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ニッポンのお家芸“カメラ”にも押し寄せるスマホ用チップセットの波この10年で起こったこと、次の10年で起こること(18)(2/3 ページ)

リコーの360度全天カメラ「THETA」を取り上げる。2017年9月15日に発売されたばかりの最新モデル「RICOH THETA V」と従来モデルを比較していくと、外観にはさほど違いがないにも関わらず、内部には大きな変化が生じていたのだった――。

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THETA SとTHETA Vを分解

 図2は、THETA SとTHETA Vの内部を丸ごと取り出した様子である。


図2:「THETA S」(左)と「THETA V」(右)の内部。内部は放熱、ノイズ対策が万全に施される (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 内部には図面の基板を取り囲むように、さらに冷却シートが全体を覆っている。THETA Sでは冷却シートが5枚、THETA Vでは冷却シートが1枚と、枚数が激減していることから、電力性能が向上しているものと予想される。半導体チップは動作時に高い熱を発する。熱を少しでも抑えるためには電力を下げることが一番だ。電力を下げるには、少しでも動作を止める(間欠動作やクロック周波数を下げる、止めるなどの処理)、先端プロセスを用いたプロセッサで電源電圧を下げる(先端製品は微細化効果で、電圧を下げられる)、さらに部品点数を減らすことでの、フットプリント、BOMの改善などが組み合わされる。

 図3は、THETA SとTHETA Vの基板の様子である。


図3:「THETA S」(左)と「THETA V」(右)の基板。THETA Vでは内部基板が1枚に統合されている (クリックで拡大) 出典:テカナリエレポート

 図2の内部を取り囲む放熱シートの下には基板に取り付けられた金属シールド板があり、金属シールドを取り除くと半導体チップが搭載された基板が現れる。3層の放熱対策が施されているわけだ。「冷却シート⇒放熱シート⇒金属シールド」という冷却シート構造はカメラの信号処理プロセッサなどのチップ温度上昇を抑え、放熱に用いられる。動画処理は、動き出すとほぼ100%の稼働が続くデバイスなので、活性化率が極めて高く熱源となってしまうからだ。アクションカメラ、ドローンカメラなど、動き出すと止まらないデバイスの周りには同様の処理が成されている。空冷装置を持つカメラ周りもあるほどだ。

 THETA Sは計3枚の基板で構成されているのに対して、最新のTHETA Vは1枚基板、ファンクションチップ数も9個から7個に減っている。チップ点数、基板枚数が減っていることから、著しくBOM、フットプリントは改善された。かつフルHD対応から4K対応へと仕様も向上しているので、外観は酷似した2製品だが、中身、性能は別物と言ってよい状況だ。

 THETA Sでは2つのカメラ画像を合成するために、FPGAを用いた合成基板、画像を処理するためのメイン基板、データ通信用のWi-Fi基板の3機能が存在していたが、THETA Vでは合成、画像処理、通信までが1つの基板に小さく収められている。6軸センサーも同基板に搭載されている。

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