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トヨタが選んだ、非接触充電の新技術「共鳴方式」とは何かワイヤレス給電技術 共鳴方式(1/2 ページ)

トヨタ自動車は、ワイヤレス充電技術(非接触充電技術)の開発を手掛けるWiTricityと提携したと発表した。そもそも、なぜ何もない空間を電力が伝わるのだろうか……。

» 2011年04月28日 21時27分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 トヨタ自動車は、2011年4月27日、ワイヤレス充電技術(非接触充電技術)の開発を手掛けるWiTricity(ワイトリシティ)と提携したと発表した(WiTricityについての関連記事)。

 同社の狙いは、電気自動車やハイブリッド自動車に非接触充電技術を組み合わせることで、充電作業の手間を減らすことである。例えば、自宅や公共施設の駐車場に埋め込んだ充電器に、自動車を近づけるだけで充電するといったことも可能になる。

 「将来を見通せば、道路に充電器を埋め込んで電気自動車を充電しながら走行するといったように、充電そのものを意識しなくても済むようになるかもしれない」(同社)という。

図1 図1 車両向け非接触充電のイメージ図

電気自動車には共鳴方式が適す

 電気自動車と非接触充電技術を組み合わせようというアイデアそのものは、とりたてて新しいものではない(図2)。

 例えば、日産自動車や日野自動車は、展示会や実証実験を通して、電気自動車と非接触充電技術を組み合わせた利用シーンを提案してきた。最近では、Googleが、非接触充電技術を使った電気自動車充電の実証実験を実施すると発表している。

ALTALT 図2 CEATEC2011にパイオニアが参考出品した電気自動車向け非接触充電システム

 トヨタ自動車の取り組みが従来と大きく異なるのは、「共鳴方式」と呼ぶ非接触充電技術を採用すると表明したことだ。

 「共鳴方式は、送電側(充電器)と受電側(車両)の距離がある程度離れていても高い効率で電力を送れ、位置ずれに対する許容度が高いという特徴がある。日常生活での利用を考えると、最も適した方式だと考えている」(同社)という。

 共鳴方式は、米Massachusetts Institute of Technology(MIT)の研究グループが2006年に理論を発表した非接触充電技術である。MITの研究グループは、2007年に理論に基づいた試作機を作成し、実際にワイヤレスで給電可能なことを実証した。今回、トヨタ自動車と提携したWiTricityは、MITの研究グループから独占的な技術移転を受けたベンチャー企業である(図3)。2007年に設立された。

ALTALT 図3 WiTricityの非接触充電システム。写真左は、2009年9月にEE Times Japanが撮影。写真右は、2010年11月にWiTricityから提供を受けたもの。

 トヨタ自動車はかねてより、非接触充電技術に注目していたという。自動車の未来の姿を考える上で、注目した技術の1つという位置付けだ。「非接触充電技術の研究を進める中で、WiTricityが重要な存在になるという感触があった。当社から技術提携を打診した」(同社)。

 今後、トヨタ自動車は、WiTricityの非接触充電技術の評価を実施する。その後、より具体的な技術提携の形を検討するという。トヨタ自動車は、実用化に向けた課題を3つ挙げた。技術そのものの精度(完成度)を高めること、車両の非接触充電技術に関する法規制や規格が整備されること、充電インフラのコストを下げることである。具体的な時期は明確にしていないが、「早期の実用化を目指す」(同社)という。

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