されたAppleのスマートフォン「iPhone XR」、もう1台は11月7日に発売された同じくAppleのタブレット端末「iPad Pro」である。図1に、iPhone XR、iPad Pro の梱包(こんぽう)箱とディスプレイを取り外した全体像を掲載する。ともに内部は電池と処理基板、カメラ、スピーカーで構成されている。黒を基調とした見えないところも十分に配慮された構造になっている。

図1:2018年10〜11月に発売されたApple製「iPad Pro」(左)と「iPhone XR」(右)の梱包(こんぽう)箱とディスプレイを取り外した基板 (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

4者4様のバッテリー

 iPad Proは従来のLightning(ライトニング)コネクターを廃止してUSB Type-Cをインタフェースに採用するなど、従来モデルから大きな変化を遂げている。一方iPhone XRは先んじて発売された「iPhone XS/同XS Max」の廉価版という位置付けになっており、電池、処理基板ともにオーソドックスなバー形状になっている(関連記事:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(29):「iPhone XS」を解剖 ―― iPhone Xから変わった部品配置

 先に挙げた4機種の電池容量と出力電圧を列記しよう。

  • iPhone XS:出力電圧=3.81V、電池容量=2658mAh
  • iPhone XS Max:出力電圧=3.80V、電池容量=3174mAh
  • iPhone XR:出力電圧=3.79V、電池容量2942mAh
  • iPad Pro:出力電圧:3.77V、電池容量=7812mAh

 以上のように、それぞれ異なる仕様になっている。電池はそれぞれのモデル専用に開発され、かつ出力電圧も製品ごとに異なっているわけだ。この電圧差が微妙な性能差に関係している可能性がある。同じA12プロセッサを使うiPhone XS、XS Max、XRのプロセッサ速度のベンチマークの値にわずかだが速度差があるからだ(詳細は省略)。XSがもっとも速い。演算器の個数の多いiPad ProはiPhoneシリーズよりも高いスコアを持っているが、同じハードウェア構成のプロセッサではないので“当然の差”と言える。iPhoneのA12プロセッサはCPU6コア、GPU4コア、iPad Proに採用されるA12XはCPU 8コア、GPU7コア(=Apple発表。ただし、実際のシリコンには8コアが搭載されている)

性能とバッテリー特性が一致

 電池の出力はコンバーターなどを介してプロセッサの動作に則した電圧に調整され供給されているわけだが、電池電圧差のまま、プロセッサに電源供給されているものと仮定すると、ベンチマークでの性能差は半導体の特性に一致しているので、説明がつく。半導体は電圧が高いと速度が速くなる。わずか0.01Vの差でも間違いなく高速化される。ただしやみくもに電圧を上げると半導体の寿命を短くなってしまったり、高速化しすぎることの弊害で動作問題などを起こしてしまったりする。

 通常は下限電圧と上限電圧を設計時に見極め、適切な使い方をするようになっている。電圧を上限電圧に近いところで使えば、わずかながらでも高速動作の製品が作ることができる。一方で電圧を下げれば速度は若干落ちるが電池寿命のみならず、製品寿命も延びる方向にある(あくまでも半導体特性の観点で述べている)

 AppleのA12コアを使う製品の電圧差はディスプレイのサイズや構造の違いなどにもよって決まっている部分もあるので、単純にプロセッサの速度だけの差でもないわけだが……。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.