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薄型TV向け電源の進化、防磁トランスや新たな制御回路などが提案電源設計 LLC共振コンバータ(1/2 ページ)

TDKは、周囲に磁界が漏えいするのを防ぐ独自構造を採用したLLC共振コンバータ用電源トランス「SRVシリーズ」を開発した。富士電機は、LLC共振電源コンバータに向け、従来必要だった計3つのトランス/コイル部品を1つに減らせるとする制御IC「FA5760」の開発を進めている。

» 2011年07月27日 18時38分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

「TECHNO-FRONTIER 2011」記事一覧

 現在、テレビやLED照明の電源に広く使われているのが、「LLC共振電源コンバータ」である。低雑音で高効率という特徴がある。薄型テレビやLED照明向けのみならず、電気自動車向け充電器や産業機器をターゲットに、研究開発が進められている。

 かねてから実用化されている電源トポロジーではあるものの、採用される部品や回路構成の進化が続いている。「TECHNO-FRONTIER 2011」(2011年7月20日〜22日、東京ビッグサイト)では、LLC共振電源コンバータの改善を促す電子部品や半導体チップが展示されていた。

新構造で抜本的な防磁対策

 TDKが出品したのは、周囲に磁界が漏えいするのを防ぐ独自構造を採用したLLC共振コンバータ用電源トランス「SRVシリーズ」である(図1図2)。TECHNO-FRONTIER 2011で、初めて一般に公開した。

 通常、薄型のLLC共振コンバータ用トランスでは、トランスから生じた漏れ磁束が周囲の金属に鎖交し、その金属を渦電流によって発熱させてしまうという問題があった。例えば、薄型テレビの筐体(シャーシ)がアルミや鉄だと、漏れ磁束によってシャーシが熱を持ってしまう。プラスチックのフレームを採用している機種だと、外部に磁束が漏れ出てしまう。

 従来は、周囲に磁界が漏えいしないようにアルミの薄板をトランスに張り付けるといった防磁対策をしていた。アルミの薄板の部分で、漏れ磁束が熱に変わるため、外部に磁束は漏れ出さない。ただ、アルミの薄板を張り付けるのは、いわば対症療法で、コストも掛かる。そこで同社は、トランスの構造そのものを変えることで、電源トランスからの漏れ磁束の課題の根本的な解決を図った。

図 図1 TDKが開発した防磁型の電源トランス (a)が開発品。(b)は防磁用のアルミ板を張り付けた従来品。

 具体的には、従来品では1次コイルと2次コイルを横に並べた構造だったのに対し、開発品ではバームクーヘン状の2次コイルの中心部に1次コイルを入れ込んだ平面構造に変えた。「漏れ磁束は、1次コイルの効果によって消化される。この結果、外部に漏れ出す磁束が大幅に減った。防磁対策をしていない従来品と比べると、漏れ磁束の強度は1/60に減った」(同社)という。

図 図2 防磁型の電源トランスの模式図と効果

 構造を大きく変えながらも、「リーケージインダクタンス」を一定の値に維持しつつ、トランスの外部に漏れる磁束を減らす手法に、同社のノウハウがある。

 一般に、LLC共振電源コンバータを構成するには、絶縁トランスとエネルギー蓄積用インダクタを一体化したトランスと、共振インダクタが必要になる。個別部品としての共振インダクタを不要にするために、トランスの漏れインダクタンスを積極的に活用し、共振インダクタとして使う手法が広く使われている。この漏れインダクタンスを、トランス外部に漏れる不要な磁束と区別するために、ここではリーケージインダクタと呼んだ。「1次コイルと2次コイルの形状や距離をうまく調整し、リーケージインダクタを狙った値に合わせ込む手法に、当社のノウハウがある」(同社)。

 具体的な仕様は、問い合わせに応じて開示するという。既にサンプル出荷を開始しており、2011年12月に量産を開始する予定である。

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