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» 2010年10月04日 00時00分 公開

Analog ABC(アナログ技術基礎講座):第18回 差動対がオペアンプに変身(3)〜入出力範囲をエミッタ接地で広げる〜 (2/2)

[美齊津摂夫,ディー・クルー・テクノロジーズ]
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後段の回路を適切にバイアスできなくなる

 具体例を紹介しましょう。図2(a)のように、帰還抵抗を使って利得が6dBの増幅器を作成しました。


図2 図2 帰還抵抗を使った反転増幅回路 (a)は帰還抵抗を使った利得6dBの反転増幅回路。(b)は入出力特性です。出力電圧は2.2V以下に下がっていません。出力電圧が制限されると、例えば、NPN型トランジスタを使ったエミッタ接地回路を次段に接続したとき、適切な電圧でバイアスできないといった問題が発生してしまいます。

 この回路は反転増幅器の構成を採っているため、出力電圧の向きが図1とは反転しています。また、帰還抵抗R1と信号源抵抗R4で帰還をかけていることになるので、利得はR1/R4=2倍となります。そのため出力電圧の傾斜の傾きは2となり、図1より緩やかになっています。

 図2(b)の入力電圧と出力電圧の関係からは、出力電圧が2.2V以下の領域(入力電圧がおよそ3.3V以上)で増幅器が動作していないことが分かります。出力電圧が制限されてしまうと、例えば、NPN型トランジスタを使ったエミッタ接地回路を次段に接続したとき、ベース電圧(つまり、図2(a)の増幅器の出力)が、グラウンド電圧まで下がらず、適切なバイアス電圧にならないといった問題が発生してしまいます。

差動対のトランジスタQ2が邪魔

 図2で出力電圧が2.2Vを境に制限されているのは、出力ノード(トランジスタQ2のコレクタ)の電圧が差動対のQ2のベース電位より下がり、利得が急速に低下するためです。この問題は、図3(a)のようにエミッタ接地回路と電流源を追加することで解決できます。

図3 図3 エミッタ接地と電流源で入出力特性を広げる (a)はこれまで設計してきた増幅回路にエミッタ接地と電流源を加えて、入出力特性を改善した回路。(b)は(a)の入出力特性です。出力電圧がグラウンド電圧から電源電圧まで変化し、理想的な特性に近づきました。

 詳しく説明しましょう。まず、トランジスタQ2のコレクタ電圧がQ2のベース電圧より下がると、ベース・コレクタ間のダイオードがオンになってしまいます。この結果、ベースからコレクタの向きに電流が流れます。そうすると、コレクタ電位がベース電位よりも0.8V程度低いところで制限されてしまいます。

 これを防ぐため、トランジスタQ2のコレクタは電源電圧Vccに近い範囲の高い電圧値では十分動作するので、この電圧範囲で制御しやすいPNP型エミッタ接地回路を追加します。さらに、追加したPNPのエミッタ接地がオフのときに十分にグラウンド電圧まで出力電圧Voutが下がるように、NPN型の電流源を接続します。

 エミッタ接地と電流源を加える前の回路では、差動対のトランジスタQ2が邪魔していたため、出力電圧がある値より下がらなかったのです。PNP型トランジスタのエミッタ接地回路を使うことで、邪魔な差動対をよけて動作するようにしたので、グラウンドまで動作範囲を広げる事ができました。

 改善した結果の入出力特性を図3(b)に示しました。グラウンド電圧まで十分な動作範囲が得られていることが一目瞭然(りょうぜん)です。

出力に激しいリンギングが…

 図3(a)を見ると、エミッタ接地のPNP型トランジスタと、電流源のNPN型トランジスタのコレクタ(つまり電流源)どうしが接続されているので、ここも能動負荷となってさらに利得を高められます。入出力動作範囲が改善できただけではなく、利得をさらに高めることもできました。

 ところが、図3(a)の回路を実際に使ってみたところ、出力の激しいリンギング(ばたつき)が発生してしまいました。このリンギングには周波数特性の傾斜が深く関係しています。次回は、図3(a)をボルテージフォロアに適用した例と、このボルテージフォロアの周波数特性を解説しましょう。

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Profile

美齊津摂夫(みさいず せつお)

1986年に大手の通信系ハードウエア開発会社に入社し、光通信向けモジュールの開発に携わる。2004年に、ディー・クルー・テクノロジーズに入社。現在は、同社の常務取締役CTO(最高技術責任者)兼プラットフォーム開発統括部長を務めている。「大学では電気工学科に所属していたのですが、学生のときにはアナログ回路の勉強を避けていました。ですから、トランジスタや電界効果トランジスタ(FET)を使ったアナログ回路の世界には、社会人になってから出会ったといっていいと思います。なぜかアナログ回路の魅力に取りつかれ、23年目になりました」(同氏)。


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