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技術の使い回しでは勝てない米International Rectifier 高橋敏男氏(5/5 ページ)

» 2012年09月28日 18時50分 公開
[畑陽一郎,EE Times Japan]
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EETJ だがワーストケースを考えない設計はありえない。

高橋氏 そうだ。だが、もしMOSFET自体がインテリジェント化して、「自分の温度はまだこのぐらいだからもっと電流を流せる」と制御ICに伝えることができれば、出力が可変になる。100W品を9割程度の時間は200W品として利用できることになる。チップの仕様(スペック)の考え方も変わってくる。

EETJ MOSFETにはセンサーの機能はない。不可能ではないか。

高橋氏 信頼できる温度センサーや電流センサーが必要なのは確かだ。そのようなセンサーがIPMの中に入ってくる。ただし、温度変化に対して電気抵抗の変化を検知するNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタを付けても無駄だ。何度も実験を重ねたが、NTCサーミスタの温度とダイの温度が懸け離れてしまう。リアルタイム性が重要なのにそれもない。信頼できない。

 ではどうするか。電流が分かれば、FETがオンしたときに電圧がどれぐらい変わるかで、温度が分かる。これを利用する。あるいはFETのゲートの電圧をフィードバックしてもよい。

マイコンありきの発想ではダメだ

EETJ ドライバをインテリジェント化できればセンサー機能を内蔵できるということか。

高橋氏 残った課題はセンサー情報をどう処理するかだ。ごく微小な6個のFETの温度をリアルタイムにマイコンで処理しようとしてもできない。なぜか、簡単だ。6個の情報を処理しようとしても、まずマイコンとのインタフェースが不可能だからだ。

EETJ 処理できないとするとどうするのか。

高橋氏 マイコンやコントローラーの側が変わるべきだ。コントローラーはメモリの「ゲーム」ではないし、RISCマシンのゲームでもない。あるマイコンを使ってプログラムを動かすとどの程度処理できるという議論ではない。高度なプログラマブルなコントローラーは必要ない。正確なセンサーとそれを素早くパラレルで処理して最大効率を狙う制御ができることが重要だ。パワー系の用途、低出力のインバータはいかにあるべきかを考えてコントローラーを開発すべきだ。

 これがもし実現できれば、絶対に壊れない、周囲温度が何度になっても構わない、そういったIPMができる。この方向に進むしかない。

 モーター制御にしても同じことだ。ホール効果を利用して磁界を検出する外付けのホールセンサーが不要なIPMを開発する。高耐圧IC(IPM)の中にセンサーを入れ込んでしまえば、常に永久磁石モーターが最高効率で動作する、そういったIPMを作る。業界を見渡しても5年後にこのようなIPMを投入できる企業は他にないだろう。


高橋 敏男(たかはし としお)氏

1980年電気通信大学卒業。1992年にCase Western Reserve大学で電気工学の理学修士号を取得。米Rockwell Automationに13年間勤務し、モーター用インバータの開発を担当した。1997年、米International Rectifier入社。モーター制御回路向け設計プラットフォーム「iMotion」を手掛ける。現在、省エネルギー機器事業本部モーター制御製品デザインセンターで部長を務める。中国のハルビン工業大学の客員教授でもある。


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