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「SiC」と「GaN」、勝ち残る企業はどこか?(後編)知財で学ぶエレクトロニクス(2)(2/4 ページ)

» 2012年08月20日 10時40分 公開
[菅田正夫,知財コンサルタント&アナリスト]

日本公開系特許から見たウエハーの技術開発動向

 図1で示したSiCウエハーと、図2のGaNウエハー関連をまとめて、日本における状況をまとめました。日本公開系特許出願にはどのような特徴があるのでしょうか*6)

*6) 特許庁の発行する公開系特許には、次の3つがある。(1)特許庁に直接出願され、公開された「公開特許(略称:「特開」)」、(2)外国語のPCT出願(国際出願)について、出願人が提出した日本語の翻訳文が掲載されている「公表特許(略称:「特表」)」、(3)日本語のPCT出願について、国内出願に移行した際に発行される「再公表特許(略称:「WO」)」。なお、日本語のWO特許公報が一度公開(国際公開)され、国内出願に移行した際には、もう一度公報が発行されるため、「“再”公表公報」と呼ばれている。

 図3に示す、ウエハー関連の日本公開系特許の特許出願件数推移をご覧ください。

図3 SiC、GaNウエハー関連の日本公開系特許出願件数の推移 1985〜2012年に出願された特許の件数を示した。

 まず、特許件数の多いGaNウエハーから内容を確認してみましょう。

 LED用GaNウエハーの仕様は、パワー半導体用で求められるものとは異なります。とはいえ、GaNウエハー供給にとってLED照明の拡大は、安定した事業を支える柱となりつつあります。他方、パワー半導体用ウエハー供給は今後の成長が期待できる将来事業である、という大きな違いがあります。

 ですから、GaNウエハー特許の出願動向を考察するには、LED開発の歴史において、GaNウエハーが注目された時期を知っておく必要があります。LED三原色のうち、高輝度の赤色LEDが1990年までに実用化され、青色LEDが1993年に、青色と同じ材料系の緑色LEDが1995年に、そして白色LED(青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせからなる疑似白色LED)が1996年に、それぞれ実用化されています。そして、2003年ごろにはLEDの技術開発が一段落しています*7)

*7) LEDの技術開発については別掲記事を参照。

 つまり、2000年ごろからのGaNウエハー特許件数の伸びは、デバイス企業のLED照明事業拡大に伴う、GaNウエハー供給要求の増加に伴うものだと考えられます。さまざまな工夫にかかわる特許出願です。その後の特許出願件数増加も、2007年あたりで一段落して、減少傾向に転じていることは、LED向けGaNウエハーの仕様が2005年あたりから固まりつつあったためと考えられます*8)

*8) GaN基板を用いたLEDの開発事例(量産開始は2007年)。パナソニックの例を示した。

 一方のSiCウエハーも、着実に特許出願件数の増加が進んでいましたが、2006年あたりから毎年ほぼ同一件数レベルの特許出願件数であり、いよいよパワー半導体の本格化を感じさせます。

開発から事業化段階への移行と特許出願件数の関係

 企業の特許出願件数には、開発段階から事業化段階に移行する時期に減少するという傾向があります。これは技術開発部門が事業化に向けて総動員されるために起こります。

 もう1つ、商品化直前に再び増加する傾向もあります。商品化直前の特許出願件数増加には、従来の出願特許ではカバーしきれなかった技術範囲や商品に搭載された技術そのものが含まれるという特徴があり、特許の発明者には開発段階からの発明者だけではなく、新たな発明者が加わっていることが多く見られます。


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