反響を呼んだGoogle Chrome OS、普及のカギはドライバとアプリか

米Google社が発表した「Google Chrome OS」(Chrome OS)のコンセプトに、チップ・メーカーや、アナリストの大半が賛同の意を表明する一方で、米Microsoft社の上得意客を含むパソコン・メーカー各社は、静観の構えを見せている。Chrome OSは、Windowsの代替として、最終的には、ノート・パソコンやデスクトップ・パソコンへの標準搭載を狙う。
Google社が、Chrome OSの開発に関するエントリを同社の公式ブログに投稿したのは、2009年7月7日のことだ。同ブログによると、Chrome OSは、まずx86プロセッサとARMプロセッサに向けて開発し、2010年後半にはChrome OS搭載ネットブックが市場に出回る予定だという。
同社は、Chrome OSに対応するハードウエアの仕様や、同OSのソフトウエア・コンポーネントに関しては、インタビューや質問に応じない意向を伝えた。同社のスポークスマンは、「現在はソフトウエアを開発中であり、OEMベンダーをはじめとするパートナ企業と話し合いを始めたばかりだ。そのため、技術面に関する詳細はまだ決定していない」と説明する。
ここ数カ月、Google社がスマートホン向けOS「Android」をネットブック向けに移植するのではないかと噂されていたが、今回の発表によって噂に終止符が打たれたことになる。現在開発中のChrome OSは、Androidとは別の新たなプロジェクトで、2008年9月に発表されたウェブ・ブラウザ「Google Chrome」が動作する軽量OSだ(図1)。同社によると、Google Chromeの利用者は今や、3000万人を数えるという。

2009年7月8日時点で、Google Chrome OSのサポートを9社が表明した。
同OSの初期版はすでに、米Freescale Semiconductor社がネットブック向けに設計した統合プロセッサ「i.MX515」上での動作が確認されている。同プロセッサは、英ARM社の汎用プロセッサ・コア「Cortex-A8」を搭載しており、動作デモでは512MバイトのDDR2対応SDRAMを搭載していた。
Freescale社のコンシューマ・マーケティング部門でディレクタを務めるGlen Burchers氏は、「当社の顧客企業は、強力なブランド力があり、(Windowsの)代替となり得るソフトウエア戦略を推進する企業に興味を示している。Google社には、この戦略を実行するだけの力がある」と話し、「実際のところ、当社の大口顧客の数社はすでに、Chrome OSの採用に前向きな姿勢を示している」と明かした。
Burchers氏の話では、Chrome OSの開発に関する情報をFreescale社が初めて耳にしたのは「2009年2月から同年7月の間」だったという。情報源は「(Freescale社とGoogle社の)共通の顧客の内の1社」で、「この大口顧客は以前、Android搭載ネットブックの開発に注力していたが、現在はChrome OSに照準を移している」という。
Linux/ARMベースのネットブックの一部は、当初、2009年後半に出荷が予定されていた。だが、Chrome OSが発表されたことで、出荷開始時期を1年程度遅らせるベンダーも出てきた。ただし、Linuxディストリビューションの1つである「Ubuntu」を採用する、Linux/ARMベースのネットブックを計画通り年内に発売するベンダーもある。
Burchers氏は、「当社の顧客の中で先陣を切ってネットブックを発売するメーカーは、OSにUbuntuを採用する予定だ。一部のメーカーは今後も、Androidを採用したネットブックの開発に取り組む可能性があるため、当社では、Android搭載ネットブックに対しても引き続き、広範な開発サポートを提供していきたい」と話す。
ただし、Androidは基本的には、スマートホンに向けたOSだ。事実、次世代Androidでも、表示画素数は最大854×480画素(フルワイドVGA)と、依然として低いようだ。
スマートホンに注力するチームと、パソコンなどのより大型の機器に注力するチームを個別に立ち上げ、AndroidとChrome OSという2つのOSを別々に開発したことは、長い目で見れば、Google社にとっては意味のあることだ。ネットブックやノート・パソコン、デスクトップ・パソコンに向けたOSをAndroidとは別に提供するのはよい考えだ。Androidに費やす開発の方向性がばらばらになるリスクを軽減できる。これまでも、Linuxを使って複数の目的を達成しようとして失敗した他社の事例がある。
多数のネットブック・ベンダーや組み込み開発者からAndroidが支持を受けていることには理由がある。ソフトウエア開発者を引きつけられるだけの魅力を備えた企業が主導するいわば最初のLinuxディストリビューションだったということだ。
2013年にはネットブックの出荷台数が、ノート・パソコンの1/4を占めるほどに成長すると予想されている。だが、(Windowsを使わないとすると)ネットブック向けのソフトウエアはまだ不十分だ。例えば標準といえるアプリケーション・フレームワークが存在しない。さまざまなフォーマットが使われているウェブ・ビデオに関してもすべてのフォーマットに対応できているとは言えない。
米Forward Concepts社で社長を務めるWill Strauss氏は、Google社の取り組みがある問題を解決できるかどうか、懐疑的だ。その問題とは、主要な周辺機器のデバイス・ドライバをLinux向けに提供できるかどうか、主要アプリケーション・ソフトウエアをそろえることができるかどうかという古くて難しい問題だ。
「エンド・ユーザーがネットブックを自宅に持ち帰ったとしよう。そのユーザーがふだん使っているプリンタ用のデバイス・ドライバを入手できるのだろうか。これはLinuxベースのネットブックにつきまとう大きな問題といえる。Chrome OSが同じ問題を抱えているのは確実だ」(同氏)。
「Linuxがパソコン市場でわずかなシェアを獲得するのにいったい何年かかったのか。Linus Torvalds氏がLinuxの開発を開始したのは1991年だ。Google社は1年間でこの状況を改善できるのだろうか」(同氏)。
Strauss氏ほど悲観的な意見は少なかった。コンサルタント企業である米Envisioneering社で社長を務めるRichard Doherty氏は「Google社が現在公開している開発スケジュールを守ってくれれば、パソコン部門の中でも最も成長が著しいネットブックにとってまたとない援軍になる」と語った。「Google社がこの時期に活を入れてくれたおかげで、Microsoft社、米Intel社などは顧客に対してより魅力的で先進的な製品を提供しなくてはならなくなった。それができなければ、Google社とARM社の勝利に終わるだろう」(同氏)。
「Google社の決断を歓迎する」とはIntel社のスポークスマンの言葉だ。Intel社はこれまで同社のx86プロセッサ上で動作するあらゆるOSをサポートしてきた。Microsoft社はIntel社のプロセッサ以外でも動作する「Windows CE」などの携帯機器向けOSを出荷している。Intel社によると「当社はGoogle社とはさまざまなプロジェクトで協力している。Chrome OSプロジェクトにもしばらく前からかかわってきた」という。
パソコン・メーカーである米Dell社と米Hewlett-Packard社はありきたりな声明を公開した。OSを含むあらゆる新技術を評価するという内容だ。インタビューはもちろん、Chrome OSに対してどのような取り組みを進めているのかについても、これ以上の情報は得られなかった。
Dell社のネットブック「Inspiron Mini 10v」でWindows以外のOSを動作させている映像を同社の技術者がYouTube(http://www.youtube.com/watch?v=HliEujxRoYQ&eurl=http://www.crunchgear.com/2009/05/20/video-dell-teases-android-on-mini-10v/&feature=player_embedded)に投稿している。動作しているのは、UbuntuとAndroidだ。
Freescale社と同様に、米Texas Instruments社もChrome OSを好意的にとらえている。ARMコアを内蔵する同社のOMAPプロセッサ向けOSとして魅力的だからだ。
Texas Instruments社のモバイル・コンピューティング部門ビジネス・デベロップメントのマネジャーを務めるRamesh Iyer氏は、「ネットブックは、急速に変化する携帯型機器セグメントの氷山の一角に過ぎない」と言う。
「Chrome OSのようなプラットフォームで何が最も重要かと言えば、それは統合されたLinuxのソフトウエア・スタックだ。このスタックがあれば、リッチなGUIを備えていたとしても、開発がしやすくなり、エンド・ユーザーの使い勝手も向上する」(同氏)。「Chrome OSの発表をきっかけに、Linuxに必要なソフトウエア・スタックの開発がより一層進むと考えている」(同氏)。
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