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Freescale、最大12コア/デュアルスレッド対応の高性能通信プロセッサを発表プロセッサ/マイコン

QorIQ AMPシリーズは、同社がこれまで提供してきた通信プロセッサ製品群「QorIQ」の新シリーズ。28nm世代の製造プロセスを採用したことや、デュアルスレッドに対応したことなどが特徴。

» 2011年06月22日 21時10分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 Freescale Semiconducter(フリースケール・セミコンダクタ)は、合計12のプロセッサコアを搭載し、それぞれのコアがデュアルスレッド処理に対応した62ビットの高性能通信プロセッサ「QorIQ AMP(Advanced Multiprocessing)シリーズ」の製品計画を発表した。

 QorIQ AMPシリーズは、同社がこれまで提供してきた通信プロセッサ製品群「QorIQ」の新シリーズで、28nm世代の製造プロセスを採用したことや、デュアルスレッドに対応したことが主な特徴である。現在、米国テキサス州で開催中のプライベートカンファレンス「Freescale Technology Forum」(会期は現地時間で6月20日〜23日)に合わせて発表した。

処理性能は従来比4倍

 フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンが2011年6月22日に東京都内で開催した製品説明会で登壇したネットワーク事業本部 事業本部長の伊南恒志氏は、インターネットトラフィックの激増に伴って、次世代の通信/ネットワーク機器市場は3つの課題を抱えていると説明した。1つ目は、高速かつ大容量化の要求が高まっていること。2つ目は、ネット端末数が急増していること。3つ目は、ソフトウェア開発の負荷が増えていることである。

図図 左の写真は、フリースケール・セミコンダクター・ジャパンのネットワーク事業本部 事業本部長を務める伊南恒志氏。右の写真は、プロダクトマーケティング本部 ネットワーキング・マルチメディア・グループ製品部長の岩瀬肇氏。

 それぞれの課題を解決するため、通信機器に組み込むプロセッサには、(1)処理性能の向上、(2)消費電力の削減、(3)ソフトウェア開発の負担軽減が求められている。QorIQ AMPシリーズは、これら3つの要望に応えることを目的に、製品化の準備を進めてきた。

 まず、処理性能については、動作周波数が最大2.5GHzと高い64ビットのデュアルスレッドコア「Power Architecture e6500」を採用した。プロセッサコアの性能を最大限引き出すよう、プロセッサとメモリ、ハードウェアアクセラレータ間の通信性能を向上させた。この他、「セキュリティ(暗号化)」、「パターンマッチング」、「圧縮/解凍」、「データセンタ向け」といった複数のハードウェアアクセラレータを搭載したことも特徴である。

 次に消費電力の削減という観点では、コアごとに動作周波数を調整する低消費電力化技術や、6レベルの電力管理モードを用意した。この他、プロセッサ全体としては、28nm世代の製造プロセスを採用したことや、ハードウェアアクセラレータを搭載したこと、ダイナミック電圧スケーリング機能を搭載したことも消費電力の削減に貢献した。

 「当社従来品に比べて、処理性能を4倍に向上させた」(プロダクトマーケティング本部 ネットワーキング・マルチメディア・グループ製品部長の岩瀬肇氏)という。

 最後に、ソフトウェア開発の負担軽減が求められている点については、既存のQorIQシリーズと同様にPower Architectureコアを採用しており、既存のソフトウェア資産を流用できる。また、ハードウェアアシストの組み込みハイパーバイザーに対応したことや、オンチップの高度なマルチコアデバッグ機能を搭載したことも特筆すべき点である。

図図 左の資料は、今回発表したQorIQ AMPシリーズの対象機器。右の資料は、QorIQ AMPシリーズの3つの特徴をまとめた。

 コア数や内蔵する周辺IPの種類、ハードウェアアクセラレータの種類などが異なる5つの製品グレード「T1xxx」、「T2xxx」、「T3xxx」、「T4xxx」、「T5xxx」を用意した。このうちの1品種であるT4240のサンプル出荷を2012年第1四半期に開始し、その後、四半期ごとに新品種を投入する。

図 QorIQ AMPシリーズの製品計画 5つのグレードに分け、さらにそれを「制御プレーンプロセッサ」、「ハイエンドデータプレーンプロセッサ」、「ローエンドデータプレーンプロセッサ」という3つのカテゴリに分類した。

 対象機器は、無線基地局や、光伝送装置、ルータ機器、企業向け印刷機、ストレージ機器、ゲートウェイ、セキュリティ用の映像機器、デジタルサイネージ機器など。「当社は、PC向けや携帯電話機向けを除く、32ビット以上の組み込みプロセッサの市場において、2010年には45%もの市場シェアを確保し、シェアは第1位だ。今後も、市場シェア1位の座を堅持していく」(伊南氏)と語った。

耐圧40Vのアナログ回路をマイコンに混載

 Freescale Semiconducterはこの他、高耐圧のアナログ回路を混載した16ビットの車載マイコン「S12VR64」も発表した。

図図 左の写真は、フリースケール・セミコンダクター・ジャパンの車載事業本部 事業本部長を務める林章氏。右の写真は、プロダクトマーケティング本部 マイクロコントローラ・ソリューション・グループ製品部のマネージャであるハニフ・サディック氏。

 最大40V耐圧のアナログ回路とロジック回路を混載可能なミクスドシグナルの製造プロセスを採用しており、「S12コア」のMCUの他、LIN(Local Interconnect Network)通信用の物理層回路や、5V出力の電圧レギュレータ、4つの高電圧入力回路、それぞれ2つのローサイドドライバとハイサイドドライバを集積した。「これまで、最大4つの個別のICを使っていた回路を、このマイコン1つで置き換えられる」(同社)。

 S12VR64は既にサンプル出荷を開始している。2011年後半〜2012年初頭には、S12VR64と同一の製造プロセスを採用した新品種を製品化する予定である。

図図 左の資料は、Freescale Semiconducterの車載向け半導体部品を分類した。右の写真は、新たに発売した16ビット車載マイコン「S12VR64」のブロック図。

図 最大40V耐圧のアナログ回路とロジック回路を混載可能なミクスドシグナルの車載マイコンのロードマップ 

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