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「コネクテッド・インテリジェンスの時代はすぐそこに」、Freescaleの技術フォーラムが開催プロセッサ/マイコン

Freescale Semiconductorは2011年9月13日、「FTF(Freescale Technology Forum)Japan 2011」を開催し、同社のビジョンや事業戦略などを紹介した。

» 2011年09月15日 16時02分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 Freescale Semiconductor(フリースケールセミコンダクター)は2011年9月13日、「FTF(Freescale Technology Forum)Japan 2011」を開催し、同社のビジョンや事業戦略などを紹介した。FTFは、機器設計者や同社のパートナー企業を対象にした総合技術フォーラムである。今年のFTFは、例年に比べて規模が拡大しており、基調講演(ジェネラルセッション)の他、さまざまな技術分野にわたる50もの技術セッション、計140以上の製品デモなどで構成されていた。

 基調講演に登壇した同社のChairman兼CEOのRich Beyer氏はまず、同社が2011年5月26日に新規株式公開(IPO)を実施したことを報告した。「これで得た約9億米ドルの資金を基に、製品やソフトウェアの開発、顧客サポート体制を強化することで、より強固な経営基盤を構築できる」(同氏)。続けて、『組み込みプロセッシングソリューションのグローバルリーダーを目指す』という当社のビジョンを引き続き、推進していくと語った。

図 フリースケールセミコンダクターのChairman兼CEOのRich Beyer氏

 同社の言うプロセッシングソリューションとは、マイコンやプロセッサの製品群に、アナログや電源、センサー、高周波(RF)の半導体部品、ソフトウェアを統合したもの。用途ごとに、マイコン/プロセッサに最適化された周辺部品を組み合わせて提供するソリューション戦略を採っている。同社の注力分野は、自動車と産業、マルチメディア/ネットワーキング、民生という4つである。マイコンやプロセッサを手掛ける半導体ベンダーは多いが、「幅広いアプリケーションそれぞれに適したソリューションを提供できるのが当社の強み」(同社)と主張する。

 業績を振り返ると、2010年度の売上高は44億6000万米ドルだった。35億1000万米ドルだった2009年度に比べて、大きく売上高を伸ばした。2010年度の売上高に占める製品ジャンルの割合は、マイコンが36%、ネットワーキング/マルチメディア向け製品(ネットワーク/通信機器向けプロセッサなど)が28%、高周波(RF)、アナログおよびセンサーが24%となっている。最も高い売上高の割合を占めるマイコンの市場シェアは、全世界で2位に位置する。アプリケーション分野ごとに売上高の割合を比較すると、自動車分野が38%と最も高く、マルチメディア/ネットワーキング分野が25%、産業分野が15%、民生分野が10%と続く。

図 Freescaleの製品群の概略図 マイコンやプロセッサの製品群に、アナログや電源、センサー、高周波(RF)の半導体部品、ソフトウェアを組み合わせて提供する。

「Interet of Things(モノのインターネット)」の時代へ

 続いてRich Beyer氏は、「PCの時代は終わった」という言葉を使いながら、x86アーキテクチャを軸にしたPCの時代から、「Internet of Things(モノのインターネット)」とに代表されるような、さまざまな機器が高度化し、相互に接続する「コネクテッド・インテリジェンス」の時代に移りつつあると語った。

 コネクテッド・インテリジェンスの時代には、既存の機器の姿が大きく変化する。例えば、タブレットPCは、デスクトップPCやノートPCの置き換えという現在の姿のみならず、電子書籍、ゲーム、家庭、医療といったそれぞれの利用シーンに適した機種が登場する。自動車は、機械的なシステムから電気的なシステムへの変化がさらに進み、自動車がインターネットに接続することで、「究極のスマートモバイル」に変わるという。

 ただ、開発期間の短縮化やアプリケーションの多様化という流れが、開発者の肩にのしかかる。このようなコネクテッド・インテリジェンスの時代には、組み込みプロセッシングソリューションの重要度が増すというのが、同社の主張だ。ただ前述の通り、マイコンやプロセッサだけでは不十分で、「システムレベルでアプリケーションを理解し、アプリケーションそれぞれに適した周辺機能も統合化していく」(同氏)と説明した。

 現在、注目している市場として挙げたのが、タブレットPCなどのスマートデバイスや、ネットワーク/通信機器、自動車、スマートエネルギー、メディカルといった分野である。それぞれに対して、前述の同社の指針の基で開発されたさまざまな製品を紹介した

 まず、タブレットPCや電子書籍に向けては、マルチコアのアプリケーションプロセッサの新品種「i.MX 6シリーズ」を、2011年1月に発表した(関連記事)。ARMの「Cortex-A9」コアを採用しており、1コア品「i.MX 6Solo」と2コア品「i.MX 6Dual」、4コア品「i.MX 6Quad」がある。消費電力が低いことや、処理性能が異なる複数の品種をそろえていること、周辺回路を集積化していることが特徴だという。2012年前半には、量産を開始する予定である。

 次に、ネットワーク/通信機器に向けては、最大12コア/デュアルスレッド対応の高性能通信プロセッサの「QorIQ AMP」や、通信処理プロセッサとDSP、ハードウェアアクセラレータを1チップに集積した無線基地局向けプロセッサ製品群「QorIQ Qonverge」を開発した。

ネットワーク/通信機器向けプロセッサを紹介するスライド。IPトラフィックの増大に対応すべく、マルチコアのプロセッサを次々と開発した(左図)。QorIQ Qonvergeの対象用途(右図)。

 QorIQ AMPシリーズは、同社がこれまで提供してきた通信プロセッサ製品群「QorIQ」の新シリーズ((QorIQ AMPについての関連記事)。28nm世代の製造プロセスを採用したことや、デュアルスレッドに対応したことなどが特徴である。2012年前半にサンプル出荷を開始する予定。一方のQorIQ Qonvergeは、「Basestation on a chip(基地局機能を1つのチップに)」をコンセプトにしたもの(QorIQ Qonvergeについての関連記事)。QorIQ Qonvergeシリーズのうち、最初に量産する品種であるフェムトセル/ピコセル向け「PSC913x」のサンプル出荷を開始したことを2011年9月12日に発表した。

 自動車分野では、機能安全対応の開発支援サービスを開始した他、スマートグリッド関連やヘルスケア用途などに向けて、ARMのCortex-M4コアを採用した汎用マイコン製品群「Kinetis」を拡充した(関連記事)。

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