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いよいよスマホ搭載か!? 電磁界結合による非接触コネクタで開発成果新技術 非接触コネクタ(2/3 ページ)

慶応大の黒田忠広氏らのグループは、米国で開催されている国際学会「ISSCC 2015」で電磁界結合を用いた非接触コネクタに関する2件の研究論文を発表する。同コネクタをスマホに搭載した場合でも、他の無線機と干渉しないことなどを実証した内容も含まれ、非接触コネクタの実用化加速が期待される。

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Google「Ara」にも「適用可能な技術」

 まず、スマートフォン向け技術論文としては、結合器のサイズを1/8.3まで小型化した新しい結合器を発表した。これまでの結合器は、送信側、受信側双方に2つのパターン(計4つのパターン)を用いて差動信号を伝送するものだったが、これを送受信ともに1つのパターン(計2パターン)だけで伝送を実現する新結合器「Two-fold TLC」(T-TLC)を開発。従来より1/8.3サイズの幅0.8mm、長さ7mmの結合器を作製して実証した。

左=新規に開発したTwo-fold TLC(右)と従来TLCの比較 / 右=Two-fold TLCの位置合わせ許容度 (クリックで拡大) ※黒田忠広氏提供

 また、従来結合器では、終端抵抗で捨てていた結合時に意図する方向(例えば「正→正」)とは逆に反転してしまった信号(「正→負」になった信号)も、新結合器では、逆側(負側)の信号に加わることができるようになり、「結合度が9dB改善した」という。

 結合器のサイズが小さくなったことで、位置合わせが難しくなる懸念が生まれるが、「長さ方向で長さの半分、幅方向では1mm程度ズレていても、伝送が行える」(黒田氏)という。なお実証段階における通信距離は1mm程度だとする(TLCとしては最大5mm程度)。


Two-fold TLCを作製した一対のフレキシブル基板 (クリックで拡大)

EMC試験の様子と結果 (クリックで拡大) ※黒田忠広氏提供

 さらにT-TLCの実証に合わせて、EMC試験を実施。結合器が10mm離れたGPS受信器に干渉しないことと、結合器が2mm離れたLTE/Wi-Fi送信機の干渉を受けないことを確認し、スマートフォンなど小型筐体に無線機を多く積む状況でも、TLCが共存できることを実証したという。黒田氏は「これまで、理論的に他のデバイスと干渉しにくいということが分かっていたが、実際の計測は難しく実証が難しかった。そのため、スマートフォンメーカーがTLCによる非接触コネクタの採用に踏み切れない要因となったが、今回の測定結果によりそうした問題がなくなる」と期待を寄せる。

左=黒田氏らは既にTwo-fold TLCを用いたモジュラースマートフォンを試作。黒田氏は「Googleなどが開発するモジュラースマートフォン『Ara』にも適用可能な技術」とする / 右=黒田氏が作製した現状の「Ara」に用いられているとみられる磁界結合による非接触コネクタと黒田氏ら慶應大によるTLCコネクタの比較資料 (クリックで拡大) ※黒田忠広氏提供

TLCを用いたモジュラースマートフォンの試作機。スマートフォン、カメラモジュール双方にTLCコネクタが埋め込まれている。試作機では、分かりやすいようにコネクタが埋め込まれている部分の筐体がくりぬいてある ※黒田忠広氏提供

モジュラースマートフォンにカメラモジュールを取り付けた状態。カメラモジュールに接続されたカメラ(写真右)のフルHD画像をTLCコネクタを介してスマートフォンに伝送。スマートフォンからディスプレイ(左奥)に映し出している ※黒田忠広氏提供

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