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【ワイヤレスジャパン2011】下り1Gビット/秒目指す「LTE-Advanced」、ドコモが実験装置と実証成果を披露無線通信技術 LTE-Advanced

現行のLTEで下り300Mビット/秒、上り75Mビット/秒の最大データ伝送速度を、それぞれ500Mビット/秒、1Gビット/秒まで高めることを目指す。さらに、セル端における無線通信容量をLTEの1.4〜1.7倍まで高めることを狙う。

» 2011年05月31日 09時30分 公開
[薩川格広,EE Times Japan]

 NTTドコモは、無線通信関連の展示会/セミナー「ワイヤレスジャパン2011」(2011年5月25〜27日、東京ビッグサイト)で、次世代高速無線通信規格「LTE-Advanced」の実験用に試作した基地局/移動局を展示し、実証実験の成果も披露した(図1)。LTE-Advancedは、高速無線通信規格「LTE(Long Term Evolution)」を拡張してデータ通信速度をさらに高める次世代規格である。同社は、LTEに対応した高速データ通信サービス「Xi(クロッシィ)」の提供を2010年12月に始めており(参考記事)、LTE-Advancedでは、「LTEとの互換性を維持しつつも、下りで最大1Gビット/秒を超えるデータ通信速度を目指す。さらに、セル端(無線基地局のカバー範囲の境界部分)における通信速度の向上も狙う」(同社の説明員)としている(図2)。

図1 図1 LTE-Advancedの実験装置 左側が基地局で右側が移動局。いずれもラックの上段にベースバンド信号処理部、下段に無線送受信回路を納めてある。展示ではこの基地局と移動局を、6経路のマルチパス空間を模擬するフェージングシミュレータを介して有線接続し、データ伝送の様子を実演していた。
図2 図2 LTE-Advancedの目標性能 現行のLTE(3GPP Release 8)で下り300Mビット/秒、上り75Mビット/秒の最大データ伝送速度を、LTE-Advancedでは500Mビット/秒、1Gビット/秒まで高めることを目指す。さらに、セル端における無線通信容量をLTEの1.4〜1.7倍まで高めることを狙う。

 今回展示したのは基地局と移動局の試作装置で、いずれも3GPPがLTE Release 10で標準仕様として承認したLTE-Advanced規格の無線インタフェースに基づく。LTE-Advancedで新たに導入される無線技術の伝送性能を検証するために開発したものだ。新たな無線技術とは、コンポーネントキャリアと呼ぶ単位通信帯域を複数本束ねることで帯域幅を広げる「キャリアアグリゲーション」や、LTEで導入したMIMO方式を拡張し、移動局から基地局に向かう上りリンクの通信にも2本のアンテナを利用できるようにする技術などである(図3)。

図3 図3 試作装置の狙い LTE-Advancedで新たに導入する無線技術を実証する。その1つが、キャリアアグリゲーションと呼ぶ広帯域化技術である。現行のLTEの最大帯域幅である20MHzを単位通信帯域(コンポーネントキャリア)とし、それを最大5本束ねる。帯域幅を最大100MHz(20MHz×5)まで拡張可能な上、現行LTE端末との互換性も維持できる仕組みだ。

 NTTドコモは試作装置を使って、これらの新技術を適用した場合の無線伝送性能を室内環境と屋外環境それぞれで検証している(図4)。今回の展示では、その結果も公開した。室内実験では、キャリアアグリゲーションで帯域幅を100MHzまで広げるとともに、基地局側でアンテナを4本、移動局側でアンテナを2本使う4×2構成のMIMO通信を導入した。2人のユーザーが同時に接続するマルチユーザーのMIMO通信を想定し、1台の基地局から2台の移動局にデータを送信したところ、基地局から移動局に向かう下りリンクで最大1Gビット/秒(2ユーザーの合計値)を上回るデータ伝送速度が得られることを確認できたという。

 屋外実験では、神奈川県横須賀市の横須賀リサーチパーク(YRP)にある同社の研究開発センターに基地局とアンテナを設置し、測定車に移動局を積んで周辺の道路を実際に走行しながら無線伝送性能を評価した。キャリアアグリゲーションは下りリンクに100MHz、上りリンクに40MHzを適用し、MIMO構成は基地局側でアンテナを2本、移動局側でアンテナを2本使う2×2構成とした。1台の移動局を接続するシングルユーザーのMIMO通信時に、下りリンクで最大600Mビット/秒以上、上りリンクで最大200Mビット/秒以上が得られることを確認できたという。

図4 図4 屋外実験の様子 移動局の試作装置を測定車に積んで、横須賀リサーチパーク周辺の道路を実際に走行しながらデータ伝送速度を確認した。

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