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異分野との融合加速 CEATEC JAPAN 2010エネルギー技術 無線通信技術(2/7 ページ)

» 2010年10月13日 00時00分 公開
[前川慎光、薩川格広,EE Times Japan]

第1部 ヘルスケア連携や行動支援など、まだまだ進化過程のモバイル機器

 モバイル機器の進化は止まらない。今の姿は、まだ進化の過程にすぎない…。「CEATEC JAPAN 2010」では、モバイル機器に向けた新たな要素技術やアプリケーションを、各社が提案していた。

 携帯電話機やスマートフォン、タブレットPCといったモバイル機器の市場拡大は著しく、新機種が続々と市場に登場している。ただ、これらのモバイル機器には、携帯性を高めることと引き換えにハードウエア面での制約が厳しくなるという根本的な課題がある。例えば、ディスプレイは特定の寸法以上には大きくすることが難しく、機器を操作する入出力インターフェイスにも制限がある。

 CEATEC JAPAN 2010では、ハードウエアが制限されている中でも、利用者にコンテンツをより良く伝え、操作の使い勝手を高めることを目指した展示が数多くあった。例えば、小型のディスプレイで迫力ある映像を見せるための3次元(3D)映像技術や、情報の新たな伝達手法である「力覚フィードバック技術」、筐体(きょうたい)背面を使う入力インターフェイス技術などである。

 このほか、モバイル機器の新たな活用分野として、健康管理(ヘルスケア)に注目が集まっていた。特に、昨年のCEATEC JAPANに比べて、コンティニュア・ヘルス・アライアンス(Continua Health Alliance)の存在感が増していた。同アライアンスは、情報通信技術を活用した健康管理サービスや、医療機器を相互に連携するためのガイドラインを策定する非営利団体である。2010年11月には、同アライアンスの設計ガイドラインに準拠した業界初の携帯電話機が市場に登場する見込みだ。

モバイル機器でも3D映像

 モバイル機器に向けた3D映像技術は、NTTドコモやシャープが紹介していた。このうちNTTドコモが紹介していたのは、「触って遊べる3D技術」と題したデモである(図1)。

図1 図1 3Dディスプレイと力覚フィードバックを組み合わせた NTTドコモが披露したデモの様子。ペン型デバイスをカメレオンに近づけると、カメレオンの舌が飛び出すと同時に、ペン型デバイスに力が加わり、舌にたたかれたような衝撃を感じられる。

 複数の角度から立体視が得られる多視点3Dディスプレイとペン型デバイスを使って実現した。3Dディスプレイにはカメレオンが表示されており、利用者がペン型デバイスをカメレオンに近づけるとカメレオンの舌が飛び出す。同時に、舌でたたかれたかのような衝撃がペン型デバイスに加わる。

 利用者の操作に応じてペン型デバイスに力が加わることから、同社はこれを力覚フィードバック技術と呼ぶ。「3Dディスプレイと力覚フィードバックを組み合わせたデモを見せたのは初めて。3D映像を触ったかのような感触を実現できる」(同社のデモ担当者)。

 ペン型デバイスの先端に磁石を内蔵しており、一方の3Dディスプレイにはコイルが組み込んである。時間幅が1秒程度のパルス電圧をコイルに加えることで磁界が生じ、ペン型デバイスに対して反発力を瞬間的に発生させる仕組みである。

 反発力を発生させるタイミングは、3Dディスプレイ上部に取り付けた2つのカメラを活用して決める。カメレオンの舌が届く領域はあらかじめ設定してあり、この領域にペン型デバイスが入ったことを2つのカメラで検出する。そして、カメレオンの舌が飛び出た映像に切り替えると同時に、コイルにパルス電圧を印加する。

臨場感のある情報伝達を目指す

 触って遊べる3D技術を開発した理由を、NTTドコモは次のように説明した。「現在、モバイル機器で情報を利用者に伝える手段は主に、映像(視覚)と音声(聴覚)である。ハードウエアの寸法に制限がある中で、モバイル機器を使ったコミュニケーションを進化させるには、新たな感覚を追加することが必要だ。それが、3D映像であり、力覚フィードバック技術である」(同社のデモ担当者)。

 ここで言うコミュニケーションという言葉には、2つの意味がある。1つは、モバイル機器を使う利用者間のコミュニケーションである。3D映像を使えば、臨場感のある映像をほかの利用者に伝えられる。送り手の感情を受け手が共有しやすくなる。

 もう1つの意味は、各種コンテンツと利用者のコミュニケーション、すなわちモバイル機器のユーザーインターフェイスである。力覚フィードバック技術を発展させれば、利用者の視覚や聴覚のみならず、利用者の触覚に訴えることで、より臨場感のあるコンテンツの伝達が可能になると考えた。

 今回の3Dディスプレイや力覚フィードバック技術の実用化時期は未定である。実用化に向けてはいくつかの課題がある。例えば、3D映像を処理するために性能の高いプロセッサが必要であることや、力覚フィードバック技術を実現するには、2つのカメラやコイルといった新たなハードウエアを追加する必要があることなどだ。

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