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» 2012年01月31日 15時00分 UPDATE

Analog ABC(アナログ技術基礎講座):第35回 あの手この手でBand Gap Referenceの電源雑音対策 (2/2)

[美齊津摂夫,ディー・クルー・テクノロジーズ]
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バイパスコンデンサとダンピング抵抗

 電源電圧に含まれる雑音の悪影響が抑えられたのでこれでいけそうなのですが、念のために位相補償コンデンサを1pFに下げたBGR回路にAC解析を施した結果が、図6の青いラインです。500kHz付近の利得は、位相補償コンデンサが40pFのときに比べて25dB程度減っているのですが、100MHz辺りに利得の盛り上がりが発生してしまいました。この利得の盛り上がりの影響が、リンギングとなってBGR回路の出力(VBGR)に現れてくるのです。

図 図6 位相補償用コンデンサを小容量品に変えたときの周波数特性 500kHz付近の利得は、位相補償コンデンサが40pFのときに比べて25dB程度減っているのですが、100MHz辺りに利得の盛り上がりが発生してしまいました。この利得の盛り上がりの影響が、リンギングとなってBGR回路の出力(VBGR)に現れます。

 この利得の盛り上がりを少なくするためには、VBGRにバイパスコンデンサを入れるのが一般的です(図7)。基準電圧として使うわけですから、リップル度を抑えるためにバイパスコンデンサを入れたくなるのが人情でしょうか。

図 図7 バイパスコンデンサを入れて100MHz付近の利得の盛り上がりを抑制

 図7のようにグラウンド(GND)と出力端の間に1nFのバイパスコンデンサを入れた状態でAC解析をした結果が図8です。図6の100MHz付近に現れていた利得の盛り上がりはなくなっていますが、5MHzにピーキングが発生してしまいました。電圧利得は0dB以下なので問題ないかもしれません。しかし、念のために過渡解析をして、BGR回路の出力VBGRの時間変化を確認してみましょう。

図 図8 1nFのバイパスコンデンサを入れたときのBGR回路の周波数特性 100MHz辺りの利得の盛り上がりはなくなりましたが、5MHzにピーキングが発生しています。ピーキングのある周波数では利得が落ちていないために、電源に載った雑音が抑圧されないまま、VBGRに出力されます。

 図9が過渡解析の結果です。電源には雑音として0.3Vppのパルス電圧を入れました。グラフの色の違いは、パルス電圧の周波数を2.5MHz、5MHz、10MHzと変えたときの結果です。周波数が5MHzのときにVBGRに残っている雑音が大きいことが分かるでしょう。

図 図9 1nFのバイパスコンデンサを入れたときのBGR回路の過渡解析 電源には雑音として0.3Vppのパルス電圧を入れました。グラフの色の違いは、パルス電圧の周波数を2.5MHz、5MHz、10MHzと変えたときの結果です。図中の青いラインと赤いラインの周期が同じように見えます。これは、強い共振があるとその共振周波数のみが強調されるからです。電源に載ったパルス電圧の周波数は異なっていても、共振する周波数で同じようなリンギングが出ることがあります。

 ピーキングのある周波数では利得が落ちていないために、電源に載った雑音が抑圧されないまま、VBGRに出力されてしまっています。例えば、スイッチングレギュレータの動作周波数とこのピーキングの周波数(共振周波数)が近いと、図9のような波形がVBGRから出てきて、「バイパスコンデンサが効かない!」といったトラブルに見舞われてしまいます。

 バイパスコンデンサを大容量品に置き換えることで、このような電源雑音を除去できます。しかし、部品コストや実装面積の制限によって、大容量品を採用できない場合があります。そんなときには、バイパスコンデンサと直列にダンピング抵抗を入れて、雑音を抑制するという方法があります。

図 図10 バイパスコンデンサと直列にダンピング抵抗を入れたときのAC解析の結果 図8の周波数特性と比較してください。

 図10はバイパスコンデンサと直列にダンピング抵抗を入れたときのAC解析の結果、図11は過渡解析の結果です。今回は、1nFのバイパスコンデンサに対して15Ωのダンピング抵抗を入れました。図8と図10、図9と図11を見比べてみてください。ピーキングが減り、VBGRに残っていた雑音も削減できたことが分かります。次回は、BGR回路の特性をさらに向上させるために、「相対ばらつきとBGR回路の起動」に着目しましょう。

図 図11 バイパスコンデンサと直列にダンピング抵抗を入れたときの過渡解析の結果 図9のVBGRの時間変化と比較してください。
AnalogABC_Photo.jpg

Profile

美齊津摂夫(みさいず せつお)

1986年に大手の通信系ハードウエア開発会社に入社し、光通信向けモジュールの開発に携わる。2004年に、ディー・クルー・テクノロジーズに入社。現在は、同社の常務取締役CTO(最高技術責任者)兼プラットフォーム開発統括部長を務めている。「大学では電気工学科に所属していたのですが、学生のときにはアナログ回路の勉強を避けていました。ですから、トランジスタや電界効果トランジスタ(FET)を使ったアナログ回路の世界には、社会人になってから出会ったといっていいと思います。なぜかアナログ回路の魅力に取りつかれ、23年目になりました」。



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