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ベテランを悩ます“いまどきエンジニア” 〜 立ちはだかるコミュニケーションの壁いまどきエンジニアの育て方(1)(1/3 ページ)

「若手とコミュニケーションが取れない」――。このような悩みを抱えるベテランエンジニアは少なくありません。育った時代背景も価値観も大きく異なる世代同士で、スムーズに仕事を進めるにはどうすればよいのか。製造業の開発現場に詳しい著者が、ベテランエンジニアや管理職の皆さんに向けて、若手と向き合い、育てていくヒントを提示します。

» 2012年04月04日 06時00分 公開
[世古雅人,カレンコンサルティング]

「いまどきエンジニアの育て方」連載一覧

育たない若手エンジニア

 「若手がなかなか育たない」、「現場のOJT(On the Job Training)が機能しない」――。ここ2年ほど、メーカーの開発現場の部課長クラスや、人事部門から、こうした声が急に目立つようになりました。

 若手のエンジニアを一人前に育てていく。エンジニアに限らず、いつの時代も人材育成が企業にとって最重要課題であることは変わりません。

 「ゆとり教育」を受けてきた、いわゆる“ゆとり世代”が社会人となり、数年が経ちます。彼らを指導する側である部課長や先輩社員の多くが、「若手とコミュニケーションが取れない」と感じているようです。

コミュニケーションの壁 ベテランエンジニアと若手エンジニアの間には、コミュニケーションの壁が立ちはだかっています。本連載で登場する架空のエンジニアリング企業「川崎テックデザイン」の若手・佐々木さんと課長・田中さんの間にも……。

 もっとも、ゆとり世代にも彼らなりの言い分があり、どの世代がいい、悪いという問題では決してありません。管理職と現場、あるいは世代の違う人間同士が、お互いに責任を押し付け合っていても、何も解決しません。

 業務プロセス・組織マネジメント系のコンサルティング会社の経営者として、数多くの現場に赴き、事例を実際に見てきた著者が、若手の育成に悩む管理職の皆さん、ベテランエンジニアの皆さんに、「具体的な事例」と「コミュニケーション・学習に関する理論」を織り交ぜながら、「若手とどう向き合い、育てていくか」をお伝えしていきます。

古き良き時代

 筆者はバブルがはじける少し前の1980年代後半に社会人になり、電子計測器のメーカーでハードウェア設計に10年以上携わりました。アナログではpA(ピコアンペア)オーダーの微小なDC(直流)信号からGHz(ギガヘルツ)オーダーの高周波信号まで扱い、デジタルではCPU周りやASICの設計などに関わっていました。当時はハード設計者自身が、ICE(In Circuit Emulator)などを接続して、マシン語やアセンブラでソフトウェアのデバッグをしていました。ソフトの開発部隊は別にいましたが、ハード設計者もソフトのことが一通りは分かり、ソフト設計者もハードの知識を持っていました。お互いに、“ハード屋さん”、“ソフト屋さん”と呼び合っており、普段は少し距離がありましたが、設計通りに動かないとワイワイガヤガヤ集まって、一緒に解決していた「古き良き時代」でもありました。

新人類世代とゆとり世代

 我々が社会人になりたてのころは、上の世代から“何を考えているか分からない”、「新人類世代」と呼ばれていました。その後に「バブル入社世代」が続き、「就職氷河期世代」に突入します。これらの両方の世代にまたがっているのが「団塊ジュニア世代」です。

 今のゆとり世代は、育った時代背景はもちろん、価値観などが大幅に違う新人類世代とのコミュニケーションギャップを、なかなか埋めることができません。新人類世代の上司は完全にアウト、就職氷河期世代の上司が相手であれば少し話ができる――。このようなことが、現実的に開発現場で起こっています。当然、若手が一人前になるまでに時間がかかる要因になると同時に、ミスコミュニケーションは仕事のあらゆる面でプラスにはなりません。

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