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ローデの新型ネットワークアナライザ、高速・高性能を訴求し「アジレントの牙城を崩す」テスト/計測 ネットワークアナライザ

3GHz機と4.5GHz機、8.5GHz機を用意した。測定性能と掃引速度、使い勝手を高め、消費電力を低く抑えつつも、価格については競合他社機と同じに設定したという。

» 2011年05月26日 08時30分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]

 ローデ・シュワルツ・ジャパンは、掃引速度とダイナミックレンジを従来機から大幅に高めたベクトルネットワークアナライザ「R&S ZNB/ZNCシリーズ」を発売した(図1)。高周波信号を扱う各種電子部品の研究開発や製造に向ける。同社の代表取締役社長を務める笠井伸啓氏は2011年5月25日に東京都内で開催した報道機関向け説明会で、「国内のネットワークアナライザ市場は2011年度で60億円規模。そのうち70%程度をアジレント・テクノロジーが握っており、事実上の業界標準になっている。その残りを、当社を含む数社が分け合っている状況だ。この新型機の投入でアジレントからシェアを奪い、当社のシェアを40〜45%まで高めたい」と述べた(図2)。

図1 図1 R&S ZNB/ZNCシリーズ 12.1インチ型の大型ディスプレーを搭載。筐体サイズは461.1mm×239.9mm×351.0mm、重量は13.5kgである。出典:ローデ・シュワルツ・ジャパン
図2 図2 ネットワークアナライザの市場について説明する笠井伸啓氏 ローデ・シュワルツ・ジャパンの代表取締役社長を務める。

 ローデ・シュワルツ・ジャパンは、この新型機を2004年に投入した従来機「R&S ZVB」の後継と位置付ける。アジレント・テクノロジーの「ENAシリーズ」を競合機種として強く意識しており、それを大きく上回る性能や使い勝手を実現しながらも、価格については数千円の差異はあっても、カタログ上はほぼ同じに設定したという。

 ZNBとZNCの両シリーズ合わせて5機種を用意した(図3)。そのうちZNBシリーズは、測定周波数範囲と直流重畳用バイアスティーの搭載/非搭載が異なる4機種を取りそろえる。内訳は、測定周波数の上限が4.5GHzの「ZNB4」と同8.5GHzの「ZNB8」それぞれのバイアスティー搭載機と非搭載機だ。測定周波数の下限は、バイアスティー搭載機が100kHz、非搭載機が9kHz。ZNCシリーズは9kHz〜3GHzの1機種のみで、型番は「ZNC3」である。5機種ともに測定ポート数は2ポート。ただしZNBシリーズについては、4機種それぞれの4ポート版を2011年秋に発売する予定である。

図3 図3 ZNB/ZNCシリーズのラインアップ 出典:ローデ・シュワルツ・ジャパン

4つの特長を訴求

 ローデ・シュワルツ・ジャパンがこれらの新型機で訴求するのは、次の4つの特長である。すなわち(1)測定性能が高い、(2)掃引速度が高い、(3)使い勝手が高い、(4)消費電力が低いことだ。

図4 図4 ダイナミックレンジの比較 出典:ローデ・シュワルツ・ジャパン

 (1)測定性能については、まずダイナミックレンジがZNBシリーズで140dBと広いことを挙げる。「アジレント・テクノロジーの既存機は130dBで、10dBの差がある。無線通信の基地局に使う急峻(きゅうしゅん)な減衰特性のフィルタでも、そのフィルタ本来の特性を測定器自体のノイズに埋もれることなく、高い精度で評価できる」(同社)(図4)。ZNCシリーズについては130dBにとどまるが、「このクラスのネットワークアナライザでは最高レベルだ」(同社)という。

図5 図5 電力掃引範囲の比較 出典:ローデ・シュワルツ・ジャパン

 この他、電力掃引範囲が広いことも挙げた。ZNBシリーズは、オプションのアッテネータを付けることで−85〜+13dBmにわたる98dBの範囲で電力掃引が可能だ。「これは仕様上の値だが、実力はもっと高い。−100〜+15dBmの115dBの範囲で電力を線形に掃引できる。アジレント・テクノロジーの既存機は、−55〜+10dBmの65dBにとどまっていた」(同社)(図5)。このように広い電力掃引範囲を確保しているため、パワーアンプや高利得アンプの評価を簡略化できる。すなわち、電力掃引範囲を複数に分けて、範囲ごとに外付けのパワーアンプやアッテネータをつないだり取り外したりしながら測定を繰り返す必要はない。これらの外付け治具を使わずに、1回の電力掃引で測定できるわけだ。

図6 図6 周波数掃引速度の比較 出典:ローデ・シュワルツ・ジャパン

 (2)掃引速度については、ZNBシリーズで競合機の「約2倍高速だ」(同社)と説明する。例えば、周波数掃引範囲が1G〜1.2GHzのとき、同一の測定条件で比較すると、ZNBシリーズが4msに対し、競合機は7.1msを要するという(測定ポイント数は401ポイント)(図6)。100k〜8.5GHzでは、ZNBシリーズが12ms、競合機は19msである。この他、測定データを外部に転送する際の速度も高いとする。GPIB経由で201ポイントのデータを転送する場合、ZNBシリーズが3msで済むのに対し、競合機は7msかかるという。「近年は製造ラインに使う自動機の速度が向上しており、ネットワークアナライザから自動機へのデータ転送が間に合わずに、製造ラインでデットタイムが生じるという事態が起きていた。これを改善できる」(同社)。

図7 図7 ソフトタブを多用したグラフィカルなインタフェース 「iPhoneライク」と表現する。出典:ローデ・シュワルツ・ジャパン

 (3)使い勝手については、12.1インチ型と大きいWXGA液晶ディスプレーを搭載し、高度なGUIを採用した(図7)。「直感的に操作できる。しかもメニューの階層構造が浅くなっているので、所望のメニューに手早くアクセスすることが可能だ」(同社)。

 (4)消費電力については、ZNBシリーズの2ポート機で標準動作時の値を120Wと低く抑えた。同社既存機は標準動作時に350Wで、競合機は最大消費電力が350VAだった。「東日本大震災の影響で節電が求められる中、この特長は大きなアドバンテージだ。特に製造ラインでは、数多くのネットワークアナライザが稼働するので、節電効果もその分、大きくなる」(同社)。

 価格は、ZNBシリーズが309万円から、ZNCシリーズが253万円から(いずれも税別)。2011年5月25日に販売を開始しており、直ちに出荷できるという。

<訂正>記事の掲載当初、消費電力について記述した部分で「120Wと低く抑えた。同社既存機は360W、競合機は350Wだったという」としていましたが、「ZNBシリーズの2ポート機で標準動作時の値を120Wと低く抑えた。同社既存機は標準動作時に350Wで、競合機は最大消費電力が350VAだった」に訂正いたします。上記の記事はすでに訂正済みです。


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