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半導体製造技術で最先端を行くIntel社、その優位はいつまで続くのか

Processor / Logic / Memory
図

 米Intel社は2010年1月7日、世界最先端となる32nm製造技術を適用したプロセッサを発表した。このプロセッサのマイクロ・アーキテクチャは、すでに市場に出ている「Core i7」、「Core i5」と同じく「Nehalemマイクロ・アーキテクチャ」だ。大きな違いは、新しい32nm製造技術にある。

 Semiconductor Insights社は、幸運にもデスクトップ向けの新プロセッサを発売前に入手することに成功し、新しい32nm製造技術を詳細に分析した。Intel社は32nm製造技術において、第2世代の「高誘電率/金属ゲート技術(HKMG:high-k Metal Gate)」技術を採り入れた。しかし、Semiconductor Insights社は、他の半導体製造業者が製品に金属ゲート技術を適用した例をいまだに検証できていない。では、製造技術微細化の競争において、Intel社の好敵手となるのは一体どのメーカーなのだろうか。

 この疑問に答えるために、Intel社とそのライバルである米AMD社、そして世界最大のファウンドリ企業であるTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)社の3社の製造技術の進化の過程を比較した。ここに示したデータは、すべてSemiconductor Insightsが独自に収集したものである。

 TSMC社はファウンドリ企業であり、独自の製品を持っていない。そこで、TSMCの技術で製造したファブレスFPGA(Field Programmable Gate Array)メーカーのプロセッサを分析した。一般に、TSMC社のような半導体製造業者の最新技術をいち早く利用するのはFPGAメーカーだ。微細化により、同じ面積のダイにより多くの論理素子を集積できるようになり、製品の性能が上がり、設計の自由度が高まるからだ。

 なおこの時点では、独自データを多く集められなかったため、Common Platform Technology Alliance(米IBM社、シンガポールChartered Semiconductor Manufacturing社、韓国Samsung Electronics社の連合)の技術は比較対象としなかった。しかし、この新しい技術連合が、ファウンドリ企業のチャンピオンとして君臨するTSMCにどのように対抗していくのか、興味深い。

 より良く将来を見通すために、過去を見直すことが役に立つときがある。図1は、AMD社などの3社が90nm、65nm、45nm、32nmの製造技術を適用した製品を発表した時期を表している。Intel社以外の2社はまだ32nm製造技術を適用した製品を発表していないため、両社が発表する時期を予測して示した。

AMD社は32nm製造技術への移行に手間取る

 図1を見ると、Intel社が1年おきに新しい製造技術を発表していることがわかる。Intel社の発表ペースは、明らかにムーアの法則の影響を受けている。よく知られているように、この法則はIntel社の共同創立者Gordon E. Moore氏が発見したものだ。Intel社はこの法則に従って非常に規則正しく新技術を投入している。Intel社がペースを崩さないと仮定すれば、32nm製造技術の次に来る22nm製造技術が、2012年の年初に登場すると簡単に予測できる。

 AMD社もIntel社と同様に、ムーアの法則に従って製造技術を進化させてきた。図1を見ると、Intel社と同じ年に新しい製造技術を発表してきている。しかし、それぞれの年の年初に発表しているIntel社に比べると、同じ年でも年末に発表しているAMD社は少し遅れていると言えるだろう。

 そして、AMD社は45nm製造技術から32nm製造技術への移行に、これまで以上に時間がかかり、その間隔が2年以上になると予想できる。新技術投入のペースが落ちる理由の1つとして、同社がチップの製造部門を分離して、米GLOBALFOUNDRIES社を設立したことが挙げられる。そして、同社が最新製造技術への移行に手間取っているのは、32nm製造技術の次に来る技術を見通したとき、同社がムーアの法則に追従することが難しくなっていることを示す兆候であるとも見るべきだろう。

 TSMC社の製造技術の移行の過程は、先に挙げた2社のように規則的ではない。ファブレスの半導体ベンダーの製品ロードマップに依存しているからだ。90nm製造技術の発表から、65nm製造技術の発表までに3年を要したが、その後、45/40nm製造技術への移行には15カ月しかかかっていない。図1に挙げた製造技術のそれぞれの世代の間に、わずかに微細化を進めた「中間型」とも言える製造技術を挟むことで、TSMC社はほとんど毎年新技術を投入することを可能にしてきた。TSMC社のこの戦略は、ほかのファウンドリ企業にとって追従していくことが難しいものになっている。

ムーアの法則はいまだに健在

 ムーアの法則は、製造技術が1世代微細化するごとに、集積回路の大きさが70%縮小することを予測している。半導体製造技術の世代は、トランジスタのゲート長で表現するものだが、配線の間の最小間隔も重要な指標である。この寸法が決まると、論理ゲートの密度が決まる。そして、チップに集積できるトランジスタの数も決まる。

 図2は、3社の製造技術における、配線の最小間隔の移り変わりを表している。3社はほぼ同じペースで製造技術を進化させてきた。このことはムーアの法則が衰えることなく、いまだに健在であることを示している。

 興味深いことに、TSMCはほかの2社よりもわずかに配線間隔が微細な製造技術を採用している。これは、TSMCの顧客が主にGPU(Graphics Processing Unit)やFPGAメーカーなどのSoC(System on Chip)メーカーであるためであろう。最新のGPUは10億を超えるトランジスタを集積している。Intel社やAMD社の製品ほど個々のトランジスタが速く動作しなくても、チップ・サイズの縮小はTSMC社の顧客にとって大きな意味があるのだ。

 各社とも製造技術を新しくするときは、配線の最小間隔を狭くし、製造プロセスを改善している。主要な半導体メーカーが導入してきた主要な製造プロセスとしては、埋め込みシリコン・ゲルマニウム(eSiGe)を利用してソース領域とドレイン領域を形成する技術と、HKMGの2つが挙げられる。eSiGeは比較的遅く動作するトランジスタ(PMOS)の性能を向上させ、HKMGはトランジスタのスイッチング速度を高め、ゲートにおける漏れ電流を減少させる。

 図3は、3社がeSiGeとHKMGを採用した(する)世代を示している。ここでは、Intel社がプロセス技術の革新において明らかに先行していることを示している。2004年には、90nm製造技術でeSiGeを導入している。AMD社は1世代後でIntel社に続いたが、TSMC社はIntel社からおよそ2世代遅れてeSiGeを導入している。今のところ、HKMGはIntel社しか導入していないが、AMD社もIntel社に2世代遅れて32nm製造技術で導入すると見られる。TSMC社はHKMGを28nm製造技術で導入すると見られるが、28nm製造技術は中間的な製造技術であるので、HKMGの導入では1.5世代遅れているということになる。AMD社が使用したSilicon on Insulator(SOI)などのプロセス技術は、広く採用されなかったので、ここでは比較対象としていない。

Intel社の優位は1年ほど続く

 優れたプロセス技術があれば、優れた半導体を製造できるとは限らない。かつてAMD社は、サウンド回路の設計を、効率的で短いパイプライン構造にしたり、メモリー・コントローラをコアと同一チップに集積するなどの工夫で(後にIntelも同様の設計を採用した)、プロセス技術での遅れをカバーしてIntel社からシェアを獲得したことがある。

 Intel社もGPUや、急成長を遂げている超低電力プロセッサ市場などで厳しい競争に直面している。しかし、各社の設計技術が同程度であると仮定すれば、Intel社は少なくとも2011年の初期(早ければ2010年後半)にAMD社/GLOBALFOUNDRIES社が32nm製造技術を導入するまで、ライバルよりも技術的な優勢を保つと思われる。

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