東北大学と三井金属鉱業の研究グループは、低温焼結性の銅ナノ粒子を極めて低い環境負荷で合成できるプロセスを新たに開発した。次世代パワーデバイスの接合などを安価な銅ナノペーストで行うことが可能となる。
東北大学多元物質科学研究所の蟹江澄志准教授らと三井金属鉱業の上郡山洋一博士らによる研究グループは2019年1月、低温焼結性の銅ナノ粒子を極めて低い環境負荷で合成できるプロセスを新たに開発したと発表した。これまでは、電気回路の形成や接合の材料として高価な銀ペーストを用いていた。今回の成果により、安価な銅ナノペーストに置き換えることが可能となる。
研究グループが開発した「水溶性銅錯体室温還元法」と呼ぶプロセスは、水中や大気下、室温など極めて環境負荷の小さい条件で水溶性銅錯体を還元処理し、低温焼結性の銅ナノ粒子を合成することができる技術である。
開発した銅ナノ粒子の表面には、耐酸化性の有機物が吸着しているが、この有機成分は140℃程度の低温で分解され、銅ナノ粒子の焼結が始まることを解明した。開発した銅ナノ粒子をペースト化した銅ナノペーストを用い、回路形成や接合材料としての評価を行った。
この結果、約180℃の低温で30分間焼成(N2雰囲気下の無加圧焼成)したところ、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムやポリイミド(PI)フィルム上に、膜厚が14μmの良好な銅配線を行えることが分かった。また、銅基板間を銅ペーストで接合する材料としての試験でも、約200℃で30分間の焼成(N2雰囲気下の無加圧焼成)を行うと、30MPa以上のシェア強度になることを確認した。
これらの評価結果から、開発した銅ナノペーストは、PENフィルムやPIフィルム上への配線形成材料および、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を用いた次世代パワーデバイスの接合材料として利用できることが分かった。IoT(モノのインターネット)センサーの回路形成材料などとして期待できるという。
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