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市場調査というジグゾーパズルを組み上げよう〜分析/予測から執筆後まで〜エンジニアのための市場調査入門(最終回)(1/4 ページ)

今回は、ヒアリングで集めたさまざまな情報をまとめ、リポートとして作り上げる「分析/予測」、「執筆」、「その後」という工程に話題を移します。市場調査を長年手掛けていた筆者は、「市場調査とはジグゾーパズルのようなもの、手持ちのピース(情報)で全体を推定するには「細かい観察力」と「大胆な洞察力」が要求される」と語ります。

» 2012年04月10日 10時00分 公開
[田村一雄 ,矢野経済研究所]

「エンジニアのための市場調査入門」連載一覧

 前々回前回は、市場調査の出発点である「ヒアリング」について詳しく解説しました。今回は、ヒアリングで集めたさまざまな情報をまとめ、リポートとして作り上げる「分析/予測」、「執筆」、「その後」という工程に話題を移します。市場調査を長年手掛けていたプロである筆者の視点は、エンジニアの皆さんが作業をするときにも役立つはずです。「エンジニアのための市場調査入門」は、今回が最終回になります。本連載の最後の部分にある、著者からエンジニアの皆さんに向けたメッセージもぜひ、ご覧ください。(EE Times Japan編集部

分析の前提 〜市場調査とはジグゾーパズルのようなもの〜

 取材(ヒアリング)によりさまざまな材料(情報)を集めてきた。これをしかるべきリポートにするためには「分析、予測〜執筆〜発刊」というプロセスに加えて、調査後のさまざまなフォローや活動も重要である。これらについて、それぞれ述べていきたい。

 われわれにとっての分析とは、市場規模および各メーカーの市場シェアの推移・予測、SWOT、個別アイテムの可能性や課題、これらを元にした市場展望といったことになるが、それぞれの手法について語る前に「分析の前提」を考えてみる。

図 写真はイメージです

 これまでの連載で書いてきたように、われわれの取材活動には取材拒否が避けて通れない。例えば、調査対象企業が20社あり、このうち5社が取材拒否だったとする。私は社内研修などでずいぶん前から「市場調査とはジグゾーパズルのようなもの」と言ってきた。その意味は、ある「絵」を完成させるためにピース(情報)を集めてきて、その「絵」には何が描かれているかを当てなければならない、ということである。

 ピースの色はその多くが灰色(グレー)で構成されていたとする。ピースは5個埋まらなかった。その場合、絵は「ゾウ」なのか「サイ」なのか推測する必要がある。「絵」を推定する決定打となる最も重要なピースが埋まっていない、このような場合、埋まった手持ちのピースで全体を推定するには「細かい観察力」と「大胆な洞察力」が要求される。細かい観察力とは、手持ちのピースの中でゾウの鼻や牙、耳、サイの角につながるものはないか細かく見るということ。大胆な洞察力とは、そもそもゾウとサイの決定的な違いは何なのか、大所高所(たいしょこうしょ)に立った視点を持つことである。観察眼と洞察力の鋭いアナタ、この商売に向くかもしれません。ただし、ヘタな観察力と洞察力で揚げ足を取るようなことを「勘ぐり」というのでそこは勘違いしないように。

分析/予測 〜可能な限り細分化してアウトプット〜

 市場規模やメーカーシェアの算出はそれ自体が分析なのであるが、われわれは可能な限りこれを細分化してアウトプットしようと心掛けている。例えば、地域別、用途分野別、タイプ別(スペックや主要材料などで分類)などだが、このような細分化したデータは企業戦略を構築する上で実戦的に用いられていると思われる。「ランチェスターの戦略」で言うところの「強者、弱者」に自社を当てはめてみれば、どこで何を武器に、どう戦うか見えてくるはずである。われわれは自社企画リポートにおいて、そこまで提案することはない。データを読者サイドで「読み解く力」が必要だと考えている。

 これと並行してSWOT分析なども行っている。ご存じの方は多いと思うが簡単に説明すると、「S(Strength)強み」、「W(Weakness)弱み」、「O(Opportunities)機会」、「T(Threats)脅威」であり、SとWは内部要因、OとTは外部要因である。われわれのリポートにはあえて「SWOT分析」といった項目を設けてページを割いているケースはそう多くないが、市場予測をする上では、SWOTを意識しておく必要がある。

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