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なぜ今、LED照明/不動産業界に無線通信技術が求められているのか?無線通信技術 ZigBee(1/2 ページ)

戸田建設と村田製作所、山田照明の3社は業界他社に先駆け、LED照明の無線制御システムの実証実験を開始する。「タスク&アンビエント照明システム」を無線で制御することで、消費電力を従来比で50%以上削減できるという。

» 2012年01月24日 18時19分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 戸田建設と村田製作所、山田照明の3社が共同で2012年1月に開始した「タスク&アンビエント照明システム」の実証実験(関連記事人に優しい「スマートビル」実現へ――タスク&アンビエント照明システムの実証実験を開始)。作業(タスク)照明とフロア(アンビエント)照明のそれぞれを制御するこの照明手法は、部屋全体を一様に明るくする従来の照明手法に比べて大幅な消費電力の削減が見込める。実証実験では、タスク&アンビエント照明を低消費電力の無線通信方式である「ZigBee」で制御する照明システムの検証を進める予定だ。

 今回の実証実験に採用したZigBeeやLED照明という要素技術そのものは、何ら新しい技術ではない。ZigBeeは今からさかのぼること8年前の2004年に発表された規格だ。LED照明は数年前から採用が広がっている。前述のようなメリットがあるにもかかわらず、LED照明と無線制御を組み合わせた照明システムが日本国内でほとんど採用されてこなかったのはなぜか……。なぜ今、戸田建設など3社は実証実験をスタートさせたのか、各社の事業戦略をまとめた。

写真左は、戸田建設の本社生産施設営業・エンジニアリング部担当執行役員である稲垣秀雄氏。写真右は、タブレットPCをリモコンの代わりに使って、LED照明を制御するデモ。

ようやく始まった照明業界と無線業界のコラボ

 まず、照明メーカーである山田照明の開発担当者は、「照明と無線のコラボレーションはようやく最近始まったばかり。技術分野が大きく違うこともあり、協業は進んでいなかったのが実情だ」と説明した。ここ数年、消費電力を削減しようという世論を背景にLED照明に注目が集まっている。LEDの発光効率が年々上昇していることもあり、白熱電球や蛍光灯に比べて消費電力は抑制できるものの、当初想定していたよりも消費電力を下げられないというケースがあるという。

 そこで同社が注目したのがタスク&アンビエント照明システムだ。この照明手法は20年も前から知られていたが、今までは室内の雰囲気を柔らくするといった目的で使われていた。この照明手法を省エネに活用するというのは、ここ最近の取り組みだという。光のエネルギーは光源から離れると距離の2乗で減衰するために、部屋全体を明るくするときよりもタスク照明で机上を照らす方が効率は高い。従って、机上の照度を一定に保ったとき、消費電力を削減できるわけだ。

写真左は、タスク&アンビエント照明システムのイメージ図。必要な範囲のみを明るくすることで、部屋全体を明るくする既存の照明手法に比べ、消費電力を50%以上削減できるという。タスク&アンビエント照明システムは、各種センサーや無線制御と組み合わせることで、さらに消費電力の抑制が見込める(写真右)。

 「小型のLED照明が開発されたことでスペースを取らないタスク照明が開発されていることや、点光源のLEDを使いながらも広い範囲を照らすアンビエント照明用の光制御技術が開発されたことで、オフィスに適したタスク&アンビエント照明システムが実現できた」(山田照明)という。

 ただこれまでは、机に取り付けたタスク照明のオン/オフは個別スイッチで切り替える必要があった。無線を使ってLED照明を制御することで、全てのタスク照明を一括でオン/オフさせたり、人感センサーや照明スケジューラとLED照明を連携させやすくなった。

 「タスク&アンビエント照明システムに無線制御を組み合わせることで、より一層の消費電力の削減が期待できる。利用者の利便性を損ねることなく、照明の消費電力を50%以上も削減可能だ」(同社)。

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