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IntelがAMDに続きWSTSから脱退、プロセッサ市場のデータは事実上無意味に?ビジネスニュース

世界半導体売上高の月例報告書を発行するNPO団体である世界半導体市場統計(WSTS)からIntelが脱退した。プロセッサ市場の約9割を占めるIntelとAMDの2社が脱退した今、WSTSが同市場の統計をとる意味はあるのだろうか。

» 2012年03月02日 10時38分 公開
[Dylan McGrath,EE Times]

 Intelは2012年2月28日、世界半導体売上高の月例報告書を発行するNPO団体である世界半導体市場統計(WSTS:World Semiconductor Trade Statistics)から脱退したことを認めた。

 Intelの決断は、28日付のWall Street Journalで初めて報じられた。Intelは、2011年末にWSTSを脱退した競合のAMD(Advanced Micro Devices)に続く形で、同団体を脱退したことになる。

 WSTSの月例報告書は、半導体売上高の評価基準として幅広く用いられている。半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)や市場調査会社などの機関は、WSTSが発表するデータを用いて半導体業界の景況を分析したり評価したりする。今後はIntelとAMDが売上高データをWSTSに提供することがなくなるため、WSTSは、この2社については独自に想定した数値を元に報告書をまとめ、プロセッサ市場や半導体市場全体に向けて提供することになるだろう。

 Intelの広報担当者は、2月28日にEE Timesが行ったEメール取材の中で、「当社は断続的に、加盟する団体の評価を行い、会員であることの必要性と利点を見直している。今回もこうした見直しを通じて、WSTSに加盟し続ける必要はないという決断に至った」と回答した。

 WSTSはWebサイト上で、世界半導体市場の75%以上を占める62社が同団体に加盟していると掲げている。だが、世界最大手の半導体メーカーであるIntelの脱退を受けて、今後この数字は改められることになるだろう。同Webサイトには、世界半導体市場のトップ20社がすべて加盟しているとあるが、この中にはまだ、IntelとAMDが含まれているとみられる。

 Wall Street Journalによると、「Intelは、AMDの脱退を受けて、WSTSが発表するデータにはもはや何の価値もないと結論付けた」と分析するアナリストもいるという。AMDはIntelにとって、PC向けプロセッサ分野における唯一のライバルと言っても過言ではない。なお、Intelは、プロセッサの世界売上高のうち80%以上を占めている。

 AMDの広報担当者は、EE Timesが行ったEメール取材に対して、「当社は、業界団体への加盟に関する見直しを常に行っている。そうした見直しを通じて、昨年、WSTSの加盟を更新しないことを決断した」と述べた上で、同社が2011年末にWSTSを脱退したことを認めている。

 IntelとAMDの脱退が、WSTSが発表するリポートにどの程度影響するかは不透明だ。Wall Street Journalは、WSTSを率いるBernd Schniggenfittig氏のコメントとして、同団体がさまざまな方法を用いて、データを提供しない企業の売上高を推定していることを伝えた。

 米国の市場調査会社であるIC Insightsでプレジデントを務めるBill McClean氏は、EE TimesのEメール取材に対して、「IntelとAMDはプロセッサ市場の約90%を占めているため、この2社なしに出したデータなど単なる推量にすぎない」と述べた上で、「IntelとAMDの脱退により、WSTSが発表するプロセッサ市場の売上高データに大きな穴が生じる」と分析した。一方で同氏は、WSTSが発表する他のデータに関しては、影響は最小限にとどまるとしている。

 ベテランのIC市場アナリストであるMike Cowan氏は、「IntelとAMDが脱退したことで、“業界の月間売上高データの有望な配信元”としてのWSTSの地位が揺らぐ可能性もある。今後WSTSがどうなっていくかは、時間がたてば分かるだろう」と述べた。

 また、Cowan氏は、WSTSがIntelが抜けた後に算出した、2012年1月の世界半導体売上高データに注目すべきだとしている。WSTSは今のところ、2012年3月7日に1月のリポートを発表する予定だ。

 Schniggenfittig氏からは、コメントを得ることができなかった。また、SIAの広報担当者は、「WSTSとの協議前にコメントできない」としている。

 WSTSに加盟する企業が支払う会費は、その企業の売上高によって変動する。WSTSのWebサイト上のデータを参考にすると、2011年の売上高が65億7000万米ドルのAMDは、1700米ドルの年会費を支払うことになる。一方、Intelが相当する、“売上高が100億米ドル以上の企業”が支払う年会費については明らかにされていない。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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