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不揮発メモリ新時代(後編)メモリ/ストレージ技術(1/5 ページ)

現在のDRAMやNAND型フラッシュメモリの用途に向けた次世代不揮発メモリの候補は4種類ある。FeRAM、MRAM、PRAM、ReRAMだ。ただし、どれか1つの不揮発メモリで全用途に対応することは難しそうだ。これはどの不揮発メモリにも何らかの欠点が存在するからだ。後編では不揮発メモリの用途や各不揮発メモリの性能向上策、技術動向について解説する。

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 不揮発メモリの活躍の場は幅広い。ワークメモリの不揮発化のほか、現在のストレージメモリの用途を広げる使い方、システムLSIの不揮発化など、さまざまな応用が考えられる。前編では不揮発メモリが求められる背景を解説した。

 ただし、1つの不揮発メモリ技術で全ての用途をカバーするという「ユニバーサルメモリ」構想は、現時点では現実性に乏しい。用途によって求められる仕様が異なり、現在開発されているどの不揮発メモリ技術を選んだとしても満たせない仕様が残るからだ。



MRAMに一服感、PRAMとReRAMが追撃

 不揮発メモリに要求されることが多い仕様と、MRAM(Magnetoresistive RAM)、PRAM(Phase change RAM)、ReRAM(Resistive RAM)など現在開発が進められている不揮発メモリの特性を表1にまとめた。例えばPRAMとReRAMは信号比が高く、セルサイズが小さい点で優れる。MRAMはDRAMに匹敵する書き換え可能回数と短い書き込み時間で優位性がある。


表1 不揮発メモリに必要とされる仕様 全ての仕様を満たす不揮発メモリは存在しない。信号比が高いほど大容量化した場合の誤読み出しが減り、多値化技術を適用しやすい。微細化に伴う問題点が大きい技術は大容量化には向かない。繰り返し書き込み回数はDRAMとNANDの2つが指標となり、中間の値は用途が見いだしにくい。書き込み時間は、DRAMの10nsが目標となる。セルサイズは多値化技術を使わない場合、4F2以下にはならない。なお、F(Feature Size)とは加工寸法の値である。CMOSとの適合性がない技術は適合性がある技術に比べて製造が不利になる。

各種用途が狙えるPRAM

 前編で紹介したように、PRAMはDRAMを代替する用途のほか、NOR型フラッシュメモリの置き換えなどさまざまな用途が提案されている。PRAMの長所は、微細化が可能で、信号比が大きく取れることだ。つまり大容量化に適し、読み出し時の信頼性が高い。

 PRAM素子は図1のような基本構造を採る。上部電極と下部電極に相変化材料が挟み込まれており、相変化材料の結晶状態を制御することでメモリ素子として機能する。下部電極付近に非晶質(アモルファス)が多い場合(リセット状態)は、電極間の電気抵抗が高くなる。逆に非晶質が少ない場合(セット状態)は抵抗が低い。それぞれの状態がデータの「0」と「1」に相当する。


図1 PRAMの基本構造 上部電極と下部電極の間にGeSbTe(ゲルマニウム・アンチモン・テルル)などの相変化材料をはさみ込んだ構造を採る。GeSbTeの結晶状態によって垂直方向の抵抗値が変化する。

 PRAM素子の動作モードを図2に示した。


図2 PRAMの動作モード 抵抗が高いリセット状態(青)と抵抗が低いセット状態(赤)の抵抗値の違いを読み出して、メモリ素子として利用する。読み出し電圧よりも高いしきい値電圧を印加し、相変化材料をいったん融解させることで、両状態間を移行できる。与える電流値によって材料の温度が決まり、その後の冷却過程に応じてどちらかの状態を取る。

 米Ovonyxによって素子の開発が始まり、相変化材料に適するカルコゲナイド膜、すなわち3元系合金であるGeSbTe(ゲルマニウム・アンチモン・テルル)が2000年以降に開発された後、急速に開発が進んだ。その後、米IntelとスイスSTMicroelectronicsによる開発(両社が設立したスイスNumonyxに継承)のほか、韓国Samsung Electronics、エルピーダメモリ、米IBMとドイツInfineon Technologies、日立製作所とルネサス テクノロジなど各社による開発が続いている。現時点ではPRAMを用いたメモリやLSIはサンプル出荷の段階にとどまり、量産はされていない。

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