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新日本無線とUMCJが50V耐圧のBCDプロセスを共同開発、2014年には80V耐圧のプロセスもビジネスニュース 企業動向

新日本無線と半導体ファウンドリのUMCJは、8インチウェーハを用いた50V耐圧のBCDプロセスを共同開発した。

» 2011年08月03日 19時25分 公開
[朴尚洙,EE Times Japan]

 新日本無線は2011年8月2日、ユー・エム・シー・ジャパン(UMCJ)と共同で行ってきた半導体製造の前工程(ウェーハ処理)プロセスの開発を完了したと発表した。UMCJはUMC(United Microelectronics Corporation)系列のファウンドリ企業である。新日本無線は、2011年度(2012年3月期)末までに同プロセスを用いた製品を計30種類投入する計画。これら製品による同年度末までの売上高は2億円〜3億円を見込んでいる。

 両者が共同で開発した前工程プロセスは2種類ある。1つは、UMCJの8インチ(約200mm)ウェーハを用いた0.35μmのCMOSプロセスをベースに、新日本無線が得意とするバイポーラ素子やDMOS素子(nチャンネル/pチャンネル)の製造技術を組み込んだ50V耐圧のBCD(Bipolar/CMOS/double diffused MOS)プロセスである。配線構造としては、UMCJの平坦化技術を用い、最大5層を利用できる。さらに、最上層の配線については、新日本無線の既存のプロセスの3倍となる3μmの厚膜メタル配線を実現している。新日本無線の取締役専務執行役員でIC事業部長を務める瀬戸祐一氏(図1)は、「製造プロセスの最適化に予想より時間がかかったことに加えて東日本大震災の影響もあり、開発が半年ほど遅れた」と説明する。また、3年後の2014年までを目処に、80V耐圧のBCDプロセスを開発する方針も明らかにした。

ALT 図1 新日本無線の瀬戸祐一氏

 新日本無線は、2011年6月から、この50V耐圧のBCDプロセスを用いたスイッチングレギュレータやLDO(低ドロップアウト)レギュレータなど6製品の出荷を開始している。今後は、LEDドライバIC、モータードライバIC、電源ICなどを中心に、2011年度上期中に15製品(先の6製品を含む)、2011年度下期にもう15製品、2011年度末までに計30製品を市場投入する計画である。

 同社の前工程プロセスで耐圧が最も高いのは、36V耐圧のバイポーラプロセスだった。今回の50V耐圧のBCDプロセスの開発により、従来は提供していなかった高耐圧/大電流を扱う電源ICやドライバICを製品化することが可能になる。これらの製品が用いられる産業用機器分野への浸透を図るために、半導体商社などの代理店を活用する方針である。瀬戸氏は、「新日本無線がこれまで得意分野としてきたオーディオ業界向けの営業展開とは、異なる知見が必要になる」と見ている。

 新日本無線とUMCJが開発したもう1つのプロセスが、35V耐圧のCMOSプロセスである。このプロセスは、50V耐圧のBCDプロセスより前に開発を完了しており、2010年8月からオーディオ向けアンプなどの製品出荷が開始されている。新日本無線は、ASICを中心としたアナログIC製品の開発に35V耐圧のCMOSプロセスを利用する方針で、2011年度末までに15製品を市場投入する計画だ。

 また、新日本無線は、今回の前工程プロセスの開発完了に併せて、後工程の主力工場である佐賀エレクトロニックス(佐賀県吉野ヶ里町)に、8インチウェーハ対応の試験/組立ラインを導入した。「低価格が求められる製品の組み立てはタイの子会社で行う。車載向けなど高い品質を求められる製品については、佐賀エレクトロニックスで行うことになるだろう」(瀬戸氏)という。

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