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リチウム-空気電池の過電圧を“水”が低減EV搭載が期待される次世代電池の効率を改善

産業技術総合研究所(産総研)は複数の大学と共同で、触媒としてわずかに水を添加した有機電解液DMSOを用いると、リチウム-空気電池の空気極の過電圧を大幅に低減できると発表した。

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 産業技術総合研究所(産総研)省エネルギー研究部門の周豪慎首席研究員は2015年7月、複数の大学と共同研究を行い、触媒としてわずかに水を添加した有機電解液DMSOを用いると、リチウム-空気電池の空気極の過電圧を大幅に低減できると発表した。

 空気極に炭素・ルテニウム・二酸化マンガンを用い、有機電解液DMSOに対して約100ppmの水を加えると、充電過電圧が約0.21Vまで縮小したという。

過電圧でカーボンや触媒が腐食

 リチウム-空気電池は空気中の酸素(O2)を電気化学反応に利用している。放電する場合は、外部回路からの電子と、電解液中のリチウムイオン(Li+)が、空気極中に拡散してきた酸素と還元反応を起こして、過酸化リチウム(Li2O2)になる。充電する場合は、逆に(Li2O2)が酸素発生反応を伴って分解し、リチウムイオンと酸素になるのが理想的だ。

 しかし、空気極の(Li2O2)酸素発生反応の過電圧が1.0V以上の大きな値になってしまい、その高い過電圧によって空気極に用いられているカーボンや触媒なども腐食されてしまう。そのため、腐食対策として、カーボンフリーの空気極、過電圧対策として、ヨウ素イオンなどの利用が盛んに研究されている。

有機電解液DMSOに触媒としてわずかな水を加える

 今回の測定システムは、空気極の過電圧を評価するために、負極にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を用い、DMSOに対して約100ppmの水を加えた有機電解液とし、空気極の触媒には、炭素とルテニウム(Ru)と二酸化マンガン(MnO2)を用いている。

 この構成の電池は、空気極の上に放電で生成したLi2O2がH2Oと反応して、固体状の水酸化リチウム(LiOH)と過酸化水素(H2O2)になる(Li2O2+2H2O=2LiOH+H2O2)。LiOHは低い電位で、酸素発生反応により分解され、Li+、O2とH2Oになり、また、H2O2もMnO2触媒による酸化還元反応で、O2とH2Oになる。これらの反応で、H2Oは、中間体LiOHを経由して消耗せずに循環して触媒の役割を果たしている。

 今回の空気極により、空気極のカーボン+Ru+MnO2の重さを基準にした電流密度250mA/gで、充電と放電の過電圧がそれぞれ、0.21Vと0.11Vに低減されたという。電流密度が500mA/gと1000mA/gの場合も、充電の過電圧が大幅に削減されている。


リチウム-空気電池用空気極のレート特性(左)/電流密度500mA/g(=0.25mA/cm2)における充放電サイクル試験では、安定した200回の充放電サイクル特性が得られた(右) (クリックで拡大)出典:産総研

電気自動車がより長距離走行できる電池として注目

 リチウム-空気電池は、理論的にリチウムイオン電池の約5〜8倍の重量エネルギー密度をもつ。電気自動車に搭載して、より長距離走行が可能になる高性能蓄電池として注目され、産総研は精力的に研究を続けている。

 充電時の過電圧をはじめ、空気極での充電・放電の反応機構がよく分からないことや充放電サイクル特性が悪いなどの課題があるが、空気極の構成の最適化や、作動環境の検討などを行い、性能の優れたリチウム-空気電池の開発を目指すとしている。

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