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ストレージの過去・現在・未来福田昭のストレージ通信(1)(2/2 ページ)

» 2012年07月06日 11時15分 公開
[福田昭EE Times Japan]
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フラッシュストレージの台頭

 2000年代後半のストレージ業界は、フラッシュストレージ(NAND型フラッシュメモリを使ったストレージ)が大きく台頭した時期でもあった。NAND型フラッシュメモリの価格(記憶容量当たりの価格)が時間経過とともに急速に低下したことにより、フラッシュストレージの適用領域は大きく拡大した。

 NAND型フラッシュメモリを内蔵したメモリカードは当初、デジタルカメラやオーディオプレーヤーなどのストレージとして堅調に市場を広げていた。それが2000年代末〜2012年には、薄型ノートPCやスマートフォン、メディアタブレットなどのストレージとして急激に市場を伸ばしていく。HDDと互換性があるフラッシュストレージ「SSD(Solid State Drive)」が登場したからだ。

 SSDは固体メモリなので、機械的衝撃に強い。すなわち落下によるクラッシュの心配がない。また消費電力が低く、無音であり、モバイル機器には最適のストレージとされた。一時期は、HDDを置き換えると期待されたこともある。

 しかしNAND型フラッシュメモリには、HDDとは全く違う弱点がある。最大の弱点は記憶容量当たりのコストがHDDの5〜10倍と高いことだ。PCの平均単価が世界的にみても高い日本市場ではSSDがかなり使われているものの、海外のPC市場ではSSDの存在感はあまりない。

 NANDフラッシュメモリに特有の弱点は他にもある。書き換えに時間がかかる他、書き換え回数に制限がある、同じ物理アドレスの読み出しを繰り返すと隣接した物理アドレスのデータが読み出せなくなる恐れがある、といった問題を抱えている。サブシステムであるフラッシュストレージには、こういったNAND型フラッシュメモリの弱点を補う工夫が施してあるものの、完全に打ち消せているわけではない。

共存するSSDとHDD

 このため最近では、SSDとHDDは役割分担をふまえて共存していくとの予測がストレージ業界では大勢を占めている。スマートフォンやメディアタブレットなどの薄型モバイル機器はSSDやフラッシュストレージが使われる。ノートPCでは一部の超薄型機種はフラッシュストレージが使われるものの、ストレージの主流はHDDであり続ける。

 速度と容量のトレードオフによって数多くのストレージ階層を有するデータセンターでは、最高速の読み書き性能を要求する階層(ティアー0)にはエンタープライズ用SSD(読み書き性能と信頼性を高めたSSD)が使われる。ティアー1以下は、性能別のHDDが採用される。

未成熟なSSDと限界が気になるNAND型フラッシュ

 SSDを販売している企業は現在、100社を超えるといわれている。1980年代のHDD業界を思わせる活況ぶりだ。SSDはまだ未成熟な製品であり、改良の余地が少なくない。最も望まれるのは記憶容量当たりコストの低減だが、ここはHDDとの競争になる。HDDをコストで追い抜くことはほぼ不可能だとみられるので、どこまで近づけるかだろう。信頼性でも改良すべき点が残っている。

 記憶容量当たりのコスト低減をけん引するのはNAND型フラッシュメモリのチップ当たりの容量拡大である。気になるのは、NAND型フラッシュメモリの容量拡大に限界が見えてきたことだ。シリコンダイに格納できる記憶容量を、過去と同じペースで増やせるかどうかは分からない。

 さらに将来を見据えると、NAND型フラッシュメモリの代替を狙う次世代不揮発性半導体メモリが半導体業界では研究されている。まだ基礎的な段階だが、将来性はある。

 HDDやSSD、フラッシュストレージなどの将来はいずれも明るいが、簡単に通れる道ではない。ストレージが経てきた過去の道筋をたどり、現在をみつめ、将来を探る。本連載では、こういった作業の結果を提供していきたい。

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筆者紹介

福田 昭(ふくだ あきら)

フリーランスのテクノロジージャーナリスト/アナリスト。



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