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» 2009年10月05日 00時00分 公開

ワイヤレス給電技術 共鳴方式:ワイヤレス送電第二幕、「共鳴型」が本命か (8/9)

[前川慎光,EE Times Japan]

第3部 電磁誘導方式でも自由に

 電磁誘導方式は、すでに実用化されており、数多くの採用実績がある。ただ、第1部で説明したように、高い伝送効率を得るには、送電側と受電側の2つのコイルを近接させた上でコイルの軸の位置を合わせる必要がある。このような送電原理に起因した制限があり、限られた製品分野に採用されるにとどまっている。もちろん、金属接点が不要になるので防水性を高められたり、携帯型機器では金属接点への接続具合を意識せずに充電できたりという利点がある。しかし、利用者に充電対象機器の接続位置を意識させてしまうという点では、使い勝手は金属接点を利用する場合と大きくは変わらない。

 最近の開発動向として、このような制限を解決しようという動きが現れてきた。昭和飛行機工業は、送電側コイルと受電側コイルが60cm離れた場合でも高い伝送効率を得られるとする送電システムを開発中である。また、電磁誘導方式を採用したワイヤレス送電技術に関する業界団体「Wireless Power Consortium(WPC)」は、同団体の技術仕様「0.95版」で、コイルを置く場所の自由度を高めるコイル構成を規定した。

電磁誘導で60cm送電

 昭和飛行機工業が開発した電磁誘導方式の送電システムは、電動バスや電動自動車に向けたものである。送電側コイルと受電側コイルの寸法が50cm角の試作機では、送電側から60cm離れた受電側に連続して3kWをワイヤレス送電できる(図1)。このときのコイル間の伝送効率は50%程度と推測している。一般な電磁誘導方式では、50cm角程度のコイルを使った場合、伝送距離を60cmにまで広げると、コイル間の伝送効率は50%を大きく下回る。

図 図1 昭和飛行機工業が開発した新たな送電システム 送電側から60cm離れた受電側に給電した。負荷は100W電球10個である。コイルの寸法は送電側受電側とも50cm角。出典:昭和飛行機工業

 同社はこれまでも、高い伝送効率を維持したまま、伝送距離を伸ばす取り組みを進めてきた。新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)の支援を受けて実施したプロジェクト(2005年4月〜2009年3月)では、92%の総合伝送効率(電源回路部や整流回路部を含む)を維持したまま、従来5cmだった送電距離を10cmにまで広げることに成功した。「10cmの伝送距離があれば、電動バスに対しては十分」(昭和飛行機工業の特殊車両総括部EVP事業室の技師長を務める高橋俊輔氏)。

 しかし、「一般利用者に向けた電気自動車に搭載するには、余裕を確保するために20cm〜30cm程度まで伝送距離を伸ばす必要がある。かつ、厳密に位置を合わせなくても高い伝送効率で送電したい」(同氏)と考え、新たな送電システムの開発に着手した。伝送距離を60cmに設定した理由については、「従来10cmだったものを20cm程度に設定しても驚かれないが、60cmの距離にまで広げて送電して見せれば、これまでの一般的な技術とは大きく異なることが分かってもらえる」と説明した。また、「コイルの軸が10cm程度ずれても伝送効率は比較的高いまま」(同氏)だと説明する。

 伝送効率をある程度維持したまま、伝送距離を60cmにまで伸ばす技術の内容は明らかにしていない。ただ、第2部で紹介した磁界共鳴方式ではないことや、これまで20kHzだった電源周波数をさらに高めたこと、コイルが保持するエネルギの指標Qを高めるというよりもコイル間の結合係数kを高めることに主眼を置いた改良を組み込んだことを明らかにした。「これまでとは、回路トポロジが大きく異なる」(同氏)という。送電側コイルと受電側コイルの間に鉄板を入れると負荷の白熱電球が暗くなる(伝送効率が落ちる)といった現象からも、磁界共鳴方式ではないと説明する。磁場共鳴方式では、コイル間に金属の障害物を入れても伝送効率への影響は基本的に小さいとされている。

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