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» 2018年12月17日 11時30分 公開

製品分解で探るアジアの新トレンド(34):“余計なもの”って何? 「Mate 20 Pro」の疑惑を晴らす (3/3)

[清水洋治(テカナリエ),EE Times Japan]
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結局、“余計なもの”はあったのか?

 全ての半導体チップが存在する領域を細かく、1個1個チェックを行ったが、「余計なもの」は全く存在しなかった。

 “余計なもの”という言い方が適切かどうかは分からないが、余計なものを具体的に教えて欲しいくらいである。通信部には米国のパワーアンプが並ぶだけである。センサーはドイツ製、日本製ばかりだ。メモリは韓国製。ここに全てのチップを並べて見せたいくらいである(分量の都合でここでは掲載しないが、セミナーなどでは報告していく予定だ)。

 ただし、中国製チップも多く使われている。図4に、それらのチップ群の一部を示す。右はスマートフォンの骨格となるチップセットで、HiSiliconのチップで構成される。内容はプロセッサ(図には未掲載)、電源制御IC、Wi-Fi/Bluetoothチップ、オーディオチップ、トランシーバーなどがHiSiliconのチップで構成されている。QualcommのチップセットやMediaTekのチップセットとほぼ同等の内容をカバーできている。これは、HiSiliconが抜きん出た技術を持つことの証しといえるだろう。

図4:内部は中国チップと日米欧チップが混載されている 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 日本メーカーもおおよそ7年前までは、巨費を投じて同じものを目指してきた。だが、それらの技術は完成することなく、幕を閉じている。あれから通信は高速化し、プロセッサの処理量も劇的に増えた。

 今、これと同じものを日本で作れるかどうか――。答えはここではあえて書かないが、技術者の多くは答えを知っていると思う。一部の日本人は、まだ、やればできると思っているようだが、開発の継続性が途切れて既に数年が経過している。技術や業界の競争が、それで追い付けるほど甘くはないのは、言わなくても分かるだろう。

 Mate 20 Proの中身は、図4で示したように、骨格を成す部分こそHiSiliconの手によるものだが、半分は日欧米のチップだ。いずれも相互に絡み合っており、HiSiliconのチップだけではスマートフォンにはならないし、日米欧のチップだけでも完成しない。多くは相互依存で成り立っているのだ。

 技術面ではお互いがリスペクトし合い、競争し合い、より良いものを作ることにいそしんでいると思えてならない。こうした素晴らしい技術が停滞しないことを望むばかりである。Mate 20 Proを隅から隅まで観察したが、“余計なもの”は一切存在しなかった、ということをあらためて強調しておく。むしろMate 20 Proは、研ぎ澄まされ、洗練された2018年最高のスマートフォンの一つであったと結論付けたい。

 なお、2018年は「余計なもの」という情報が一体何を指すのか、それを観察して明らかにすべく、Supermicro(スーパーマイクロ)のサーバを数台買ったり、Huaweiのスマートフォンを急きょ、数台分解したりと、予定外の費用と労力を使ってしまった。

 願わくは、2019年は「余計なもの」と言うからには、その「余計なもの」を具体的に示していただきたいものである。

 その場合には弊社にて、通常は有償となるチップの開封と解析を、無償にて引き受けたい! “余計なもの”の正体を、ぜひとも見極めたいのである。

執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年に渡る半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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