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「PS Vita」を分解、クアッドコアプロセッサはソニー/IBM/東芝が共同開発製品解剖(1/3 ページ)

ソニーの最新型携帯ゲーム機「PS Vita」を分解して使用部品を調査した。プロセッサは、ソニーがIBMおよび東芝と共同開発したARM Cortex-A9ベースのクアッドコア品である。その他の主要部品は、東芝やAvago Technologiesなどが供給している。

» 2012年01月17日 18時35分 公開
[Allan Yogasingam,UBM TechInsights]

 ソニー・コンピュータエンタテインメントが2011年12月に日本を皮切りに世界で順次発売した「PlayStation Vita(PS Vita)」。筆者が所属するUBM TechInsightsがこの最新の携帯型ゲーム機を分解したところ、IBM、東芝、Qualcomm(クアルコム)、そしてAvago Technologies(アバゴ・テクノロジー)が主要部品を供給していることが明らかになった。中核となるプロセッサは、ソニーがIBMおよび東芝と共同で開発したARM Cortex-A9ベースのクアッドコア品である。

PS Vitaの箱を開けたところ PS Vitaの箱を開けたところ 出典:UBM TechInsights

 ソニーは、2011年6月に米国カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されたゲーム関連の展示会「E3 Expo2011」で、既存機「PlayStation Portable(PSP)」の後継となるPS Vitaを初めて公開した。任天堂の携帯ゲーム機「Nintendo 3DS」の直接のライバル機と位置付ける(UBM TechInsightsは2011年の春にNintendo 3DSの分解調査も実施している)。ソニーと任天堂は現在も携帯型ゲーム機市場のシェアを二分しているが、業界を見渡すと、スマートフォンが携帯型ゲームのプラットフォームとして存在感を増しつつあるのも事実だ。

 ソニーはゲーム機メーカーとしての競合優位性を維持すべく、PS Vitaに有機ELパネルを採用した1600万色対応の5インチ型マルチタッチスクリーンを搭載している。また、背面にもタッチパネルを備えており、機器の背面を指でなぞって正面スクリーン内の動きを操るという、全く新しいゲーム感覚を実現した。

 PS Vitaは、GPSや3軸ジャイロセンサー、加速度センサー、電子コンパスといった、現在の高性能スマートフォンに内蔵されているさまざまな機能を全て備えている。製品ラインアップとしては、通信機能としてWi-Fiのみに対応するモデルと、3G携帯電話とWi-Fiの両方に対応するモデルの2機種を提供中だ。

 技術的な観点で興味深いのは、こうした携帯機器としては初めて、ARMコアをベースにカスタム設計したクアッドコアプロセッサを搭載したという点だろう。ソニーは、このプロセッサで他社の携帯型ゲーム機との差別化を図るとともに、タブレットPCやスマートフォンで得られるゲーム体験との違いを明確に打ち出そうとしている。

 ソニーは今回、かつてプロセッサ「Cell」を共同開発したIBMや東芝と再び手を組んで、ARM Cortex-A9 MPCoreベースのクアッドコアプロセッサ(型名は「CXD5315GG」)を生み出した。当初、Samsung Electronics(サムスン電子)がこのチップの製造を担うのではという憶測もあったが、ソニーはどうやら、過去に良好な協業関係を結んだことのある東芝を選んだようだ。

 まずはCXD5315GGのベアチップ(ダイ)(図1)と、東芝の刻印の拡大写真(図2)をご覧いただこう。東芝は、PS Vitaでクアッドコアプロセッサの開発に協力するとともに、マルチチップメモリとシステムメモリのデザインウィンも獲得している。

図1 クアッドコアプロセッサのダイ写真 図1 クアッドコアプロセッサのダイ写真 ソニーがIBM、東芝と共同で開発した、「ARM Cortex-A9 MPCore」ベースのクアッドコアプロセッサである。出典:UBM TechInsights
図2 東芝の刻印 図2 東芝の刻印 このプロセッサチップには、製造を担当する東芝の名前が刻まれている。出典:UBM TechInsights

 Qualcommは、PS VitaにHSPA+/GSM対応のモデムチップ「MDM6200」を供給している。このモデムチップは、Apple(アップル)の最新スマートフォン「iPhone 4S」にも採用されており、Qualcommにとってはそれに続く大きな実績になった。この他にQualcommは、PS Vitaに電源管理チップの「PM8028」も提供している。

 Avago TechnologiesはPS Vitaで6件のデザインウィンを獲得しており、そのほとんどは通信ボード用の部品だ。この他の部品ベンダーとしては、STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)がジャイロセンサーなどで2件、Kionix(カイオニクス)が加速度センサーで1件、Marvell Technology GroupがWi-Fiチップで1件のデザインウィンをそれぞれ獲得している。

 PS Vitaは、それぞれ役割が異なる3枚のボードを搭載している。1つ目は、アナログジョイスティックとデジタルジョイスティックを制御するボード。2つ目は、無線通信を担うボード。3つ目がメインボードで、プロセッサやGPUなどの主要部品が実装されている。

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