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機械学習が自動運転分野に、IMECが開発を加速センサーフュージョンシステムの一部に

ベルギーIMECが、未来のセンサーの開発計画を進めている。特にレーダーセンサーの開発に注力する他、有用な情報を局所的に抽出して機械学習(マシンラーニング)を行うことが可能なデバイスの実現を目指すという。

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画像はイメージです
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 IMECは既に、自動車用レーダー市場のリーダーであるInfineon Technologiesとの協業により、28nm CMOS技術による79GHz帯対応チップの開発に取り組んでいる。IMECの知覚システム担当プログラムディレクターを務めるWim van Thillo氏は、2016年5月24〜25日にベルギーのブリュッセルで開催された「IMEC Technology Forum」において、「波長をさらに短くすることにより、センサーのバックエンドに機械学習機能を追加したいと考えている」と語っている。

 Van Thillo氏は、「われわれは現在、140GHz帯対応チップの開発に着手している。140GHz帯の波長は2.2mmだ。1mm2のチップで、4GHzを超える帯域幅の実現を目指していく」と付け加えた。

 そのメリットとして挙げられるのが、レーダーにアンテナオンチップ(AoC)を搭載できるようシステムを小型化しながら、小さい電力で距離の延長や角度分解能の向上を実現することができるという点だ。さらにレーダーでは、角度や距離だけでなく、ドップラー効果を利用して速度情報を提供することも可能だ。チップ上に複数のアンテナを搭載することで、ドップラー分解能と深さ分解能を高めることができる。

28nm CMOSプラットフォームは自動車レーダーには適さない?

 また、パターン認識や自動学習向けのアルゴリズムを使用することで、速度情報を抽出するために必要な信号処理をさらに向上させることが可能だ。このためVan Thillo氏は、「レーダーのドップラーシグネチャによって、歩行者や自転車、自動車などの特徴を認識し、区別することができるようになる」と予測している。

 ミリ波知覚システム担当プログラムマネジャーを務めるMassimiliano Maranella氏は、「28nm CMOS技術を再び適用し、シミュレーションを行ったところ、少なくとも信号が十分に使えるレベルにあることが分かった」と述べる。しかし同氏は、28nm CMOSプラットフォームが長距離(300m)の自動車レーダーには適さないことを認めている。

 同氏は、「バンパーに使われているプラスチックや金属塗装が、140GHz帯のエネルギーを吸収してしまうという、複雑な状況が生じる」と述べる。

 しかし、140GHz帯は、短距離のジェスチャー認識システムで使用することができるが、その学習機能に関しては、自動車をはじめとする幅広い知覚システムに拡大することが可能だという。

 例えば、このような機械学習レーダーは、センサーフュージョンシステムの一部として機能させることにより、目視とレーダーとを組み合わせ、優れた識別性能を実現することができる。しかしVan Thillo氏は、「台頭しつつあるコネクテッドカーの最大の利点は、自動車がフリートラーニング*)によるメリットを享受できるという点にある」と指摘する。個々の自動車よりもはるかに迅速に危険を認識し、それに対応するための方法を学習することが可能になる。

*)Tesla Motorsが開発している機能で、自動運転車のユーザーがクラウドにアップしたデータを、他のクルマの自動運転システムが利用できる仕組み。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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