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ザイリンクスが、ARMのCortex-A9を組み込んだFPGAを発表プログラマブルロジック FPGA

» 2010年05月06日 17時19分 公開
[笹田仁,EE Times Japan]

 米Xilinx(ザイリンクス)社は、英ARM社のプロセッサ・コア「Cortex-A9 MPCore」を組み込んだFPGA「Extensible Processing Platform」を発表した。組み込むプロセッサ・コアの数は2つで、動作周波数は最大800MHz。Xilinx社は主な用途として、車載機器やビデオ監視システム、産業機器、通信基地局用機器を挙げている。2011年中にサンプル出荷を始める予定。

 Xilinx社は2009年10月にARM社からプロセッサIP(Intellectual Property)とインターコネクト技術「AMBA」のライセンス供与を受けている。そして、2010年3月にARM社が発表したAMBAの新版「AMBA-4」の開発にも参加している。今回発表したExtensible Processing Platformでは、インターコネクト技術としてAMBA-4を導入している。今回の発表に向けて、Xilinx社は着々と準備を進めていたわけだ。

 Extensible Processing Platformは、Xilinx社のFPGAとハードワイヤードのSoCを組み合わせたもの。SoCは、Cortex-A9 MPCoreにメモリー・コントローラやEthernet、USBなどの外部接続インターフェース、ARM社が規格化しているチップ内インターコネクト技術AMBA-4などを統合している。プロセッサと組み合わせたことで、Linuxや米Wind River社のVxWorksなどのオペレーティング・システムを利用できるようになった。

図1 図1 ザイリンクス日本法人の代表取締役社長を務めるSam Rogan氏
最高の性能のプロセッサを選ぶのは当然と語った。

 ARMアーキテクチャのプロセッサとの組み合わせについて、Xilinx社の日本法人であるザイリンクスの代表取締役社長を務めるSam Rogan氏(図1)は、「多くの顧客から、高性能のARMアーキテクチャのプロセッサを統合した開発基盤を求められていた。ARMプロセッサを統合するなら、最高の性能を誇るもの(Cortex-A9 MPCore)を選ぼうと考えた」とした。

 そして、Extensible Processing Platform開発の背景には、組み込み機器の高性能化への要求が高まる一方で、低コスト化、低消費電力化という高性能化とは相反する要求も高まっているという現状がある。性能を高めるために、汎用プロセッサのほかにDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサを組み合わせる方法があるが、この方法ではプロセッサを余計に搭載することになるので、製造コストが上昇する上、消費電力も高くなってしまう。ASICやASSPでは急な仕様変更に対応できない。

 そこで、Extensible Processing Platformを利用すれば、高性能なプロセッサを利用できるだけでなく、FPGAが得意とする信号の並列処理機能を組み合わせることができ、部品点数や消費電力量を増やすことなく、高性能な組み込み機器ができるとしている。

 さらにRogan氏は「汎用プロセッサとDSPなどのプロセッサを別々に基盤に搭載しても、相互に接続する部分はそれほど速くできない、Extensible Processing Platformなら、ハードワイヤード部とFPGAの間を2500本ものインターコネクトで接続できる」と、別の面からExtensible Processing Platformの利点を説明した。

 そして、Extensible Processing Platformの活用例として、車線逸脱や衝突を回避するなどの機能を備えた運転支援システムを挙げた。このシステムではビデオ・カメラや赤外線センサー、レーダー・センサーからの信号を瞬時に処理しなければならず、この要求を満たすには、汎用プロセッサに加えてDSPを2つ搭載する必要があるが、製造コストを50米ドル、消費電力を5Wに抑えなければならないという要件がある(図2)。汎用プロセッサと2つのDSPでシステムを構成すると、製造コストは45.75米ドルになり、消費電力は6.6Wになる。製造コストの要件は満たしているが、消費電力の要件を満たせていない。

図2 図2 運転支援システムの構成例
1個のASSPと、2個のDSPを中心とした構成になっている。

 これを、Extensible Processing Platformを使って信号処理などの機能を1チップにまとめてしまうと、製造コストを40.75米ドル未満、消費電力は3.9W未満に抑えられ、どちらの要件も満たせるという(図3)。同じように、ビデオ監視システムをExtensible Processing Platformを使って作成すれば、製造コストを10ドル以上(Extensible Processing Platformを利用しない場合は91米ドル、利用すると81ドル未満)削減でき、消費電力は4W以上(Extensible Processing Platformを利用しない場合は10.9W、利用すると6.8W未満)抑えられるという。

図3 図3 運転支援システムをExtensible Processing Platformを利用して構成した例
チップを1つにまとめられ、コストや消費電力を抑えることができる。

 消費電力量削減のために、最新の製造技術も導入する。Extensible Processing Platformの製造は、半導体製造大手の台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)に委託する。同社が開発した高誘電率/金属ゲート技術を採用した28nm製造技術を利用する。これで、同社の既存製品に比べて静的消費電力を1/2に削減できるという。

 現在は、Extensible Processing Platformの仕様書が完成しており、秘密保持契約を結ぶことで参照できる。すでに、主要な顧客には提供しているという。さらに、Linux上で動作するエミュレーション環境が完成したとしている。今後は、2011年前半に製品の詳細を発表し、先に述べたように2011年中にサンプル出荷を始める予定。

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