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「眼球の動きでマリオを操作」、ゲーム用インターフェイスのデモをNIが披露センシング技術

» 2010年11月09日 16時44分 公開
[R. Colin Johnson,EE Times]

 ナショナルインスツルメンツ(NI)のエンジニアチーム「Waterloo Labs」は、任天堂のテレビゲームを眼球の動きで操作するデモを披露した(図1)。「EyeMario」と呼ぶ。同チームは、このデモを計測/制御用アプリケーションソフトウエア向けグラフィカル開発環境「LabVIEW」を使って開発し、そのソースコードも公開した。

 EyeMarioは、NIのソフトウエアと、アナログ・デバイセズの絶縁型データコンバータLSIを組み合わせて実現した。NIのウェブサイトから無償でソースコードをダウンロード可能だ。ゲームのほかにも、弱視(斜視)の治療や、手が不自由な人のサポート機能などへの応用も期待されている。

図1 図1 眼球の動きだけでゲームのキャラクターを操作
NIのプロダクトマーケティングエンジニアDoug Farrell氏。自身の目の周囲に電極を取り付け、眼球の動きでテレビゲームのマリオを操作するデモを披露した。

 Waterloo Labsのメンバーでアナログ回路を担当するエンジニアのChris Culver氏は、「医学的には決して新しい手法だとは言えないが、今回のような操作に応用した例はこれまで無かった。ただし、映画『ベオウルフ/呪われし勇者』の製作では、同様の技術を使って俳優の眼球の動きを追跡し、それをコンピュータで生成したキャラクターに割り付けるという手法を採っている」と述べている。

 この技術の仕組みはこうだ。視神経がある眼球の裏側は負極性が比較的強くなっており、眼球全体はダイポールのように分極された状態になる。目の周囲に吸着電極を取り付け、眼球の動きに合わせてその電気的な極性を測定すると、目が画面上で追っている特定の目標物を推定できる。Waterloo Labsが開発したベータ版の試作システムでは、任天堂のゲームのキャラクター「マリオ」の画面上の向きや動きを、完全にハンズフリーで操作することに成功したという。

 NIは、眼球に生じる繊細な分極を、ユーザーに危険が及ばないよう安全にモニタリングするために、アナログ・デバイセズの絶縁技術「iCoupler」を採用した。iCouplerは、Si(シリコン)チップの表面に絶縁体を挟んで対向するように積層した微小コイルを使って電気的な絶縁を確保する、磁気結合方式のアイソレータ技術である。今回は、この絶縁技術を適用したアナログ・デバイセズのΣΔ変調器LSIを使って、アナログ入力信号を1ビットのデジタルデータ列に変換した。万が一、回路基板上で短絡が発生したとしても、ユーザーに接触するセンサー部は、iCouplerのコイルによって絶縁されているため、ユーザーに危害が及ぶことはないという。

 アナログ・デバイセズのコンバータマーケティングディレクタを務めるSteve Hinderliter氏は、「iCoupler技術を適用した当社のデータコンバータLSIは、完全な絶縁を確保している。このため、ゲーム機のユーザーを110Vの電源から完全に絶縁することが可能だ」と述べている。

 EyeMarioの試作版では、ユーザーの眼球の動きによって生じた電気信号を、アナログ・デバイセズの高精度計装アンプIC「AD8221」を介して、FPGA搭載ドーターボードに実装された同社のA-D変換器LSI「AD7401」に送信する。そして、NIのLabVIEWで開発したアプリケーションソフトウエアが、A-D変換器LSIの出力を読み取り、眼球が動いたらその向きを検出し、任天堂のゲーム機が認識できる信号に変換して出力する仕組みである。

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