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米大学、リチウムイオン2次電池の容量を5倍に拡大する負極材料を開発

Analog / Power
図1
図1 Yushin氏が開発した電極材料の構造
C(炭素)のナノ粒子でできた枝にSi(シリコン)のナノ粒子が付着している。出典:米Georgia Institute of Technology。


図2
図2 Siのナノ粒子をとらえた電子顕微鏡写真
矢印で示している部分がSiナノ粒子。クリックすると拡大図を表示。出典:米Georgia Institute of Technology。

 米国の大学であるGeorgia Institute of Technology(Georgia Tech)のSchool of Materials Science and Engineeringのassistant professorを務めるGleb Yushin氏の研究チームが、C(炭素)とSi(シリコン)のナノ粒子を組み合わせて、リチウムイオン2次電池の負極に向けた材料を開発した。この材料を使ってリチウムイオン2次電池を試作したところ、既存のリチウムイオン2次電池に比べてエネルギ密度を5倍以上に引き上げることができたという。

 この材料は、Cのナノ粒子を樹木のようにいくつもの枝を持つ構造に形成し、その「枝」にSiのナノ粒子を付着させたものだ(図1)。Cのナノ粒子でできた「樹木」に負極材料として働くSiのナノ粒子がぶら下がるような形になる。

 Cのナノ粒子を、いくつもの枝を持つ構造に形成するには、チューブ炉で高圧処理を施す。こうしてできた構造物に、CVD(Chemical Vapor Deposition)処理で、Siナノ粒子を付着させる。Siナノ粒子の大きさは直径30nmで、このナノ粒子を付着させた構造物は直径10μm~30μmになる。

 現在、リチウムイオン電池の負極には、Cを使うことがほとんどだが、エネルギ密度を改善するために、負極材料にSiを使う研究が各地で進んでいる。Yushin氏によると、Siで負極を作ると、C負極に比べて、理論上はエネルギ密度を10倍にまで上げられるという。ただし、研究の段階でSi負極は不安定で、長期間使えないという問題が判明した。

 既存のリチウムイオン電池が負極に使っているCの粒子と同程度の大きさ(およそ15μm~20μm)のSi粒子で負極を作ると、充放電を繰り返すうちに粒子にひびが入る、とYushin教授は説明する。これは、充放電のたびにSi粒子が膨張と収縮を繰り返すからだ。

 研究チームはこの問題を解決するため、Cのナノ粒子による構造物に、直径30nmのシリコン粒子を付着させて、新たなナノ複合材料を開発した(図2)。負極材料となるSiを小さくすることで膨張と収縮を繰り返しても割れにくくなり、Cの樹状構造に付着させる構造を採ることで、充電時にSi材料が膨張できる空間を作れた。

 Yushin氏によると、新たに開発した電極材料は、ナノ粒子を使っているものの、最終的には直径10~30μmと、既存のリチウムイオン2次電池の電極として使われているCの粒子と同程度の大きさになる。そのため、人体に悪影響を及ぼすことはなく、一般的なC材料と同じように扱えるという。

 研究チームは新材料で負極を試作し、リチウムイオン2次電池に組み込んで研究を続けている。現時点では、充放電サイクルを100回以上繰り返しても、電極材料に劣化は見られないという。研究チームは新材料を使ったリチウムイオン2次電池は、数千回の充放電が可能と予測している。

 この研究プロジェクトには、Yushin氏のほかに、Georgia TechからAlexandre Magasinki氏、Patrick Dixon氏、Benjamin Hertzberg氏、Alexander Alexeev氏が参加している。さらに、米国の大学であるUniversity of Wisconsin-MadisonからAlexander Kvit氏、同じく米国の大学のClemson UniversityからIgor Luzinov氏、米Superior Graphite社のJorge Ayala氏が参加している。

 そして、この研究プロジェクトには、米航空宇宙局(NASA:National Aeronautics and Space Administration)が米Superior Graphite社と米Streamline Nanotechnologies社に支給した中小企業技術革新制度(SBIR:Small Business Innovation Research)助成金が使われている。

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