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Intelの創業10年目(1977年):クオーツ式腕時計事業から撤退福田昭のデバイス通信(187) Intelの「始まり」を振り返る(20)(1/2 ページ)

Intelにとって創業10年目である1977年の状況を紹介している。前回は1977年の業績概要をご説明した。今回は1977年の主な出来事を報告する。

» 2019年05月08日 10時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

拡大を続けるIntelの半導体事業

 Intelの公式文書である「年次報告書(アニュアルレポート)」をベースに、Intelの創業期の活動を創業年(1968年)から1年ずつ記述する連載の第20回。前回から、創業10年目である1977年の状況を紹介している。前回は1977年の業績概要をご説明した。今回は1977年の主な出来事をご報告する。

 本シリーズの第7回で、Intelはクオーツ式腕時計の開発ベンチャーMicroma(Microma Inc.)を1972年7月に買収し、腕時計事業に参入したことを報告した。クオーツ式腕時計事業は一定の成功を収めた。しかし1977年にIntelはMicromaを精算し、腕時計事業から撤退する。Micromaが所有する資産は廃棄し、従業員はIntelの各部門が吸収した。

 腕時計事業から撤退した理由には、1977年の年次報告書では触れていない。この時期、クオーツ式腕時計市場は、際限なき値下げ競争に突入していた。厳しい値下げ競争を強いられ続けることや、一般消費者向け販売という不慣れな事業を抱えるリスクなどを嫌ったことは、十分に考えられる。

 腕時計事業からの撤退を除けば、1977年にIntelの事業は拡大の一途をたどったと言えよう。事業組織ではマイクロコンピュータ事業を拡大するため、「マイクロコンピュータ部門」を2つに分割した。半導体製品を扱う「マイクロコンピュータ・コンポーネント部門」と、システム開発支援製品を扱う「マイクロコンピュータ・システム部門」である。

1977年の主な事業活動。1977年の年次報告書(アニュアルレポート)を基に作成

 開発や生産などの拠点も拡大した。マーケティングと研究開発を担う新たな拠点を米国オレゴン州ポートランドに設けた。マーケティングと研究開発のいずれも、米国カリフォルニア州のシリコンバレー地域以外では初めての拠点である。

 生産では、パッケージング工場の強化が目立つ。フィリピンのマニラ工場に新しい生産ラインを設けるとともに、カリブ海の西インド諸島に位置するバルバドスに工場を建設した。

 製品開発では、1977年は通年としては過去最大品種数の新製品を発表した。DRAM、SRAM、紫外線消去型EPROM(UV-EPROM)、マイクロコンピュータのいずれの市場でも、大手ベンダーの地位を堅持しようとする意志の現れだ。

 製造技術では、nチャンネルMOS技術の高速版であるHMOS(High-speed MOS)技術を開発した。HMOS技術は高速SRAMの製造に採用された。

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