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フレキシブル/超薄型のタッチパネルに道、幅広い用途の透明電極に新材料登場材料技術

Cambrios Technologiesは、直径がナノオーダーの銀(Ag)ワイヤーをメッシュ状に形成し、光の透過性と導電性を両立させた透明導電インクの市場展開を本格化する。

» 2012年02月09日 08時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 「独自の透明電極材料でITO(酸化インジウム・スズ)を置き換える」ことを目標に掲げたベンチャー企業であるCambrios Technologies(カンブリオス テクノロジーズ)は、同社材料の量産体制を整え、フィルム/ガラスベンダーやタッチパネルメーカーへの売り込みを本格的に開始する。

 同社の創業者でPresident兼CEOを務めていたMichael R. Knapp氏がChairmanの役職に異動し、John E. LeMoncheck氏がPresident兼CEOに就任した(図1)。LeMoncheck氏は、60GHz帯無線チップを手掛けるSiBEAMのPresident兼CEOを務めていた人物(関連記事)。民生分野での経験が長く、新技術の事業を立ち上げた実績を多く有するLeMoncheck氏をCEOに据えることで、新たな透明電極材料の事業の早期立ち上げを狙う。Samsung Venture Investmentから500万米ドルの出資を受けることも、2012年1月31日に発表した。

図 図1 Cambrios TechnologiesのPresident兼CEOに就任したJohn E. LeMoncheck氏

ナノの銀ワイヤーが透明な導電フィルムを生む

 透明電極は、モバイル機器のタッチパネルや太陽電池、有機EL照明、有機ELディスプレイといった幅広い用途に使われている。「当社の透明電極材料であるClearOhmは、現在一般的に使われているITOに無い数多くの特徴を有する」(LeMoncheck氏)という。

 特徴は主に3つある。1つ目は、一般的なITO膜の製造に必要な蒸着やスパッタリングといった真空プロセスが不要であること。設備投資や加工費を抑えられる。2つ目は、塗布型の製造プロセスを採れるため、大面積化に向くこと。3つ目は、フレキシブルパネルや薄いガラスの上にも特性を劣化させず透明電極を形成できることである。「大画面、フレキシブル、超薄型といった、新たな透明電極材料を使った次世代タッチパネルディスプレイが、最終製品のデザインや利用シーンを変えるだろう」(同氏)。

 ClearOhmの実体は、直径がナノオーダーの銀(Ag)ワイヤーをインクに混ぜた液体(透明導電性インク)である。この透明導電性インクをフォルムに均一に塗布(または印刷)すると、高い導電性を有するAgワイヤーがメッシュ状に絡み合い、光の透過性と導電性を両立させることができる。フィルムも含めた光の透過率は85〜91%、このときのシート抵抗(単位面積当たりの抵抗)は10〜250Ω/□である。

図2 華為技術(Huawei)のスマートフォンにClearOhmが採用された(写真左)。写真は、AU Optronics(AUO)が「FPD International 2011」に展示したフレキシブル電子ペーパー。これにも、Cambriosの透明電極材料が使われているという。

 Cambriosはまず、タッチパネルディスプレイの市場にターゲットに絞り、その後、フレキシブルディスプレイや有機EL、太陽電池の市場にClearOhmを展開する計画である。既に、日立化成が同材料を使った転写型透明電極フィルムを2011年7月に発表したり、信越ポリマーが透明導電フィルムを2012年1月に発表するなど、市場導入を本格化させる準備が整いつつある(日立化成のニュースリリース信越ポリマーのニュースリリース)。

 2011年にCambriosとして初めてスマートフォンのタッチパネルに採用されたのに続き(図2)、今後発売されるスマートフォンやタブレットPCの幾つかの機種への採用が決まっているという。

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