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GaNパワー半導体の商用化が近づく、シリコン使う従来素子と真っ向競合へパワー半導体 GaNデバイス

» 2008年09月22日 17時10分 公開
[Bill Schweber,EE Times]

 パワー半導体ベンダーである米International Rectifier(インターナショナル・レクティファイアー)社(IR社)は、米国カリフォルニア州サンノゼで2008年9月17日〜18日に開催された「Embedded Power Conference 2008」で、同社が開発したGaN(窒化ガリウム)材料を使ったパワー半導体の詳細を披露した。同社は、このパワー半導体を2009年に市場投入する予定だという。

 IR社の前CTO(最高技術責任者)で、現在は独立して同社のコンサルタントを務めるMichael A. Briere氏は、過去5年間にわたるGaNパワー半導体の研究開発の成果を紹介した。それらのほとんどは、材料科学分野の研究や白色LED向け製造プロセスの開発によって得られたものである。IR社によれば、GaN材料を使うパワー半導体は、Si(シリコン)材料に基づく従来のパワー半導体に比べて、性能を最大10倍まで高められるという。こうした性能の高さを武器に、今後5年間でGaNパワー半導体は市場シェアの2%を獲得し、それ以降は急激にシェアが拡大すると見込む。GaNパワー半導体の主な用途としては、AC-DCコンバータやDC-DCコンバータ、高出力のオーディオ向けD級アンプなどがある。

 Briere氏は、「サーバー機器のように消費電力の高い装置では多くの場合、プリント基板の実装面積の最大40%を電力供給回路が占めている。この電力供給回路に使うパワー半導体には現在、150mm(6インチ)サイズのウエハーが年間1000万枚も使われている」と説明した。

 パワー半導体の進化に向けた鍵を握るのは、シリコン・ウエハー上にGaN材料をエピタキシャル(薄膜単結晶)成長させる技術である。IR社は、現在の業界標準となっている150mmウエハーを使って製造を始める。

 Briere氏は、「シリコン材料を利用した標準的なパワー半導体は、IR社が30数年前に独自のパワーMOS FET技術『HEXFET』を市場に投入して以来、電力変換技術の関連市場に大きな影響を与えてきた。しかし、性能の向上に掛かるコストが激増する一方で、現在では改善が頭打ちの状態になっている。今はまさに、まったく新しいブレークスルーを生み出す技術が必要とされる時期だ」と語った。

 Briere氏は、パワー半導体の性能指標を「効率×(掛ける)密度÷(割る)コスト」と定義した上で、次世代のパワー半導体は、「プロセス技術によって性能を高めるか、従来の弱点を克服するか、あるいはこの両方を実現しなければならない」と述べた。

 シリコン・ウエハー上にGaN層を形成するIR社のパワー半導体は、GaNパワー半導体がこれまで抱えていた信頼性の課題を解決したという。信頼性の課題とは具体的には、GaN材料をエピタキシャル成長させるプロセスにおける結晶層の欠陥や、表面層やゲート端面におけるトラッピングなどである。

 GaNパワー半導体は、動作温度についてはシリコン材料を利用した従来のパワー半導体とほぼ同等で90〜100℃だが、電力密度については大幅に高い。

 現在、シャープやOKI、松下電器産業、富士電機、東芝、トヨタ自動車、スイスSTMicroelectronics社などが、GaN技術を使うパワー半導体の開発を進めているが、いずれの企業もまだ商用の標準品の発表には至っていない。

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