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» 2012年10月01日 08時00分 UPDATE

EETweets 岡村淳一のハイテクベンチャー七転八起(最終回):エンジニアリングに最も大切なものとは!? 〜世界はそれを「愛」と呼ぶんだぜ〜 (2/2)

[岡村淳一,Trigence Semiconductor]
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 小生は「モノづくり」や「すり合わせ」という言葉は好きではありません。モノづくりという言葉は作る側の一方的な愛情の押しつけのような印象を受けますし、「すり合わせ」というのはその場限りの愛情のごまかしという印象を受けるからです。

 便利な製品が氾濫する現代の世の中では、作る側が一方的な思い入れで製品を作っても、消費者から見れば「お腹いっぱい」となってしまう。周辺状況を正確に理解するためには、製品を開発する人が、もっともっと市場や顧客の声を聞く必要があります。世界の人々を相手の製品を手掛けたいなら、まずは日本を飛び出すことも一計(いっけい)です。

 ハイテクベンチャーの良いところは、会社の規模が小さいのでビジネスの周辺状況を否応なく感じざるを得ない点や、自社だけではできないことが多いので外部に協力者を求めなければならず、費用対効果に敏感になること、外部資金に頼って開発するため、投資効果という尺度で製品価値を厳しく評価することが求められるといった点が挙げられるでしょう。そのどれもが、エンジニアリングを「愛」に高めるために必要なことばかりです。

自戒も込めてだけど、手前味噌の勝手な仕様でICを設計しても、そこには顧客であるシステム設計者に対する「愛」がない。受託ビジネスだからって、客が言った通り設計しただけでは、何も新しい価値が生まれない。設計するICに対する愛情がなければスグにディスコン(製造中止)になる。


 そう考えると、新しい製品やサービスがハイテクベンチャーから生れるのは必然のような気がします。なぜなら、エンジニアリングの「愛」が育つ環境がそこにあるからです。無理やりの論理展開だとご指摘を受けそうですが、まぁまぁ最終回ということで大目に見てやってください。でもね、今の日本の製造業には変革が求められている。それは多くの人が同調する意見でしょう。ベンチャー勃興が日本を救うという人もいますが、起業数が増えれば良いというわけではないと思います。

 せっかくハイテクベンチャーを起業するなら、そこには理念がなければならない。エンジニアリングを起点とするなら、小生はそれを「愛」にまで高めたいと思います。ハイテクベンチャー起業家として、エンジニアリングに最も大切なもの……「世界はそれを『愛』と呼ぶんだぜ〜」と大きな声で叫び、伝えたいのです。

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Profile

岡村淳一(おかむら じゅんいち)

1986年に大手電機メーカーに入社し、半導体研究所に配属。CMOS・DRAMが 黎明(れいめい)期のデバイス開発に携わる。1996年よりDDR DRAM の開発チーム責任者として米国IBM(バーリントン)に駐在。駐在中は、「IBMで短パンとサンダルで仕事をする初めての日本人」という名誉もいただいた。1999年に帰国し、DRAM 混載開発チームの所属となるが、縁あってスタートアップ期のザインエレクトロニクスに転職。高速シリアルインタフェース関連の開発とファブレス半導体企業の立ち上げを経験する。1999年にシニアエンジニア、2002年に第一ビジネスユニット長の役職に就く。

2006年に、エンジニア仲間3人で、Trigence Semiconductorを設立。2007年にザインエレクトロニクスを退社した。現在、Trigence Semiconductorの専従役員兼、庶務、会計、開発担当、広報営業として活動中。2011年にはシリコンバレーに子会社であるDnoteを設立した。



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