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半導体業界の大型M&A、ほぼ終息へアナリストの見解

過去数年にわたり大型買収が続いた半導体業界だが、こうした活発なM&Aは、ほぼ終息しつつあるという。

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M&Aは、ほぼ終息


画像はイメージです

 経営コンサルティングを手掛けるMcKinsey & Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー、以下McKinsey)でシニアパートナーを務めるBill Wiseman氏によると、過去3年にわたり繰り広げられてきた世界半導体業界の統合の動きは、ここにきてほとんど終わりつつあるという。これまでに投じられた資金は数千億米ドルに及ぶ。

 Wiseman氏は2001年にMcKinseyに加わる前は、IBMでミックスドシグナル回路の設計に携わっていた。それより前は米国海軍に所属していたという。同氏は、「統合先として魅力のある企業が少なくなっており、買収協議が持ち上がる可能性がほとんどなくなってきた」と述べた。

 Wiseman氏は、台湾・台北で2017年9月13〜15日に開催された「Semicon Taiwan」の基調講演で、半導体業界におけるほとんどのM&Aは、コストとシナジーに基づくものだったと述べた上で、同業界がかなり長い間、緩やかな成長パターンから抜け出せていなかったことを指摘した。

 だが、そのような停滞は過去のものになりつつある。半導体世界市場の売上高は、2016年は3397億米ドルだったが、2017年には4000億米ドルまで上昇することが見込まれている上に、企業統合による利益が出始める時期に入るからだ。また、半導体の価格は、メモリチップ以外も数年ぶりに上昇している。

 Wiseman氏は「企業統合によって、成熟期の製品の価格が上昇している」と述べた。

 業界の健全性の測定基準の1つに、研究開発(R&D)コスト対収益比率があるが、近年の相次ぐ企業買収後も半導体業界における同比率は14〜15%とかなり安定している。これが17%に上昇すると、チップサプライヤーは価格を引き上げなくてはならなくなる。Wiseman氏は「メモリプロバイダーでもない限り、業界としてはそうした展開は好まないだろう」と冗談交じりに述べた。

 買収ブームの終息を裏付ける要素は他にもある。

 最近、規制当局の承認が簡単には下りないケースが多くなっている。特に中国企業による買収に対してはそうした措置が取られる傾向がある。Wiseman氏は一例として、トランプ大統領が発令した大統領令によって、未公開株式投資ファンドCanyon Bridge Capital Partnersによる米Lattice Semiconductorの買収が破談になったことを挙げた(関連記事:投資ファンドによるLattice買収が破談に)。

 米国のホワイトハウスは2017年1月、中国による米国企業の買収を加速することは、米国の半導体産業の脅威になり得ると警告する文書を発表していた。

 McKinseyの予測に基づくと、中国のTsinghua Groupをはじめとする政府系投資ファンドが、米国のチップメーカーをさらに買収しようと試みたとしても、米国政府が阻止する可能性が高い。そうなると、中国が「世界半導体業界で主要なプレイヤーになる」という野望が早い時期にかなうことはなさそうだ。


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決着が付いていない注目の買収案件

 現在、半導体業界において注目すべき大型買収案件は、2つ残っている。1つは東芝メモリの売却、そしてもう1つはQualcommによるNXP Semiconductors(以下、NXP)の買収だ。欧州の規制当局は同案件について調査を強化すると発表していることに加え、Elliot ManagementなどNXPの株主は、「Qualcommの提案は十分に魅力的とはいえない」と言い続けている。一方、QualcommのチェアマンであるPaul Jacobs氏は、「提案した金額は妥当なものだ」と主張している。

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