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» 2012年07月26日 10時30分 公開

「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論 ―番外編―:若きエンジニアへのエール〜入社後5年間を生き残る、戦略としての「誠実」〜 (2/4)

[江端智一,EE Times Japan]

 「新卒から入社5年目ぐらいまでの新人、若手」という方は、たぶん社会人として最も辛く、厳しい時期にいる方だと思います。社会の矛盾、不合理、理不尽、不条理という名の弾丸が、複数の機関銃から一斉掃射される、悲惨な戦場にいるかのような、恐ろしく辛い時代です。

 5年後くらいには、機関銃の弾も打ち止めになるか、あるいは、あなた自身で防弾チョッキを調達できるようになるのですが、その間の無防備な時代を凌ぐという、「戦略」が必要となります。私は、「新卒から入社5年目ぐらいまでの新人、若手」の皆さんに、3つの戦略を授けたいと思います。

第1の戦略 「誠実」

図 写真はイメージです

 エンジニアにとって誠実であることは、極めて重要です。誠実であることは、お客様から信用をいただき、上司や同僚からの信頼を勝ち得て、自分の考える理想の設計を行い、優れた製品を作り出して、世の中の人に喜んでもらう ――― などということは全く関係がなく、そんなことはどうでもよいことです。

 我々エンジニアにとって、誠実であるというこの意義は、「人として正しい行為」であるからではありません。エンジニアにとっての誠実というのは、単なる「戦略」です。そこに、モラルとしての意義は必要ありません。「戦略としての誠実」には、メリットが3つあります。

(1)安価

 「誠実」はコストが低いです。「誠実」ではない設計やシステム構築は、ほぼ間違いなく不良製品を発生させ、膨大な損害が発生します。また、設計上のミスについて、不誠実に、嘘をつき通すことは、面倒な心理的負担を発生させるだけでなく、その嘘を、筋の通ったストーリーとして作り上げ、かつ維持する必要が生じて、矛盾のない論理付けや知識も必要で、リスクも大きいです。これに対して、「誠実」は最終的なコスト(TOC:Total Cost of Ownership)がとても安くすむのです

(2)簡単

 「誠実」はシンプルです。相手(お客様、上司、同僚、部下)に応じて対応を使い分けたり、製品開発の精度、そして開発規模やコストに応じて、複数のシナリオを準備する必要はなく、ただ、誰に向かうときにも、どのような対象に取り組むときにも、誠実であることだけを実施すれば足ります。要するに、「誠実」は簡単なのです。

(3)付帯的価値

 「誠実」には、おまけ効果として、優れた人格、人望のある人間のごとく、人々に「誤解される」という非常に優れたメリットがあります。特に、独身の異性に対して「誤解される」ことは、最近の厳しい婚活戦線においてどれだけ有利に働くか、言うまでもありません。さらに「誠実」は、長期戦略に向いています。社会的な地位を求めている人であれば、「誠実」は出世にも資することにもなるでしょう。

 加えて、この「誠実」という戦略は、まさに、新卒から入社5年目ぐらいまでの新人、若手にとって、重要な意味があります。この戦略は、後発的には取り得ないのです。「誠実」が「誠実」として受けいれられる期間が短いからです。「誠実そうな若い人」というフレーズは光輝いて見えます。一方、「誠実な中年」、「誠実なおばさん」というのは、ともすれば、「愚鈍、愚図、無能、暗愚」というネガティブなイメージが伴います。具体例を示しましょう。今、私がこの誠実戦略を開始したとしたら、多くの人は、それを間違いなく「江端が、何かの策略、陰謀、奸計(かんけい)を画策している」と捉えるだけでしょう。

 まとめます。「誠実」とは、十分な経験がなく、まだトラブルに高速に対処する能力も兼ね備えておらず、能力も知識も乏しく、業務を理解できていない、浅学で、未熟で、稚拙な、そういう新卒から入社5年目ぐらいまでの新人や若手に適した「最適戦略」そのものなのです。

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