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半導体技術で“モバイル医療”の実現へビジネスニュース 業界動向

心臓を専門とする医学研究者は、米国半導体工業会(SIA)のイベントで、心電図をリアルタイムでスマートフォンに表示できる機能などを見せ、半導体技術がもたらす医療の進歩の可能性について話した。医療/ヘルスケア分野が、半導体技術に寄せる期待は大きい。

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 「デジタルヘルスケアは病院を変える」――。第一線の心臓専門医であり医学研究者であるEric Topol氏は、米国半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)が2013年11月7日に米国カリフォルニア州サンノゼで開催した「Annual Award Dinner」で、こう語った。Annual Award Dinnerでは、半導体業界で現在開発中の革新的技術について、その展望が語られたが、同氏の講演はその中で最も明るいものだった。

 「The Creative Destruction of Medicine(医療の創造的破壊)」の著者でもあるTopol氏は、同イベントで、「身体に装着したり、体内に埋め込んだりするセンサーの登場によって、個人に合わせた“モバイル医療”をリアルタイムに提供できるようになるだろう。現在はまだ実現には程遠いが、実用化される可能性は高い」と述べた。

 Topol氏は、「ヘルスケア分野に関しては、半導体技術は大きく遅れている。しかし現在、大きな潮流が起こりつつある。近い将来、ムーアの法則の適用などへの取り組みが始まり、今後のヘルスケア分野に変革をもたらすだろう」と数百人の半導体開発者を前に語った。

 同氏は、次々と登場する新たなヘルスケア技術の一例として、AliveCorの心拍モニターを紹介した。スマートフォンにリアルタイムで心電図を表示できるという。これを使えば、高度3万フィート(約9000m)の場所でも心臓発作の診断ができる。同氏は、患者から「不整脈があるのですが、何をすればいいでしょうか?」というメールを受け取っているという。


心電図を表示したスマートフォンを示すEric Topol氏

 同氏はこの他、カリフォルニア工科大学(CalTech)で実施された動物研究の結果を紹介した。ナノセンサーで血流を調べ、心臓発作の前兆となる細胞を見つけることに成功したという。同氏は、「この研究が実用化されれば、心臓発作が起こると予想される数日から数週間前に、特定の着信音を鳴らして、心臓発作の兆候があることを患者に知らせることができる。それによって、発作を防ぐことができるかもしれない」と説明した。

 ゲノム(遺伝子)配列が解明されれば、患者の腫瘍の状態に合わせて、より効果的に個別のガン治療が行えるようになる。Topol氏は、「医療診断は、1960年代当時の技術のままほとんど変化していない。だが、半導体技術がそれを大きく変えるだろう」と述べた。

 アプライド・マテリアルズのチェアマンを務めるMichael Splinter氏は、「近代の最も偉大な発明は、あらゆる電子機器の基本となるトランジスタだ」と述べた。「私の40年にわたるキャリアの中で、半導体サイズは10μmから10nmに微細化した。半導体業界は、歴史上最も生産的な産業である」と評している。なお、同氏は、SIAの2013年度Robert Noyce賞を受賞した。

 Splinter氏は、「ほとんど全てのシステムは、半導体とともに進化する」と述べ、ムーアの法則が終えんを迎えるという予測には反対の姿勢を示した。「われわれはこれからも、コンピューティング密度を高めるために新たな方法を考案していく。世界がそれを必要としているからだ。終わりなどない」(同氏)。現在64歳のSplinter氏は、大学1年生(18歳)の時に初めてトランジスタを作ったという。

 SIAの次期チェアマンで、IBMのリサーチ担当シニアバイスプレジデントを務めるJohn Kelly III氏は、「半導体業界は、モバイルやクラウド、ソーシャル、モノのインターネット(IoT)などの分野で大規模なビジネスチャンスを新たに創出するだろう。これらの技術を集約することで、われわれがこれまで経験したことのない巨大なデータが扱われるようになり、ビジネスの機会はさらに広がっていくだろう。大きな変革が再び始まろうとしている」と述べた。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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