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CNTをより安全で使いやすく、直径2mmの粒状にnano tech 2017

三菱商事が「nano tech 2017」で展示したカーボンナノチューブ(CNT)「Durobeads」は、直径が約2mmの粒状になっている。CNTを粒状にしたCNTパウダーは既にあるが、そうした従来品に比べて、粉じん飛散量が約700分の1と低いので、安全性が高く、より扱いやすいようになっている。

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新形態のCNT

 三菱商事は「nano tech 2017」(2017年2月15〜17日、東京ビッグサイト)で、カーボンナノチューブ(CNT)を粒径約2mmのビーズ形状にした「Durobeads(デュロビーズ)」を展示した。

 Durobeadsは、分散したCNTの表面に樹脂をコーティングし、それらを凝集させて直径0.5〜2mmの粒状に成長させたものである。コーティング樹脂の融点は約105℃と低く、他の樹脂との相溶性もあるので、プラスチックや合成ゴムなど複合材のマトリックスとのコンパウンド製造に適した材料だという。コーティング樹脂は、マトリックスの中で容易に分解してCNTの分散を助けるので、CNT-マトリックスの形成を促す。これによって、CNT配合量を従来の1.6〜3.5倍まで高めることができるとしている。


Durobeadsの生成プロセスと電子顕微鏡写真(クリックで拡大) 出典:三菱商事

 従来のCNTパウダーに比べると、体積が約10分の1になっているのも特長だ。体積が小さいので、包装や輸送、保管に掛かるコストを低減できる。


従来のCNTパウダーとDurobeadsを同じ重量だけ、シリンダーに入れて体積を比較した。体積が大きく異なるのが分かる(クリックで拡大)

 Durobeadsは粉立ちしにくく、粉じんの飛散量(人体の肺まで届く可能性のある粉じん量)は、従来品に比べると約700分の1になるという*)

*)ただし、コーティングの割合が最も高いDurobeadsにおける数値。

 流動性が優れているのも特長だ。従来品は、ホッパーに投入した際、CNTパウダーがうまく下に落ちずに詰まってしまうこともあるが、Durobeadsは、その問題を解消しているという。詰まりを起こすことがないので、製造ラインにおいてホッパーに投入する工程を自動化することが可能になる。

Durobeads(右)は、詰まることなくさらさらと流れ落ちている

 三菱商事は、「CNTは1990年代から研究開発が進められているが、まだ扱いにくく、普及には至っていない。そこで当社は、使いやすいCNTを開発しようと考えた」と話す。Durobeadsは、現在は試作品の段階だが、サンプル提供は可能だという。「今後は製品化に向けてパートナーを探す。Durobeadsは当社が特許を保有しているので、製品化の際はライセンスを提供することになる予定だ。ただ、Durobeadsという名前で展開する必要はないと考えているので、ライセンスを提供する相手である製造メーカーが別のブランド名で展開していただいても、もちろん構わない」(三菱商事)

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