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汎用マイコン市場にもARMコア、産業機器や家電に広がるプロセッサ/マイコン ARMマイコン(1/3 ページ)

携帯電話機やスマートフォンだけでなく、汎用マイコン市場もARM コア…。汎用マイコン市場でも、アームのプロセッサコアを採用した「ARM マイコン」の存在感が高まっている。

» 2011年01月12日 00時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 携帯電話機やスマートフォンだけでなく、汎用マイコン市場もARM コア…。汎用マイコン市場でも、アームのプロセッサコアを採用した「ARM マイコン」の存在感が高まっている。

携帯向けSoCでは標準

 これまで、アームのプロセッサコアは、携帯電話機やスマートフォンのSoC(System on Chip)に広く採用されてきた。携帯電話機やスマートフォンに向けて、アームはすでに100 を超える半導体メーカーにライセンスを提供しており、圧倒的なシェアを有して いる。同社の次のターゲットは、ネットブックやタブレットPC である。

 2011年1月6日〜9日の会期で開催された世界最大の家電ショー「2011 International CES(Consumer Electronics Show)」の大きな話題の1 つは、次期版Windows(Windows8)をARM コアのSoC にも対応させると、マイクロソフトが発表したことだろう。振り返れば、アームは2010年9月に、携帯電話機からサーバまで適用範囲を広げた「Cortex-A15」を発表している。8コア品を使えば、コアごとに異なるOS を割り当てることができ、データセンターで必要とされる大規模なサーバや通信機器にも適用できるという。すでに、テキサス・インスツルメンツやST-エリクソン、サムスン電子がライセンスを受けている。

 アームにとって重要な市場は、携帯電話機/スマートフォンや、ネットブック/ タブレットPC に向けたSoC だけではない。デジタル家電や白物家電、医療機器、産業機器などに向けた汎用マイコン市場でも、勢力拡大に向けた取り組みを進めている。汎用マイコン分野における全世界の市場シェア第1 位は、ルネサス エレクトロニクスである。同社の資料によれば、2009年の同社の市場シェアは、全体の30%を占める(NECエレクトロニクスとルネサス テクノロジの単純合算)。ただ、市場シェアが2位以下の多くの企業がARMコアを採用していることで、汎用マイコンの市場では、大枠を見れば「ルネサス 対 アーム」の構図が生まれつつあるようだ。

 8ビットマイコンから32ビットマイコンという既存の汎用マイコンのすべての領域の置き換えを狙った「Cortex-Mシリーズ」のARMマイコンの新品種を、複数の企業が次々と製品化しているのだ。Cortex-Mシリーズは、消費電力の低さやコード効率の高さが特徴で、16ビットマイコンや32ビットマイコンの置き換えを想定したCortex-M3や、8ビットマイコンの置き換えを想定した「Cortex-M0」、DSP(Digital Signal Processor)の機能を統合した「Cortex-M4」などで構成している。いずれも、汎用マイコンに向けた32ビットのプロセッサコアである。

図 図1 富士通セミコンダクターの32ビット汎用マイコン「FM3ファミリ」  スウェーデンのIAR Systemsの「IAR ARMソリューション」が用意した開発スタータキット。写真中央に位置するチップがFM3。

 例えば、2010年11月には富士通セミコンダクターが、独自コアを採用していた従来の方針を大きく転換し、Cortex-M3コアを採用した汎用マイコン「FM3ファミリ」を発表した(図1)。同社は、16ビットマイコンと32ビットマイコンのうち、車載用途以外の品種(非車載の汎用マイコン)については、ARMコアマイコンを前面に打ち出す。独自コアを採用した16ビット/32ビットの汎用マイコンの開発はすでに打ち切っており、車載用途など独自コアの要望が強い分野に向けてのみ、独自コア採用マイコンの開発を続ける。

 このほか、STマイクロエレクトロニクスは同月に、Cortex-M3コアを採用したARMマイコンの新シリーズ「STM32 F2」を発表し、30品種以上を製品群に追加した(図2)。2010年12月1日〜3日に開催された組み込み機器の総合展示会「Embedded Technology 2010(ET2010)」では、Cortex-Mシリーズを採用したマイコンを、STマイクロエレクトロニクスやNXPセミコンダクターズ、テキサス・インスツルメンツ、富士通セミコンダクターなどが出展していた。

図 図2 STマイクロエレクトロニクスの32ビット汎用マイコン「STM32 F2シリーズ」の評価ボード  ET2010では、評価ボードを使って、IPv6を利用したWebカメラデータの伝送デモを見せていた。

 マイコンベンダー各社は、ARMコアを採用することで、コアで独自色は打ち出しにくくなるものの、コアを開発する負担が無くなる。マイコンを利用する立場では、独自コアからARMコアに変更するときに移行の負担が掛かる。ただ、移行した後は、ARMマイコンであれば、どの企業のマイコンを使っても、ソフトウエアの設計資産を生かしやすいというメリットがある。ARMマイコンを手掛けるベンダー各社は、Cortex-Mシリーズを採用したことを前面に出しつつ、自社の特色も訴求する。具体的には、搭載する周辺回路や、処理性能、メモリ容量、製品群の品種数などである。]

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