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最適な公衆無線網を選ぶ、IEEE準拠のコグニティブ・ルーターが登場

Network / Communication
図1
図1 トリプレットゲートの池田武弘氏
代表取締役CEOを務めている。電子情報通信学会のソフトウェア無線研究会(2010年1月21日)で、「コグニティブ機能を実装したモバイルルータの商用提供の狙い」という題で講演した。

 携帯電話通信網やWiMAX、公衆無線LAN(Wi-Fi)…。数年前には考えられなかったほど、さまざまな方式の無線通信サービスを利用できるようになった。公衆無線通信サービスの普及に歩調を合わせるように、無線通信機能を備えた携帯型機器が急速に普及しつつある。無線LANを搭載した携帯電話機やネットブックだけでなく、ゲーム機やデジタル・カメラ、音楽プレーヤなども無線通信機能を持つようになった。

 無線通信サービスの選択肢が広がり、無線通信機能を備える携帯型機器が増えることは、利用者にとって喜ばしいことだ。しかし、公衆無線LANサービスを手がけるトリプレットゲートの代表取締役CEOを務める池田武弘氏は、現在の状況を「利用者とって嬉しい反面で、嘆かわしい状況だ」と指摘する(図1)。それぞれの携帯型機器に適した無線通信方式が分かりにくくなっているというのだ。

 池田氏が指摘する問題を解決する技術の1つに「コグニティブ無線通信」がある。利用する周波数や帯域幅、通信方式などを、その時々の利用状況に合わせて動的に変えるというものだ*1)。例えば、無線LANが使える場所では無線LANを利用し、無線LANが使えない場所に移動したら、3G通信やWiMAXに自動的に切り替えるといった具合である。

 コグニティブ無線通信のアイディアは古くからあったものの、これまでは研究開発にとどまっていた。最近になってようやく、いくつかの対応機器が姿を現してきた。2009年2月には、コグニティブ無線通信システムのアーキテクチャ(枠組み)を規定した国際標準規格「IEEE 1900.4」が成立している(参考記事)。そして、2010年4月には、このIEEE 1900.4規格に対応したコグニティブ・ルーターが業界で初めて登場する見込みである。トリプレットゲートが製品化する予定だ(図2)。

 このほかIEEE 1900.4規格対応ではないものの、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)が、複数の無線通信方式に対応し、その時々の状況に合わせて無線通信方式を切り替える「Personal Wireless Router」の実証実験を実施した。NTTBPも将来の商用化を視野に入れる。

図2
図2 2010年4月に発売予定のコグニティブ・ルーター
コグニティブ無線通信システムのアーキテクチャ(枠組み)を規定した国際標準規格「IEEE 1900.4」に準拠する。

一般利用者に意識させない

 2010年1月21日に開催された電子情報通信学会のソフトウェア無線研究会では、トリプレットゲートの池田氏が登壇し、コグニティブ・ルーターを製品化する狙いや、現在開発中であるルーターの概要を明らかにした。

 池田氏は、「誰でも簡単にワイヤレスでインターネットに接続可能な環境を作りたい」という目標を掲げ、同社を2004年に創業した。無線LAN統合サービスを提供しているほか、各種端末に適した無線接続ソフトウエアや、無線LAN信号を3G通信信号に変換するWi-Fiコンバータ機を販売している。

 2010年4月に製品化する予定のコグニティブ・ルーターは、Wi-Fiコンバータ機を発展させたものと位置づけられる(図3)。「さまざまな公衆無線通信サービスの信号を受信して、無線LAN信号に変換する」(同氏)ことを目指したものだ。

図3
図3 従来のWi-Fiコンバータの発展型
トリプレットゲートはこれまでも、無線LAN信号を3G通信信号に変換するWi-Fiコンバータを提供してきた。コグニティブ・ルーターは、対応する通信方式を増やし、最適な方式に動的に切り替えられるようにしたもの。

 具体的には3G通信と公衆無線LAN、WiMAXの3方式に対応する予定である。携帯型機器と公衆無線ネットワークを仲介し、両者を接続する役割を担う(図4)。携帯型機器とコグニティブ・ルーターは無線LANで接続し、ルーターと無線ネットワークは3G通信、公衆無線LAN、WiMAXの3方式のいずれかで接続する。このときコグニティブ・ルーターは、その時々の状況に合わせて3方式のうち最適な方式を選んで無線ネットワークに接続する。

図4
図4 無線ネットワークと携帯型機器を仲介する
コグニティブ・ルーターは携帯型機器とは無線LANで接続する。一方の無線ネットワークと接続する通信方式を切り替える。「いつでも、パーソナル無線LAN環境を構築できる」(トリプレットゲート)。

 コグニティブ・ルーターは、無線LANとWiMAXの通信モジュールを内蔵する。RFトランシーバ部とベースバンド処理部は、無線LANとWiMAXそれぞれに別系統で備える計画だ。「2つの通信方式に対してハードウエアを共通化し、その上で利用する方式をソフトウエアで切り替えるソフトウエア無線も方法の1つだ。ただ、コストと信頼性の観点から今回は採用しなかった」(同氏)。3G通信には、USB接続の外付け通信アダプタで対応する。

利用者の好みも方式選択に反映

 コグニティブ・ルーターを開発する上で重要なのが、利用する通信方式を切り替えるアルゴリズムである。トリプレットゲートは通信方式を切り換えるアルゴリズムの詳細は明らかにしていない。ただ、「利用者が端末に設定した情報(ユーザ・プリファレンス)を通信方式の選択に生かす。これを当社の売りにしたい」(トリプレットゲートの池田氏)と説明した。

 コグニティブ・ルーターが準拠するIEEE 1900.4規格は、コグニティブ無線通信システムの構成要素や、それぞれの構成要素が担当する役割、構成要素間の通信手順(プロトコル)などを規定している。複数の構成要素のうち中心的な役割を担うのが、無線ネットワーク側の「NRM:Network Reconfiguration Manager」と、無線端末側の「TRM:Terminal Reconfiguration Manager」である。両者は、相互に連携して最適な無線接続方式を選ぶ。例えばTRMでは、ユーザ・プリファレンスや、NRMなどから得た各種情報を基に、最適な通信方式を利用しているかを判断する(図5)。

図5
図5 コグニティブ無線通信システムの全体像
コグニティブ・ルーターとネットワーク側のNRM(Network Reconfiguration Manager)で、信号干渉レベルや利用可能な通信方式といった情報をやりとりする。

 池田氏は、「IEEE 1900.4規格に対応することで、2つのメリットが得られる」と説明した。1つはネットワーク接続のトラフィック分散、もう1つはほかの無線機器との干渉回避である。現在、コグニティブ・ルーターの試作機を評価している段階である。

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