メディア

パワー半導体で顧客のニーズを満たすにはInternational Rectifier シニア・バイス・プレジデント Adam White氏

パワー半導体の活躍の場が広がっている。携帯型機器、産業機器や自動車などの伝統的な用途に加えて、グリーンエネルギー向けなど新しい用途が広がっている。パワー半導体に対する顧客ニーズにどのように応えていけばよいのか、インターナショナル・レクティファイアーの強みは何か、シニア・バイス・プレジデント ワールドワイドセールス担当のAdam White氏に聞いた。

» 2011年04月14日 14時15分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]

EE Times Japan(EETJ) インターナショナル・レクティファイアーはエレクトロニクス分野のうち、何に注力しているのか。

White氏 パワーマネジメントとパワー半導体だ。当社は1947 年に創業し、MOSFETを中心にさまざまな関連技術を使って活躍してきた。しかし、現在では100%、パワーMOSFETなどのパワー半導体に集中している。パワーマネジメント製品部門を備えるアナログ企業は少なくないが、100%特化しているのは当社ぐらいだろう。

 当社は3年前にパワーマネジメント分野に特化することを決め、それ以来、2年間、業績が順調に伸びている。戦略の2つ目のカギは、どのような用途にも向く汎用品を開発するのではなく、パワーマネジメント分野で今後成長するであろうキーカスタマが必要とするアプリケーションに合わせて、当社の技術ロードマップを描くことだ。例えば、3年前に方針を定めた際に自動車向けの社内組織を立ち上げ、キーカスタマの要望に合わせた製品開発を進めている。

EETJ なぜパワーマネジメント分野にそれほどこだわるのか。

White氏 モーターなど消費電力の大きな機器の省エネルギーに直結することもあり、高い性能を備えたSi(シリコン)パワー半導体に対する期待が高い。全てのエレクトロニクス関連技術者にとって重要な技術だと言っても過言ではない。近年ますますパワーマネジメント製品に対する強い需要が生じている。実際に、さまざまな半導体の中でも、パワー半導体の成長率が最も高い。この傾向は一時的ではなく今後も続くと考えている。これに加えて、2011年以降はグリーンエネルギー(再生可能エネルギー)の比率が高まっていく。

 従来から当社に強みがあるマイクロプロセッサ用POL(Point of Load)型DC-DCモジュールやD級アンプ向けの製品などに加えて、新しい分野からの要求が次々と高まっているということだ。

EETJ パワーマネジメント製品に対する要望は地域ごとにどのように違うのか。

White氏 米国では産業機器分野での要望が強い。インバーター、その中でも比較的小型の可変周波数モーターの高効率化が可能な製品だ。これに電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)向けが加わろうとしている。この分野ではわれわれの顧客は自動車のティア2メーカーであり、EV/HEV用のインバータ・メーカーや二次電池の充電装置メーカーと共に取り組んでいる。

 ドイツを中心とした欧州では米国と逆に自動車、次に産業機器分野だ。グリーンエネルギー分野向けの需要も高まっている。

 中国ではグリーンエネルギー向けの部品の需要が高い。中国国内向けの最終製品に使うのではなく、欧州のエネルギー規制を満たした最終製品を製造するために当社の技術が要求されている。

EETJ パワーマネジメント分野で生き残るには何が重要なのか。

White氏 顧客の要望をつかむことだ。当社は汎用品ではなく、各アプリケーションのキーカスタマに焦点を絞って製品計画を立て、開発・製品化を進めている。

 当社の製品計画をキーカスタマに伝えることも重要だが、キーカスタマが求めているパワー半導体がどのようなものなのか、特に力を入れて聞き取りをして、当社の製品ロードマップ作成の最初期段階から議論にも参加していただいている。顧客の要望に合わせてロードマップを変えられるようにするためだ。ロードマップが確定する18カ月前から議論に参加していただいたこともある。

 このような取り組みは当社のような外資系企業が日本国内で生き残るためには不可欠な取り組みだ。GaN(窒化ガリウム)パワー半導体のような業界にとって新しい技術を利用した製品のロードマップを確定する際にも、同じ手法を採った。

EETJ GaNのような次世代パワー半導体については何が重要だと考えているのか。

White氏 次世代パワー半導体のメリットは、モジュールサイズをSiパワー半導体よりも圧倒的に小さくでき、同時に効率を高められることだ。これが顧客に対する大きな訴求点となる。

 次世代パワー半導体材料としては一般にSiC(炭化ケイ素)とGaNが有望だとされている。SiCパワー半導体は他社が製品化済みだ。だが、当社では両技術を評価した結果、長期的にはSiCパワー半導体ではなくGaNパワー半導体に優位性があると考えており、研究開発を続けて、順次製品化を進めていく。

EETJ なぜSiCではなくGaNなのか。

White氏 顧客の要望を満たすためにはGaNパワー半導体の方が適しているからだ。現在当社で開発、製品化が先行しているGaNパワー半導体は低耐圧品だが、それでもSiCパワー半導体よりも優位性がある。先ほど紹介したように、GaNパワー半導体のロードマップ策定時に顧客の要望を確認したところ、日本企業は特に高耐圧品に対する要求が高いことが分かった。GaNパワー半導体で耐圧600Vの素子を製品化できる見込みも付いている。

 例えば、2011年3月にテキサス州で開催された「Applied Power Electronics Conference and Exposition(APEC 2011)」でGaNを採用したパワー半導体のデモを公開した。当社では600Vという高い耐圧が、これまでSi MOSFETで当社が獲得できなかった巨大な市場を狙うためのカギになると考えている。

 どのようなパワー半導体を製品化するのか、どの市場向けなのかはいずれ明らかにするが、GaNパワー半導体で勝ち残っていく戦略は変わらない。


Adam White(アダム・ホワイト)氏

英ラフバラ大学から工学と電気電子工学の学士号を取得。グラクソ・スミスクラインとゼネラルモーターズにおいて、エンジニアリングを担当した。1996 年にインターナショナル・レクティファイアー入社。研究開発部門、製造部門、マーケティング部門などを経て、2010 年からシニア・バイス・プレジデント、ワールドワイドセールス担当。日本法人代表。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.